明日が夏休み最後の日で、八月三十一日で、
明日を超えればやっと、あの懐かしの九月に出会えるのだ。
セプテンバー。
僕が子供だった頃は、
九月に入ったその日から涼しくなっていたような気がする。
九月一日からスパッと、有無を言わさず「初秋」に突入していた。
あれは
気のせいだったのか。
それとも本当にそうだったのか。
僕の一家が新宿から福山市に引っ越したのは
1973年の9月だった。
だからちょうど50年経つ。
越して来たばかりの福山・・・・の、
僕らの移り住む家があった多治米町はまだ(その名の通り)、
あたり一面田んぼで、
この時期だからそろそろ稲穂が実りつつあった。
その光景を微かに覚えている。
農村の匂い。
越してきてすぐ、 近所の小さな川で僕は
野生のカエルというものを生まれて初めて見た。
新宿にはカエルはいなかった。デパートのペット売り場にしかいなかった。
(戸山ハイツの森に、野生のカブトムシとかはいたんだが。)
コドモ道郎が そのカエルに恐る恐る手を伸ばしていたら
突然、僕と同じくらいの歳の子供が現れて僕に向かって何か言った。
中国地方の方言を聞くのも生まれて初めてだったので
何を言っているか一言も理解できなかった。
その子は同い年の近所の子供だったので(トシカズくんだ)
のちのち友達になって、聞いたのだが
「そのカエルはイボガエルだから触ってはいけないよ」
という意味のことを言ってくれたらしい。
原語表記すればたぶん
「それイボじゃけえ、いろうたらいけんで」って感じか。
今だったら聞き取れるけど、当時は無理だったな。
あれが1973年9月の出来事だったのだ。
あの時の僕が・・・9月4日以前なら6歳、
9月4日以降なら7歳だ。
50年という年月は僕をどんな場所に連れて来たのだろうか。
えーっと、ここは・・・・・・・・・・・・
京都だ。
いつか東京に帰るつもりだった。
実はそのことは、6歳の頃から固く心に決めていた。
だがいろいろあって、
今気づいたら京都に居る。
東京と京都は、少し似ているのだ冗談抜きで。
トー・キョー
と
キョー・ト
で、裏返ってるけど。