広島出張の翌日。集まった中の有志は親睦ゴルフへと参加していったが、急遽の参加となった私はそちらには加わることなく大阪に戻ることとする。
戻るにあたって選んだのは新幹線の「さくら」ではなく、在来線のホーム。そこに宮島口からやってきたのが「清盛マリンビュー」である。
気動車を改造したこの列車、これまでは「瀬戸内マリンビュー」ということで三原~広島間を運転しており、私も乗車したことがある。ホテルのラウンジのような車内のつくりで、瀬戸内の穏やかな車窓を眺めるのに格好の列車である。ただこれも指定席車両のため、急遽駅の窓口で申し込む。「山側の席しか空いていない」と言われるが、確か山側といえばボックス席ではなく長いソファータイプのシートだったはず。ゆっくりと過ごすにはそちらのほうがいいかもしれない。展望スペースもあることだし。
やってきた列車。ヘッドマークに清盛のイラストがあり、「清盛」と大書されたしゃもじも前面にかかる。呉線だけでなく、山陽線で宮島口まで行くのが今回の「清盛マリンビュー」の特徴である。こういう陸路もあれば、イベント期間中は音戸と宮島を結ぶ観光高速船も運航されるとか。ある意味神戸より大規模な観光キャンペーンかもしれない。
広島からはグループ客や家族連れが目立つ。ほとんどの「区画」が何がしかのグループで埋まる。私も指定された座席へ。海側に向けてソファーが延べられており、これなら2時間あまりの車内も快適に過ごせることである。こういう列車、「混戦BB会」でも揺られてみたいなと思う。同じような席なら近鉄のビスタカーの階下席があったか。それもまたいいかな。
広島を出発。早速テーブルにビールやらつまみやらを広げるグループがいる。地元のおっちゃんたちのようで、年季の入った広島弁が飛び交う。私にとってはその言葉も懐かしいものに感じ、瀬戸内の旅のBGMにぴったりだなと思う。いよいよ「週末鉄道紀行」である。
この列車にはガイドが乗っている。呉の観光協会の方ということで、呉や清盛のパンフレットを乗客に配布して回る。そして、呉市、清盛、音戸の瀬戸、戦艦大和、そして瀬戸内の島々についてマイクを手に解説をしてくれる。それに対して「あれはあれじゃけえの」などと仲間内でまた魚にして飲むおっちゃんたち。
このおっちゃんたちも、平家の末裔かもしれないな。「平の酒盛」とかいう・・・・。
呉に到着し、観光ガイドもここで下車。しきりに呉のPRがなされてはいたが、呉で指定席を立つ人はほとんどいなかった。別に呉が悪いということではないが、せっかくイベント列車に乗ったのであればもっと遠くへ行きたいというのが人情である。宮島口から呉まで乗車すれば1時間あまり、それが一番いいのかもしれない。
ここからは純粋な列車の旅である。天気も何とか持っており、山がちなところ、安芸津の海あたりと車窓が展開する。気動車のエンジン音も心地よい。「平の酒盛」もいよいよ絶好調になってきた。
竹原で列車行き違いの小休止。「平の酒盛」もここで「たばこの酒盛」の小休止。もっとも、危うく列車に乗り遅れそうになっていたが・・・・。
忠海からは今度は別の観光ガイドが乗車してきた。赤に近い色の上着を着たその人たちは「アゼリアガイド」という三原の観光協会のボランティア。「アゼリア」とは三原市の花であるさつきの英名とか。「最初は壁を見て練習して、次は猫を相手に練習して、人間相手にやるのは初めてですけえ、聞き苦しいところがあるとは思いますが」という前置きがあり、忠海から広がる海や造船所についてのガイド。
忠海の「忠」とは清盛の父、平忠盛から取った名前という。少し先に「盛」という集落もあるとか。なるほど、清盛マリンビューにはその前段の海賊退治も絡んでくるということか。
この辺りが線路と海岸線が最も近づくところである。こちらに浮かぶ島々も心和ませるものがあるが、かつての瀬戸内の交易路としての位置づけを思うに、今度はそういう視点での旅をしてみたいなと思わせる。
久しぶりの呉線の車窓を楽しめ、三原に到着。この後はどうするか。このまま在来線でもう少し東に進むことにする・・・・。