天橋立を眼下に望む成相寺。この寺には今昔物語でも紹介されている「身代わり観音」の伝説がある。
この寺で修行をしていた僧が、冬になって食べ物がなくなり、深い雪のために里にも出られなくなった。本尊の観音に「今日を生きるだけの食べ物を施してください」と念じたところ、境内に狼に追われた鹿が入って来て死んだ。仏に仕える身として殺生はいけないとわかってはいるが、ただ明日へ生きるためにはどうしても耐えられない。鹿の脚の肉を刀で切り取り、鍋で煮て食べた。
僧の様子を心配してやって来た里の人たちは、鍋に木片があるのを見つける。そして、本尊の観音像の脚の部分が切り取られているのを見る。仏様を煮て食べたのかと里の人が問い詰めたことで、僧は「鹿が出てきたのは観音様が身代わりになったのか」と知る。その木片を観音像に当てるとぴったりで、そして元の姿に戻った。これを見て里の人も感激し、いつしか成合(成相)寺とよぶようになったという。
由来について長々書いたのは、今回成相寺を訪ねたのが雪の時季で、当日6日は青空が広がっていたが、伝説の舞台はこうした雪の中だったんだろうなという思いを馳せることにある。
さて現在の成相寺は車道がついていてクルマで直接アクセスできるが、結構急な勾配である。果たしてこの時季上がれるのか。除雪はしているだろうが、道に不慣れなら行かないほうがいいかもしれない。公共交通機関なら傘松公園までケーブルカーで上がり、登山バスとなる。ただ、この日は路面凍結のため運休とのことだった。
さてどうするか。ここまで来たからには無茶だが行ってみたい。凍結で無理ならそこで引き返すことにして、坂道を歩き始める。寺までは1~2キロの距離だが、ここは登山バスや関係車両しか入れないから他のクルマを気にすることはない。
日向では路面が乾いたところもあるが、日陰に入ると路面が真っ白である。その中で、なるべく凍ってなさそうなところを選ぶと先に進むことができる。少し歩いたところで、前からミニ重機がやって来た。道端に避けて通過を待つ。路面の凍結部分の氷を踏み潰すように走る。さらにその後ろに登山バスが続く。あれ、運休ではなかったか。
栗田半島や、沖合いの冠島、沓島という景色も見られる中で歩き、汗すら出てきたところで20分ほどで成相寺の山門に着く。ここで仁王像を見るが、山門の周りは吹きだまりのようになっていた。ただここまで来れば本堂は近い。
最後は石段である。人一人が通れるだけの幅がきちんと除雪されているのに感心する。
本堂の前には雪がうず高く積まれているが、正面はきちんと除雪されている。本当にひどい時はどうしようもないのだろうが、このくらいの雪なら除雪して参詣の人たちを受け入れようという、寺の姿勢なのだろう。
手水場はさすがに凍結がひどく、水はあるが柄杓が氷で固まっている。行儀悪いが直接手で水をすくって洗う。
本堂に入る。こんな日で、さすがに参詣者が供えるろうそくや線香の姿はなかったが、外陣、内陣の灯りはついているし、本堂の中の納経所もガラス戸は閉まっているが中で一人じっと待っている。寺のほうではこんな雪の中でも訪ねてくる参詣者のために最大限の受け入れ準備をしているのだなと思う。もちろん成相寺単独ではなく、傘松公園や、登山バスを運行する丹後海陸交通もいろいろバックアップしてのことだろうが、改めて感心する。
お勤めをして、内陣を拝観した後に納経所のガラス戸を開ける。若い女性の方だったが、この雪にどうということもなく、ごく普通の対応である。登山バスが運休の中で歩いたからといって「すごいですね~」というわけでもなく、かと言って呆れるわけでもなく、普通に墨書、押印して「入山料も一緒にいただきますね」とごく普通に対応した。朱印300円、カラー御影200円に加えて、成合の入山料500円で合計1000円ちょうどだった。こんな日に参詣者がどのくらいいるかわからないが、寺としては「平常運転」というところだろう。
この上に天橋立の展望台への遊歩道があるのだが、さすがにこちらは雪で埋もれている。足跡があるので踏み入れると、くるぶしは完全に覆われる。この先行けないこともないのだろうが、雪中行軍をするとなるとためらわれる。展望台はあきらめて引き返す。
そろそろ下山しようと引き返すと、ちょうど登山バスが方向転換するところ。助手の人が道の雪を払ったり、凍ったところをガリガリと削っている。バス停に向かうと扉が開いたので乗れるか尋ねると、まだ試運転中だという。
それなら仕方ないなと歩いて下りることにして、山門の前を過ぎる。後ろからバスが来たので先に行ってもらおうと道端に避けると私の前で停まり、「乗りますか?この次の12時から動くことになりました。お金はいいです」と声がかかる。これは観音様の思し召しかとありがたく乗せていただく。傘松公園に戻ると運転手が係員に「12時から行くで」と言う。まあ平日だし、観光客、参詣者は午後から増えるのだろうからこれで十分なのだろう。
これで成相寺参詣を終え、そのままケーブルカーで下りる。ちょうど昼で、さてこの後はどうするか・・・。
この寺で修行をしていた僧が、冬になって食べ物がなくなり、深い雪のために里にも出られなくなった。本尊の観音に「今日を生きるだけの食べ物を施してください」と念じたところ、境内に狼に追われた鹿が入って来て死んだ。仏に仕える身として殺生はいけないとわかってはいるが、ただ明日へ生きるためにはどうしても耐えられない。鹿の脚の肉を刀で切り取り、鍋で煮て食べた。
僧の様子を心配してやって来た里の人たちは、鍋に木片があるのを見つける。そして、本尊の観音像の脚の部分が切り取られているのを見る。仏様を煮て食べたのかと里の人が問い詰めたことで、僧は「鹿が出てきたのは観音様が身代わりになったのか」と知る。その木片を観音像に当てるとぴったりで、そして元の姿に戻った。これを見て里の人も感激し、いつしか成合(成相)寺とよぶようになったという。
由来について長々書いたのは、今回成相寺を訪ねたのが雪の時季で、当日6日は青空が広がっていたが、伝説の舞台はこうした雪の中だったんだろうなという思いを馳せることにある。
さて現在の成相寺は車道がついていてクルマで直接アクセスできるが、結構急な勾配である。果たしてこの時季上がれるのか。除雪はしているだろうが、道に不慣れなら行かないほうがいいかもしれない。公共交通機関なら傘松公園までケーブルカーで上がり、登山バスとなる。ただ、この日は路面凍結のため運休とのことだった。
さてどうするか。ここまで来たからには無茶だが行ってみたい。凍結で無理ならそこで引き返すことにして、坂道を歩き始める。寺までは1~2キロの距離だが、ここは登山バスや関係車両しか入れないから他のクルマを気にすることはない。
日向では路面が乾いたところもあるが、日陰に入ると路面が真っ白である。その中で、なるべく凍ってなさそうなところを選ぶと先に進むことができる。少し歩いたところで、前からミニ重機がやって来た。道端に避けて通過を待つ。路面の凍結部分の氷を踏み潰すように走る。さらにその後ろに登山バスが続く。あれ、運休ではなかったか。
栗田半島や、沖合いの冠島、沓島という景色も見られる中で歩き、汗すら出てきたところで20分ほどで成相寺の山門に着く。ここで仁王像を見るが、山門の周りは吹きだまりのようになっていた。ただここまで来れば本堂は近い。
最後は石段である。人一人が通れるだけの幅がきちんと除雪されているのに感心する。
本堂の前には雪がうず高く積まれているが、正面はきちんと除雪されている。本当にひどい時はどうしようもないのだろうが、このくらいの雪なら除雪して参詣の人たちを受け入れようという、寺の姿勢なのだろう。
手水場はさすがに凍結がひどく、水はあるが柄杓が氷で固まっている。行儀悪いが直接手で水をすくって洗う。
本堂に入る。こんな日で、さすがに参詣者が供えるろうそくや線香の姿はなかったが、外陣、内陣の灯りはついているし、本堂の中の納経所もガラス戸は閉まっているが中で一人じっと待っている。寺のほうではこんな雪の中でも訪ねてくる参詣者のために最大限の受け入れ準備をしているのだなと思う。もちろん成相寺単独ではなく、傘松公園や、登山バスを運行する丹後海陸交通もいろいろバックアップしてのことだろうが、改めて感心する。
お勤めをして、内陣を拝観した後に納経所のガラス戸を開ける。若い女性の方だったが、この雪にどうということもなく、ごく普通の対応である。登山バスが運休の中で歩いたからといって「すごいですね~」というわけでもなく、かと言って呆れるわけでもなく、普通に墨書、押印して「入山料も一緒にいただきますね」とごく普通に対応した。朱印300円、カラー御影200円に加えて、成合の入山料500円で合計1000円ちょうどだった。こんな日に参詣者がどのくらいいるかわからないが、寺としては「平常運転」というところだろう。
この上に天橋立の展望台への遊歩道があるのだが、さすがにこちらは雪で埋もれている。足跡があるので踏み入れると、くるぶしは完全に覆われる。この先行けないこともないのだろうが、雪中行軍をするとなるとためらわれる。展望台はあきらめて引き返す。
そろそろ下山しようと引き返すと、ちょうど登山バスが方向転換するところ。助手の人が道の雪を払ったり、凍ったところをガリガリと削っている。バス停に向かうと扉が開いたので乗れるか尋ねると、まだ試運転中だという。
それなら仕方ないなと歩いて下りることにして、山門の前を過ぎる。後ろからバスが来たので先に行ってもらおうと道端に避けると私の前で停まり、「乗りますか?この次の12時から動くことになりました。お金はいいです」と声がかかる。これは観音様の思し召しかとありがたく乗せていただく。傘松公園に戻ると運転手が係員に「12時から行くで」と言う。まあ平日だし、観光客、参詣者は午後から増えるのだろうからこれで十分なのだろう。
これで成相寺参詣を終え、そのままケーブルカーで下りる。ちょうど昼で、さてこの後はどうするか・・・。