日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「初めて(1986年)の『春節』」。

2009-01-19 07:44:59 | 日本語の授業
 明け方まで雨が降っていたようで、今朝は、雨に濡れて黒くなった道を、自転車でやってきました。車道を走る車は、いつもにも増して速度を速めています。こういう時は、車の邪魔をするのは憚られます。喧嘩しても勝てっこありませんもの。というわけで、今日は、遠慮がちに歩道を走ってやってきました。空気も、かなり湿り気を帯びているので、冷たく感じられます。

 何でも、天気予報によると、昼には15度前後になるということでしたが、学校に着いてみると、部屋の中は、それほど暖かいとも思えません。温度計を見ると、いつもよりわずかに一度高いだけの、7度でしかないのです。天気予報の叔父さん・お兄さん・お姉さんを疑うわけではありませんが、本当に今日、暖かくなるのでしょうか。

 朝、着くとすぐに、メールを見ました。中国の友人から、「お正月には故郷へ帰る」とのメールが入っていました。「お正月」か…、中国ではもうすぐ「春節」なのですね。ふと、中国での最初の「お正月」のことを思い出してしまいました。

 中国で過ごした最初の「お正月」は、「昆明」、「大理」、「西双版納」への旅行の最中でしたから、めちゃめちゃ怖かった。中国人運転手は、「春節」を故郷の家で過ごそうと、「暴走族」顔負けのスピードで飛ばします。平地を走るのと同じスピードで、山を駆け上り、落ちろように下りていくのです。しかも、出発は早朝。到着は真夜中。どちらも暗いのです。乗っていながら、この運転手は「勘」で運転しているのではないかと恐れました。多分、そうだったのでしょう。

 あんな真っ暗な中を、あの猛スピードで走るのですから。着いた時には(ただ座っているだけだったのに)、体中が強ばっていました。「もうどこへも行きたくない。動きたくない。春節の期間が終わるまで、じっとしているぞ」と、思ったのですが、途中では帰れません。多分、三日でしたね。こんなのが続いたのは。

 私は車が大の苦手なのです。一応、何年か運転はしていましたけれど、それはもう、しょうがなくて免許を取り、しょうがなくて運転をしていたと言うだけのことで、(運転)しなくてもいいと言われた途端に、ホッとして、もう二度と運転などするものかと(免許は)返上してしまいました。

 しかし、「春節」の話です。あの期間は、(中国では)動かないに限ります。もっとも、一度手ひどい経験をしたから言えることなのですが。それなのに、「北京は寒いから、暖かいところへ行こう」と誘われて、ついその気になってしまった自分が悔やまれます。

 北京からの列車も大変でした。「軟臥」は四人部屋で、誰と一緒になるか判らないから、やめた方がいいと言われて、「硬臥」で、行ったのですが、一緒に行った人達(皆、留学生です)が、これまた「『旅』大好き人間」達で、その中の一人など、当時、カシュガルへ、「硬座」で、行って帰って、それでも平気の平左という、猛者(女性です)でしたし、もう一人は、汚いところを見ると、すぐに興味津々で寄って行くという性癖の持ち主(女性)でした(まさか汚いところが好きというわけでもないのでしょうが)。

 「まともな人間は、私一人だ。どこかへ行くなら行くで、まともな『連れ』を選ぶべきだった」と、最初は一人で喚いていましたが、「洱海」に着いた頃は、もう死にそうな状態になっていました。私は、旅行が嫌いでしたから、列車での「宿泊」なんて、国内外でも初めて。しかも、「下関」から「大理」までのバスがひどかったので、車酔いが、バスから降りて二日経っても治らないのです。

 元気なみんなが鼻歌交じりに、山の方へ見物にいっている間、「洱海」の畔で、一人寝転んでいました。もう、歩けない状態だったのです。ずっと食べられなかったから、当然と言えば当然です。身体にリキが入らないのです。他の人に言わせると、「なるほど。何日も食べなくても、人間死なないもののようだね。けれど、動けなくなるんだね。動けないときは動かない方がいいよ」。本当に、いい友達です。

 だから、私の、中国での最初のお正月は、「洱海」の畔の豆の花のそばで寝転んで、それで終わりです。

 もう、それからは、北京にじっとしているか、中国国内から逃げるかのどちらかにしました。もっとも、当時はまだ「廟会」が許されていなかったので、北京に残っていても何も見るものがなかったでしょう。

 そういえば、あの頃、留学生に人気があったのは、海南島でした。けれども、海南島へ行っても面白くないという人もいました。北京の留学生連中がみんな来ているから。海南島へ行くくらいなら、タイやシンガポールまで足を伸ばしたのです、少し経済的に余裕のある留学生は。

 中国人にとってみれば、「春節」とは、家族が全員揃うとか、懐かしい友人知人に会えるとかいった意味でも得難い期間ですが、そういうものがない外国人にとっては、長期旅行ができるというだけの期間でしかないのです。

 日本に戻ってからは、いつも静かなお正月です。家族が揃っていたときのように、型にはまった「お正月の過ごし方」はしていませんが、どうもこちらの方が私には合っているようです。

日々是好日
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