007スペクター/サム・メンデス監督
メキシコで爆弾犯を殺したボンドは、その殺した相手の葬式に出る。そこで爆弾犯の奥さんとデキたりもするが、影の組織スペクターと対決することになる。組織が狙う男に会いに行くと自殺されるが、その娘を守ることを頼まれる。今度はその娘とデキてしまうが、昔の恩人の息子が悪の組織の大将になっており、更にボンドが属する諜報機関解体の危機にも面しており、そういう状況を打破するためにカーチェイスなども派手に行うのだった。さらにヘリやセスナの運転なんかもしていた。
内容は複雑なんだが、まあいいだろうという感じ。敵も手ごわいがジェームス・ボンドはカッコよく戦ってすっきりする。捕まってピンチを迎えたりするが、そんなにドキドキしない感じもした。漫画チックな活劇に徹するつくりになっており、ボンドが精神的に苦悩する姿はあまりない。そういうあたりは、近年の007シリーズとは少し感覚的に違ったものになっているかもしれない。個人的にはカジノ・ロワイヤルの無茶な感じや、前作の敵の恐ろしさなんかが良かったと思うので、この強すぎるボンドというのは(力では負けている場面も多かったけど)思い入れしにくいとも思った。展開はスピーディーで洗練されていて、まったく飽きさせないのはいいとは思うけれど。
基本的にダニエル・グレイグ主演のシリーズは、とてもいいと思う。以前の007シリーズも娯楽に徹している楽しさはあったが、どこかB級感があった。そういうものを払拭して、深みのあるストーリーになってきたというのが一番良かった訳だが、ここにきて、以前のような原点回帰のアクションに徹して作ったという事かもしれない。今後のシリーズのことは僕は分からないが、それにどうせ見ることにはなるとは思うが、この展開は僕の好きになりかけたボンド・シリーズでは、残念ながら違う。これで主演が変わるという噂もあるようだが、ちょっとヒネたボンドの方が、僕には好みのように思う。まあ、そういう期待が世界的な傾向であるはずは無く、ちょっと悲しい感じはするのである。