晴れ。
久しぶりに、青空が広がり、雨だった昨日がウソのよう。早朝の西の空には、白いうっすらとした月が懸かっていました。
虫の声も、心なしか、しめやかになり、ちょっと寂しい。2日続いた「冬」に、やられたのかもしれません。ポトリと落ちたか、そのままバタリと倒れたか…。これから、秋らしい日が続くとしても(来週は秋雨前線と、台風で終わってしまうかもしれませんが)、もう蘇ることはないでしょう。
喧しいと言ったのが申し訳ないくらいの短さでした。
さて、学校です。
昨日の帰りでのこと。買い物しようとスーパーに立ち寄ると、突然、卒業生に呼び止められました。近くのホテルに就職している学生なのですが、住まいは二駅ほど遠くに引っ越しています。ニコニコ顔で、「いとこが二人、来ます」。「どこに来ますか」。「えっ。私たちの学校です」と当然のように言う。「へえ、ここは厳しいし、怖い先生がたくさんいるのに」。「へへへへへ」。慣れたものです。
そう言いながら、二人、エスカレーターで二階に行くと、急に、また、向こうから「先生」と大きな声で一人。見ると、梅酒のパックを抱えています。
「こら。お酒を飲むのか」と一喝しても、少しも動じません。「これはおいしいです」。
訊くと、この二人の他に、今年の四月生が三人、で、男五人で食事をするのだとか。その時に、あのおいしい梅酒をだれか買ってこいということにでもなったのでしょう。「アルバイトは9時からです。まだ時間があります」とうれしそう。
彼等のバイトも、この卒業生の紹介によるもの。みんな一緒に梅酒を飲みながら食事なんていいな。
そして、卒業生と、今度申請するという彼のいとこの話をしていると、この在学生が、また満面の笑みで「私の妹も来ます」。「どこに?」。「えっ。ここに」。「どうして、言わないの?それに、この学校は勉強しないと大変でしょ。大丈夫?」「大丈夫。妹はよく勉強します」。小声で「…先生に言うと、厳しくされるかもしれないから」。
卒業生も、「今、二人は25課くらいを勉強しています。今度N5の試験を受けます。来年の四月までに、N4を終わらせます」と言う。
この学校のやり方を知った上で、卒業生や在学生が、自分のいとこや兄弟姉妹を呼んでくれるのは、本当にありがたい。インド圏では、ここは「女性でも安心だから」と、とんでもない兄弟姉妹を呼びたがる人が、時たまいるので、(それを聞いた時には)ちょっと身構えたりすることもあるのですが、ベトナム人はほとんどの場合、身内を呼んで、困ったと言うことはありません。一人、学校に来なくなった人もいましたが、(日本でアルバイトすると、母国では考えられないようなお金が手に入るので、それで、どうも、駄目になってしまったよう)その卒業生が責任を持って、ビザのある内に連れ帰ってくれました。
ベトナムに関して言えば、最近は「『大学に入りたい』。しかも1年目にして『留学生試験を受けたい。できれば数学も』」なんていう学生も出始めています。もちろん、こうなりますと、数はグッと減ってきます。最初は、学校に来させたり、起こしたりするのに苦労していましたのに、今では、そういう心配はほとんどなくなりました。
これも、とにかく言い続けてきたことが功を奏しているのかもしれません。
「勉強する人が欲しいのだ。できれば、大学に入って勉強するような人が」
当時、学校を休みがちな人が多かったにせよ、中には、きちんと言われるとおりに勉強して、大学などに行ってくれた人もいました。そして私たちもとにかくベトナムに行った時に、面接を通して、たとえ日本語のレベルがそれほど高くなかろうとも、「勉強したい、あるいは勉強できそうな」人を探してきました。
最初の頃、確かに探し方もよく判りませんでしたから、偶然、メールが来たり、連絡があったりした学校に、失敗しても元々という覚悟で訪れていたのです。
今は、ベトナムに関して言えば、ほとんどの学生がきちんと『みんなの日本語Ⅰ』は終え、大学に入りたいと言う学生は『Ⅱ』冊目も終えてきていますから、発音とヒアリングだけが問題という段階にまでなっています。そこが他国の学生達とは違うところなのかもしれません。やはり中国文化圏内と言ってもいいからなのでしょう。
その点、スリランカやネパールなどのインド圏の学生は、とにかく「N5」の試験に合格出来ればいい(日本に来られる)というわけで、基礎をあまり重んじた日本語教育を受けてはいないように思われます。中途半端な所くらいまでで「上がり」としているので、来てからが大変です。まず、「ひらがな」「カタカナ」がきっちり入っていない。
ネパールでの面接からもそれがうかがえました。紹介者も、そういう状態でも入れる日本の学校が少なくないからでしょう。そんなレベルの人を面接に連れてきて平然としています。ネパールには行きましたから、申し訳ないが、この人は無理だと、ばっさばっさとやると、帰りには「自分の所には、他にいい学生がいる。七月にはその人を紹介するから入れてくれ」なんてことを言いに来る。
日本人も甘く見られたもんです。あのレベルでも入れてしまう学校が(多い)から、ここもそうだろうと高を括って、連れて来たのでしょう。「きちんと勉強する人でないと、来てもらいたくない」と思っている(しかも、先にメールでもそう言い送っているし、現地でも言っている)のが、判っていないのです。
名前を書かせてみると、同じ字を四人とも同じように間違えて書いている。これは明らかに向こうの学校の教師の問題です。この字は違います。この字も違いますと名前に出てきた字だけでしたが、言ってやると、これからは自分が教えるから、入れてくれと言う。無理なことを言いますね。そうやれるくらいなら、最初から自分でどうにかしているはずです。
経験からも、こういう普通の人は一度ついた癖を改められるほど強くはない、それほど書くと言うことはできないものなのです。つまり、まず、あり得ない。で、やんわりと、強く断りました。
まあ、自分が行っているのが、ベトナムとネパールだけなのですが、その時、言いにくいことを言えば、その語気や雰囲気で、紹介者のみならず、学生にも、こちらの気持ちは伝わります。それで申請することになった学生も、ちょっとは締まってくれるかもしれません。
日々是好日