アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル/クレイグ・グレスピー監督
フィギュアスケーターのトーニャ・ハーディングの物語。事件のことは多くの人が知っていることだが、実像はそんなに知られていないのではないか。とにかく最初から変わった家庭に育った天才少女だったことから、もともと境遇が悪すぎて、かわいそうな気もする性格の悪い人に育ってしまった歴史である。
スケートに関しては天才少女だったことは間違いなさそうだが、この子を育てた母親が強烈な変人である。こんな人作り話で存在したのなら、嘘っぽすぎて脚本家が笑われる。そうして事件を起こした夫とその友人が、典型的なアメリカ人的にバカである。裁判では死刑にすべきだったのではなかろうか。しかしそういう人とパートナーになったトーニャという女性だからこそ、運命的な不幸を背負ってしまったということなんだろう。まったく可哀そうなことであった。
演じているのは女優さんなんだと思うが、氷上の演技も見事に見えるので、たぶん特撮なんだろう。ドラマ中心の映画ではあるが、こういうのは、現代的な技術の進歩のたまものだと思う。違和感なく、そうして迫力がある。疑似ドキュメンタリーが混ざるが、そういう処理も上手いと思う。アメリカではたいへんに盛り上がっただろうお茶の間のスキャンダル事件だったんだな、ということが改めてよくわかった。いや、日本でも騒ぎにはなったはずだが、こんな話だったのかは正直よく知らなかった。まあ、知っている人も知らない人も、楽しめる映画ではある。いや、楽しい話では無いけど、これだけバカな人達の半生を観て楽しめるのが人間のサガである。