晴れ。
気がつかぬうちに、台所の「ラン」の花が満開になっていました。あふれんばかりです。鉢を変えたほうがいいのではないかしらんと思えるほどに。しかしながら、見ていると、実際、「ラン」というのは華やか花ですね。華やかというか、目出つ、派手、すごい花です…。しかも、隣に置かれている別の種の「ラン」にも蕾がついています。これまたどっさりと。桜だけじゃない、み~んな、急にやってきたようです。今年はなんという春だろう。
さて、学校です。
一昨日、「JLPT」の申し込みで、写真が必要なのだと、その旨を告げると、初めて受験する二人のうちの一人が、写真を撮るのはいつなのかと聞く。「今週中だと思うけれども…。その時は前日に言うから」と答えると、途端にいい顔になって「はい、いい服を着て来ます」。
写真は首から上だけだから、服は関係ないと言うと、如何にも残念そう。コロナ禍ではあり、現在、なかなか「パシッ」と決めて遊びに行ける所がないので、ちと欲求不満気味かな。きっとおしゃれして、いろいろな所へ行きたいのでしょうねえ。毎日が保育園と学校と家で終わっているようですから。
国にいれば、彼らは大家族で生活しているとのことですから、のんびりと子育てし、おしゃれしてどこかに行くのも普通のことだったでしょう。それが、異国の地にいることとて、自分たちだけで子育てしなければならないし、日本語も学ばねばならぬとなっている。…冗談じゃない…、どうしてこんなに忙しいと思いたくなるのも、まあ宜なるかな。時々というか、前は週に何回も疲れて休むということもありましたし…。慣れないことで参っていたのでしょう。先日、「もっと早く日本語を習っておけばよかった…」と、ポツリと言っていましたし。
日本に来たばかりの頃は、「あっちにも行こう」、「こっちにも行こう」で、楽しく過ごしていたのでしょう。コロナがまだ入って来ていなかったのかもしれません。ところが、コロナ禍が一年、二年…と続き、おまけに子どももできた。すると、子どもの世話に明け暮れるという生活になってしまう。そのうち、保育園へやる頃になった。すると、はて、困った。日本語がわからない…しかも、相手には英語が通じない…、日本語を勉強しなければ…。そこで、初めてどうして前に日本語を勉強しておかなかったのだろう…となったのでしょうね。
二人のうちの一人は、前に少しばかりこの学校に通っていたのですが、来られなかった2年ほどの間に、消えてしまったものが少なくはないようです。ヒアリングと会話は、だれでも現地にいる間に伸びるのもですが、問題は文字ですね。読み書きができなくなっている。
一人は来日前に「ひらがな」は勉強したことがあるそうなのですが、書き方が違う。注意すると「国の先生はこう書いていた…」。この学校でも「ひらがな」は勉強していたはずなのですが、やはり最初に入れられたもののほうが強く印象に残っているようで、書かなくなれば、それは水面下にあったもののほうが頑丈ですから、どんどんせり上がってくるというのは自然の理。しかたがない、やり直しですね。
漢字を覚えるにしても、東アジアの人間は別にして、どうしても「『手』と『目』を動かせ」が理解できない(やっと少しずつわかってきたようですが。なにせこれができないと漢字は覚えるのに無駄と思えるほどの時間がかかる)。いかに早くこれを得心させられるかが大切なのです。
勿論、高卒の留学生たちは別です。国で「N5」に合格できなければ申請が通りませんから。そこは向こうの学校でも漢字は「N5」までは教えてくれています。形や筆順はともかく、書いたことがあるし、読んだこともある。
ところが、普通の家族滞在や仕事などで来ている人はそうではないのです。だいたい日本のことなんて「車」くらいしか知らないのです。来日することになって初めて、意識する。意識しても日本はやはり遠いのです。桜とか富士山とか、着物とか…せいぜいが、そんなもの。文字なんてだれも意識しませんから。まして学び方なんて。
日本人が外国を旅行して、市場などで「安いよ」とか「日本人」、「おいで」「こっち来て」とか耳にして、発音のいいのにびっくりしたりするのも、彼らは耳から学んで、口に出すという学び方に長けているからのことで、学ぶのに「手」と「目」なんて論外の世界なのです。
まず、(留学生には必要ない)このやり方がわかるまでにかなりの時間を要します。最初は無駄だなと思っていたのですが、それでは覚えられないのです。「遠回りこそが近道」で、仕舞っていた「篆字(車は車の形をしていますし、酒は入れ物の形をしていますし)」をごそごそと出してきたり(でも、すぐやめてしまいました。こっちで、その都度書いたほうが速い)。
「N4」までの漢字ができていなければ、「N3」の漢字なんてムリですから、多少遠回りでも、読みと書きが覚えられるまでは、繰り返したほうがいいのでしょう。とはいえ、「N3」の読解に入って初めて、漢字が覚えられていなければ、試験に合格できないということがわかるのでしょうね。ただ頑張っているのはよくわかるのです。やり方が変えられないだけなのです。…とはいえ、これが一番大切なんですけれども。
日々是好日