まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第19番「鞍馬寺」~新西国三十三所めぐり・9(鞍馬寺奥の院~貴船神社)

2016年05月13日 | 新西国三十三所
鞍馬寺金堂での参拝を終え、そのまま奥の院に向かう。鞍馬山の自然がより多く残されているエリアである。ここから貴船神社に抜けるのはハイキングコースとして知られている。

しばらく山道を行くと出るのは霊宝殿。鞍馬山や鞍馬寺に関する博物館である。鞍馬山は山内全域を「自然科学博物苑」として大切に保護している。まずは鞍馬山の岩石や地層、山内に生息する動植物の紹介である。続いて2階が鞍馬寺の歴史で、ここでは義経伝説が取り上げられている。天狗と修行したとか、武蔵坊弁慶との五条大橋での出会いの真偽はさておき、鞍馬山にて修験道や学問の素養を積んだのは間違いないところだろう。義経が使用していたとされる太刀の展示もある。まあ、鞍馬にあっては義経よりは幼名の牛若丸のほうがぴったり来るが。

3階には仏像が祀られており、平安から鎌倉時代にかけてのさまざまな毘沙門天像が並ぶ。毘沙門天は北方の守護神とされており、矛を手に怒りの表情を見せている。鞍馬は正に都の北にあり、都の守護神として古くから信仰されている。その中の一体が国宝として一段高いところに祀られている。この毘沙門天は少し変わっていて、左手を額にかざして、遠くを見る格好をしている。鞍馬からはるか南の平安京の方角を見下ろし、悪いやつはいないかと見守っているように見える。もっともこれは諸説あり、修復の時に腕の向きを間違えて取り付けたのではないかとも言われているが、そこは「遠くを見やっている」ほうを取りたい。鞍馬寺の本尊は秘仏だか、毘沙門天そのものがこうしてさまざまな形で訪れる人の目に触れるのもよい。ちょうど訪ねていた西洋人のカップルも、毘沙門天の前にお賽銭を置いて慣れない手を合わせていた。

ここからが本格的な山道となる。それでもよく整備されているほうだと思う。10分くらいで柵に囲まれた石に出会う。義経の背比べ石とされている。義経が平家打倒のために鞍馬を出て奥州に向かう時、名残を惜しんで背比べをした石だという。それにしては、高さが低い。120~130cm くらいしかなさそうだ。いくら義経が小柄だったと言っても、鞍馬を出たのは16歳である。いくら背比べだからと言っても、16歳の義経がこのくらいしかなかったとは思えない。背比べは背比べでも、鞍馬に入った幼い時と比べたのならわかる。その時の義経、いや牛若丸はこの石くらいか、あるいは低かったか。そして修行を積んで鞍馬を出る時に、再びこの石と背比べしたら追い越していた。それだけ成長を感じた・・・ということではないだろうか。

背比べ石に相対して、木の根道がある。鞍馬山の地層は固く、そのため地中に伸びることができなかった木の根が地上を這っている。この後も、地上にむき出しになり奇妙な形をした木の根をいくつも見るのだが、それを鞍馬山のパワーの賜物とする向きがある。鞍馬はどこまでも「パワースポット」か。

背比べ石と木の根道が鞍馬山の頂上のようで、ここから下りに転じる。義経が鞍馬の天狗と修行したとされる僧子ヶ谷にある不動堂などを見る。ここからの下り、前日の雨でぬかるんでいる所もあり、滑りやすい。上りよりも下りのほうが慎重になって歩くのも遅くなるようだ。歩く人たちの隊列が延びる。

やって来たのは奥の院の魔王殿。650万年前に護法魔王が降臨したとされるところである。拝殿には長椅子があり、向こうの一帯を拝むようになっている。長椅子にじっと座る人たちがいて、おそらくこの人たちは「パワー」を「いただいている」のだろう。そういう境地になることができない私は早々に拝殿を後にしたのだが、日本有数のパワースポット・鞍馬で、そんなパワーを感じなかった私は、よほど鈍感なやつ、あかんやつなんやろうな・・・。

この後で急な坂を下り、ようやく貴船神社側に出た。こちらは鞍馬山の西方の入口だが、先に貴船に来て、ここから鞍馬寺に行こうとするといきなり長い上り坂になる。勾配からすれば貴船からのほうが厳しい。頂上まで急な坂が続き、またそこからそれなりの距離を歩かなければならない。

そして出た貴船。こちらも観光客で賑わっている。ここまで来たのは貴船神社参拝のためだが、参道の石段には長蛇の列。さすがは洛北一の人気スポットである。おまけに並んでいるのはほとんどがカップル。そこに一人で並ぶおっさん・・・て、情けないでしょ。 まあでもここまで来たのだからお参りはしなければと。貴船神社は大きな社があるわけでなく、一度に拝むのも一人または二人ずつである。だから行列がなかなか進まない。

貴船神社で有名なのは水占い。200円で白紙のおみくじを選び、拝殿横の御神水に浸す。すると文字が浮かんできてご託宣が受けられる。ありがたいことに大吉。さらに驚きは、QRコードをスマホで読み取ると、書かれていることが音声で再生されるのだ。やり方がわからなかったのでしていないが、音声データを保存することもできるのだろう。

神社から貴船口の駅へはバスの便もあるが、鞍馬川沿いに歩く。早くも川床料理が開業している。青もみじを見ながらの野外料理も美味だろう。

20分ほど歩いて駅に到着。時刻は14時だが、ここまで昼食はまだだ。遅まきながら食事にするが、このあたりではなく、叡山電車で出町柳方面に戻り、途中下車する。どこで降りるかは、味どころに詳しい方なら察しがつくだろうが・・・。
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