まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

有田川町鉄道交流館~鉄道ありやなきや?

2012年05月17日 | 旅行記E・関西

Dscn4464湯浅の町からカーナビで場所を特定できなかったスポット(一応、その場所の住所も入力したのだが、それでも受け付けてくれなかった)、まあ、ちょっと回らなかったのはカーナビのせいということにして、ようやくたどり着いたのが金屋口。有田鉄道のバス、タクシーの営業所ということでようやくカーナビに乗っかってきたというところである。

Dscn4467そうして訪れたのが、有田川町鉄道交流館。ここは、湯浅、藤並からこの金屋口までかつて鉄道を走らせていた有田鉄道の跡地である。2002年をもって廃線ということになったのだが、地元の人たちの熱意によって鉄道に触れることのできるスポットができたということである。

有田鉄道というのがあることは、子どもの頃に「私鉄大百科」だったか、全国の私鉄の路線紹介をしたミニ百科事典のような本で見て知ったことである。同じ和歌山には野上電鉄とか紀州鉄道とか、国鉄から分岐したミニ路線があったなというのを子どもながらに知ったことで、その1ページに1両の気動車を真横から写した画像というのが、「何だかのんびりしていていいな」と思ったものである。

Dscn4475それがこの有田鉄道のキハ58003という車両。かつては富士急行に在籍していたというが、車両の塗装は国鉄の急行型そのもの。現在はこの塗装はおろか、旧国鉄のキハ58という車両も全て現役引退してしまったのだが、こうして間近に接することができるのも興奮ものである。

Dscn4488有田川町の町おこしということなのだろうが、かつての鉄道路線を何らかの形で残す試みは素晴らしいと思う。交流館に入るには200円の入場料がかかるが、そこに入ると鉄道模型やかつての備品の展示など、小ぶりながら充実している。鉄道模型は交流館のものでも持ち込み車両でも運転できるそうだが、デフォルメはあるもののかつての有田鉄道の雰囲気や沿線スポットがレイアウトの中に組み込まれているのがいい。また、室内の2辺を使ってのHOゲージによる沿線の模型も結構造りこまれいている。こういうのを見るに連れ、ぜひ乗りたかったなという思いで一杯である。国鉄型気動車からレールバスに変わっても2002年までは有田川沿いを走っていたわけで、その気になれば十分乗れた路線である。

Dscn4473模型以外の展示について、もっと有田鉄道のありし日の姿を紹介する史料的なものがあればよかったと思う。貨車とかレールバスが置いてあるのもいいが、文書的なものとか往年の賑わいを捉えた写真とか。ただ、それを上回る「史料」というのが目の前のキハ58003。これが毎月第2、第4の土日には構内を走るという。動態保存というのは面白く、これがあるために急遽和歌山方面のドライブを決めたということもある。

Dscn4509この気動車も1日4回運転するということだが、時間があるので少し周囲を歩く。有田川の土手に沿って5分も歩くと、かつての金屋口の駅前に出る。簡易な造りの駅舎、その隣は有田鉄道の営業所やバスターミナルが広がる。保存会の人たちが作業をしているようで駅舎の中には入ることができないが、駅前の閉店したオークワとか、細々と商売をしているような古い造りの酒屋の建物などを見る。バスの時刻表を見たが、JRの藤並駅まで13分ほどで到着するという。まあ道路の混雑がどの程度なのかは知らないが、これでは無理に鉄道で維持するほどのものでもなかったのかと思う。バス会社が今でも「鉄道」を名乗るのも(ここ有田に限ったことではなくいくつか事例はあるが)、ちょっと妙な感じがする。まあ、紀州鉄道などは大阪駅の近くに堂々とビルを掲げているのだが・・・・。

Dscn4497Dscn4515再び交流館に戻り、アイドリング中の気動車に乗り込む。ちょっとくすんだ紺色のシート、栓抜きのついた窓側のテーブル、「JNR」の文字が入った扇風機・・・かつて乗った「急行型」そのものの車内である。これはもううなるしかない。

Dscn4500客室の中央に張り紙がされている。この車両、昭和の風情を描く映画『ALWAYS』のロケになったという。気動車の中で小雪さんと吉岡秀隆さんが向かい合って会話するというシーンがあり、そのロケ現場がこの有田川鉄道交流館だったという。車内にはお二人と監督のサイン色紙も飾られている。『ALWAYS』、鉄道の描写もあるとかでレンタルDVDでも観たいなと思いつつ、シリーズ通してその機会がない作品である。いつか観てみよう。

Dscn4522日中の4回に運転するという気動車。時間になると子ども連れとか、「その筋」の人とかがどこからともなく集まってくる。そして出発。窓を全開にして、気動車のエンジン音を久しぶりに楽しむ。本当、このまま藤並でも湯浅でも、何なら紀伊半島を一周してもいいくらい。

Dscn4526ただあくまで動態保存の一環としての運転の気動車。100メートルほど走るとここで停車し、向きを変える。あくまで動態保存。逆走して交流館の横を過ぎ、到着したのは旧金屋口駅。折り返しまでの5分間、ホームに降りることができる。先ほどは「立ち入り禁止」のロープに阻まれた空間であるが、これはいい。

Dscn4530今にして思えば小ぶりな終着駅である。ただ、鉄道がやってくるこの安心感というのは何なのだろう。わずかの時間であったが、しばしのタイムスリップを楽しむことができた。うーん、でも逆にいえば、鉄道を楽しむということは今となってはこういう「過去の世界」でしかできないことなのかなと、鉄道を取り巻く厳しい現実も感じるところである。どこかの駅から終着駅までの「盲腸線」に果たして将来はあるのかと、現在各地で走っている路線の行く末にも思いを馳せることに。

Dscn4479端から端まで500メートルにも満たない区間ではあるが、昼下がりの一時を過ごすには格好のスポット。今回はクルマでの訪問となったが、路線バス、コミュニティバスも使いようによってはのんびりとした一時を過ごすのにうってつけ。ちょっと坂を上ればコンビニもあるので、そこで食材を仕入れるのもいいかなと。ハンドルを握っていなければ、かつての急行型気動車の車内でのワンカップ酒・・・というのもあり。

Dscn4478この日の大きな目的も果たせたかなという思いもあり、この後は当初予定しておらず、その存在もここに来て初めて知ったというスポットに足を延ばすことに・・・・。

コメント