殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

問題は耳

2009年11月20日 09時15分23秒 | みりこんぐらし
自分では、あわてんぼうでもそそっかしいほうでもないと

思っている。

お魚くわえたドラ猫を裸足で追いかけたり

買物しようと街まで出かけて財布を忘れるようなことはしない。


しかし、聞き違いはたまにする。

聞き違えたまま突っ走る。

ふとした拍子に思い出してしまったので

その中でも特に恥ずかしかったものを

自戒を込めて書き留めておこうと思う。



中学の時、授業前に先生が私に言った。

「みりこんさん、家帰って」

私はハッとして立ち上がり

理科室を出て泣きながら玄関に向かう。


家で何かあったんだ…

先生は気を使って、さりげなく言ってくれたんだわ…

ううっ…きっと誰か死んだんだわ…

小学生の時、家族の危篤を学校で伝えられ

体操着のまま迎えの車に乗ったのを思い出していた。


「お~い!どこ行くんだ~」

先生が追いかけて来た。

私の座っていた位置が、先生の席順表と違っていたらしい。

先生はそれに気づいて

「入れ替わって」

と言ったのだった。

ただでさえ恥ずかしいお年ごろ…

みんなに笑われて、穴があったら入りたかった。



長男が幼稚園に入って間もない頃

園で初めての行事があった。

開会式の時、園児たちに向かって

かわいらしい女の先生がりりしく号令をかける。

「合掌!演歌!」


私はおもむろに手を合わせ、目を閉じた。

そして心静かに演歌が始まるのを待った。

お年寄りもたくさん来てるから、こんなサービスがあるのね…

子供たちは何を歌ってくれるんだろう…

北島三郎か…八代亜紀か…。


♪よいこ~ あつま~れ~ た~のしい ようちえん~♪

流れてきたのは、幼稚園の園歌であった。

先生は、合唱…園歌と言ったのだった。

ハッと目を開けて周囲を見回すと

ジロジロ見られており、赤面した。



小学生になった長男の勉強部屋から声が聞こえる。

「人を撃つ!」

おもちゃのピストルが流行っていた頃だった。


階下でそれを聞いた私は、階段を駆け上がった。

「人を撃ったらダメよ~!」

あまりに急いだので階段を踏み外し

向こうずねをいやというほど打った。


次に聞こえてきたのは

「ふたあつ!」

みい~っつ…よ~っつ…

宿題の本読みだった。

痛いのと恥ずかしいのとで、ちょっと泣いた。



OLの頃、運送会社の男性が新しい電話帳を配達に来た。

「そうそう、捨てるものがあったら回収しますよ」

   「そんなサービスがあるんですか?」

「はい。遠慮なく持って来てください。捨ててあげますよ」


私は倉庫へ行き、遠慮なく

古い書類などの廃棄物が満載された台車を

ゴロゴロ引っ張って来た。

目をむいて固まる男性と同僚たち。

回収すると言ったのは、いらない電話帳のことだった。

相当恥ずかしかった。



ある年末、病院の上司が言う。

「昨日仕事の帰りに墓地を買いに行ってね…」

     「ええ~?墓地を?仕事の帰りに?」

いくら高給取りでも、年の瀬の仕事帰りに

気軽に墓地購入とは…この人、本当は太っ腹?


「お買い得でいいのがあったのよ。

 こういうのは早めに用意しとかなきゃね」

      「それはそうですけど…すごいですね!仕事帰りに…」

「気になっていたけど、これで落ち着いたわ」


この人でもたまにはマトモなことするんだ…

ご主人のことをいつも“死ねばいい”と言ってるけど

死んでからのこともちゃんと考えてあげてるんだ…

ちょっと意外…見直したかも…


上司は出勤してきた他の同僚にも同じ話をしていたが

どうもおかしい。

ショウユだのキナコだの言ってる。


…墓地ではなく、正月用の餅の話であった。

この人は出身地の方言が強いので、アクセントが逆なのだ。

一瞬でも尊敬した自分を恥じた。



最近は無いような気がする。

家に居るようになって、あんまり人と話さないからだと思う。

安全である。
コメント (14)
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