まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

和田浦・鯨料理

2013年09月25日 | 旅行記C・関東甲信越

小湊鉄道といすみ鉄道を乗り通して、外房に位置する大原に来た。とりあえず「サイコロの旅」の目的地の条件は果たしたのでここからはフリーである。ただ、昼食がまだでこれをどうしようかと思う。

13時16分発の安房鴨川行きに乗車する。東京近郊の車両とはいいながら、房総に来てからは一部車両がセミクロスシートに改造されており、ボックス席に座ることができる。遅い昼食をどうするか、魚市場でも有名な勝浦に行くか、あるいは「月の砂漠」で有名な御宿ではこの日「伊勢えび祭り」というのが行われているようで、そちらに行くか。でも待てよ、外房といえば行っておきたいところがあったのを思い出す。

Dscn2797それはこの列車で終点の安房鴨川まで行き、そこからさらに乗り継いでやってきた和田浦にある。すでに14時半を回っているがここで昼食とする。駅には一度降りたことがあり、その時もある店に入ったのだが今度は駅に近い別の店に行くことにする。

Dscn2802和田浦というのは房総での捕鯨の基地である。といっても南氷洋に大がかりな調査捕鯨団を出すというものではなく、地元の小規模な沿岸捕鯨ということで、毎年夏の時期にツチクジラ20頭あまりの割合での捕鯨を実施している。クジラが捕れれば地元の港で解体を行う。

以前東京にいた時に、何とかその解体風景を見学したいと思ったことがある。別に見学には特別な申し込みが必要なわけでなく、作業のじゃまにならないようにすればいいだけなのだが、如何せんクジラは毎日捕るものでもなく、解体の時間もその時によってまちまち(早朝のこともあれば昼からのこともある)で、こちらの関係者のブログで告知される情報が頼り。ただその時はクルマを持っておらず、解体があるならレンタカーで持って深夜に走らなければな・・・などと考えている間に捕鯨枠がいっぱいになって漁が終了したということもあった。

また、拙ブログの過去の記事を見ていくと、地元主催の「くじら学」ということで、クジラの解体を見学したり、クジラ料理をいただいたり学術的に学んだりというイベントに申し込んだこともある。ただこの時も台風が接近して行くのを断念した。

Dscn2809今回、サイコロの旅のさらなるオプションで行くわけだし、クジラの解体などは見られないというのはわかっているが、せめて本場でさまざまな料理を食べることができればと思う。ということで足を運んだのが、和田浦の駅から歩いて5分ほどの「ぴーまん」という店。名前は野菜だがクジラ料理の専門店ということで有名である。以前に和田浦に来た時には海岸べりを20分以上歩いて別の店に入ったのだが、今度は最初から「ぴーまん」に入る。昼の部が15時ラストオーダーということでギリギリで入ることができた。客は私一人。

Dscn2807「くじら御膳 花嫁街道」というのを注文する。赤身と皮の刺身、カツ、竜田揚げ、ステーキ、そぼろの佃煮、関西でいう「おばけ」のサラダなど。一つ一つが丁寧に調理されているし、それぞれに味わい深い。

Dscn2808いただいていると店主が顔をのぞかせる。「竜田揚げとステーキを少しサービスしておきました」という。おそらく昼の部の最後の客ということでおまけしてくれたのだろう。それをきっかけに店主とクジラ料理や捕鯨についてしばし談義。

関西から来たというと、「あちらのクジラ料理はすごいですね」という。捕鯨の町で専門店を開いているということで、関西や下関、高知など、クジラ料理のある町で開かれる研究会や料理人の集まりに結構行くそうである。はりはり鍋やおでんのコロというのも関西ならではだし、大衆酒場でも平気で赤身や尾の身の刺身が安価で出てくる。「関東の人はあんまり食べないですねえ」と。「この辺のツチクジラもだいたい10メートルで10トンはあるんですが、皮とか脂肪の割合が大きくて、赤身はあまり取れないんですよ」

Dscn2805「よく捕鯨の問題とか、シーシェパードとかいいますけど、この辺りの捕鯨は近場の、昔から細々とやっているもので、国際的にも認められてます。太地は大変らしいじゃないですか(イルカ捕りを撮影した映画が物議を醸すくらいだから)。だけどこの辺はシーシェバードなんて来やしません。解体?近所の小学校からも見学に来ますよ。クジラを解体した後で肉を食べてもらうけど(解体したばかりのものではなく、予め別に調理しておいたもの)、平気で食べてますよ。動物というよりは大きな魚という感じで、可哀そうというのはあまりないんじゃないですかね」

「もっと気軽にクジラを食べてほしいですね」という店主の言葉に送り出されて店を出る。

Dscn2813この後、和田浦の海岸に出る。雨の予報もここまでは一滴も降っていないが、海岸には湿った風が吹く。波乗りの姿も見える。そろそろ終わりゆく夏を楽しんでいるようである。和田浦を舞台にした映画『ハート・オブ・ザ・シー』というのがあるが、これもボディボードがストーリーのカギになっている。

Dscn2814国道沿いに道の駅ができている。日本では太地、下関、そして和田浦にしかないシロナガスクジラの骨格標本模型が飾られ、土産物コーナーではクジラ料理がさまざまに売られている。ここで地酒とクジラのたれ、缶詰を買い求める。

クジラと少しでも触れることになった途中下車の一時を楽しみ、これから外房線から内房線に直通する千葉行きの各駅停車に乗車・・・・。

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「国鉄急行」で行くいすみ鉄道

2013年09月25日 | 旅行記C・関東甲信越

小湊鉄道といすみ鉄道の接続駅である上総中野。12時11分に小湊鉄道の気動車が着くと、わずか2分で反対ホームの列車に乗り込む。まあ、1~2時間に一本という接続だし、特にいすみ鉄道は「この日のお目当て」というか「サイコロの旅の選択肢」というべき車両とあっては外すわけにはいかない。

それが国鉄型車両。キハ28とキハ52という、かつてあちこちのローカル線で見ることのできた車種である。ただ現在はJRの現役を退いており、見るなら博物館展示でも見るしかないといったところである。それをいすみ鉄道が引き取って、外部からの客の呼び込みに一役買っている(というか、関連グッズまで含めるとかなりの効果である)。

Dscn2763上総中野から大多喜までは普通列車扱いで、大多喜から大原は急行料金300円がかかる(通過駅もある)。また一部座席は指定席扱いで600円かかる。それでも懐かしい車両に乗れるのは喜ばしいことで、早くも「サイコロでこの目が出てよかった」という気になる。後は、28と52、どちらに乗るか、どちらなら座れるかというところで、できれば28がいいかなと。おそらく28のほうが指定席車ということになるのだろうが・・・(普通の人なら別にどっちでもいい話だが。写真は大多喜駅で)。

ただ、それについて迷う必要はなかった。この日のこの大原行きの「急行2号」は、キハ28の方が「レストラン列車」とかいう貸し切り扱いになっていたのだ。イタリア料理のコースを乗車時間一杯で楽しむもので、事前予約制である。まあ、「この線に乗る」というのを予め下調べしていたら、料理を申し込むということもできただろうし、あるいは逆コースをたどってもいいかなとも思った。そこは出たとこ勝負のサイコロの旅だから仕方ない。

Dscn2747ならば、と一瞬でキハ52のほうに乗り込む。10人あまりの乗り継ぎ客がいたが、ボックス席に陣取ることができた。

Dscn2752この車両、引退前は新潟の大糸線を走っていたもので、ワンマン対応の整理券発行機や料金表は大糸線のものがそのまま残されていた。また扇風機にはJR西日本のマークがあしらわれている。走っていた雰囲気を残そうという感じである。

Dscn2750さらに、中吊りポスターはかつての国鉄の列車やダイヤ改正のPRである。こういうのを持っている人、集めている人というのはいるものだ。そういえば途中の大多喜駅の近くに鉄道資料館があった。以前、所属していた旅行サークルの集会をこの房総で主催した時に訪ねたことがあるが、イベント列車の運行にはその辺の有志の協力も大きいのだろう。

Dscn2754Dscn2759それらを思えば、キハ28に乗れなかったのは残念だが生身を見ることができたし、52に乗れたことで大満足である。外は次々にのどかな車窓が展開するが、その風情を味わえるだけで十分である。

Dscn2772何だか夢中になる中で大多喜に到着。ここで列車行き違いも兼ねて8分間の停車。先ほど上総中野ではほとんど時間がなかったが、これだけあれば写真撮影もゆっくりとできるし、トイレに行くこともできる。大多喜から先が急行料金がかかる区間ということで、ここで下車する人もいる。大多喜城や城下町見学に出かけるのだろう。

Dscn2767ここ大多喜は徳川四天王の一人、本多忠勝が城を構えたところである。今の地理感覚なら、「江戸(東京)から離れた房総半島の田舎に城を構えるなんて、田舎じゃない」というところだが、当時の大量輸送、遠方輸送となるとメジャーなのは海運。例えば関西、東海地方から海流に乗って江戸に来るとなれば、出会うのは三浦半島に房総半島である。そのうちの一つである房総半島に有力大名を置くことで、それらににらみを利かせる、あるいは海路から江戸を攻める勢力があるとしたらまずそれを本多家が引き受ける・・・という思惑があってのことだろう。まあもっとも、房総といえば『南総里見八犬伝』にも表れるように、里見家というのが有名なのだが。

Dscn2768そんな中、本多忠勝を大河ドラマの主人公にしようという観光PRも行われているようだ。来年の大河ドラマは黒田官兵衛。果たしてその中でも本多忠勝が登場することはあるだろうか。

Dscn2770さて、小休止の後、「急行外房」として大原に向けて出発。がぜん、汽車旅ムードが広がってきた。

Dscn2775国吉駅の手前で車内放送がかかり、「第2五之町踏切」を通過するという。ここは警報装置も遮断機もなく、クルマも通れない歩道と黄色と黒の踏切の表示があるだけのところ。私も列車の最後尾に行くが、通過した瞬間は気づかず、後方に見えるわずかな踏切板を見て初めてわかったくらいである(写真手前の踏切)。

ここをあえて放送したのは、その形もそうだが、「ゆる鉄」で知られる鉄道写真家・中井精也氏のお気に入りの撮影スポットというからである。この「何もない踏切」というのが旅心、テツ心をくすぐられるようで、踏切だけの写真、あるいはこうした国鉄型気動車と組み合わせての写真も数多く発表されている。

さらに、今年のオリックス・バファローズのスタメン発表曲であるDAISHI DANCEの『A.T.W! feat. GILLE×SHINJI TAKEDA』が収録されているアルバム『WONDER Tourism』のジャケット写真の舞台もこの踏切で、中井精也氏の撮影である。以前にアルバムを通して聴いたのだが、独特のテンポとムードとテクノの心地よさがある音楽で、いすみ鉄道の詩的な風景(を撮る写真)とマッチしているようにも思う。

Dscn2786その踏切の最寄駅が国吉駅。こちらでも8分ほど停車。ここでは今は稼動していない腕木式信号機や、廃車となったキハ30などもある。

Dscn2778Dscn2777またここはムーミンのキャラクターが駅のあちこちにいることでも知られている。私はムーミンの世界はほとんど知らないのだが、その世界に通じるものを、このいすみ鉄道のまったりとした車窓や雰囲気の中に見るのだろう。

Dscn27921時間ほどの気動車の旅を楽しみ、終点の大原に到着。再び急行列車で折り返すというのもいいだろうが、どうせなら今度は外房線に乗り、時計回りか反時計回りかは別にして久しぶりに房総半島を一周して「大暴走」というのにしたほうがよさそうだ。13時を回り、昼食の心配もしなければならないところだが、結局は大原からは時計回り、安房鴨川行きに乗車することに・・・・。

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