カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

怖ろしいが目が離せない   恐怖の報酬

2020-01-07 | 映画

恐怖の報酬/ウィリアム・フリードキン監督

 それぞれ過去に何かあって、南米のある国に逃れてきた男達の物語。森林の中にある油田が、事故で大爆発を起こし火災となってしまう。火を消すためにニトログリセリンを使って、爆風で消そうということになる(そんなことで消えるのかは不明)。しかしニトロは衝撃に弱いという性質があり、南米の森林の悪路を運ぶことは、命がけの難行なのだった。しかしながら男たちは、命を懸けでも金を手にしたい事情があるわけで、恐怖の悪路に立ち向かわざるを得ないのだった。
 フランスの名作版のリメイク。これも僕は見た事があるが、ものすごく面白い作品である。さらに監督のフリードキンが、40年前に「エクソシスト」で大成功をして、自分の私財をなげうってまで制作に力を入れ、二年にわたって南米で撮影したといういわくつきの作品だった。にもかかわらず興行的には大失敗する。映画の評価がそもそも当時は芳しくなかったことと、配給会社が短縮版にして公開したために、内容的に訳が分からなくなったためもあるのではないかといわれている。40年という時を経て、改めて監督本人が、複雑な配給の利権を解きほぐし、再上映を果たしたという。
 正直に言ってこれだけの傑作が、どうしてそのような運命を背負ったのかは、本当に不可解だ。何故ならこの映画、息をつかせない面白さがあるうえに、非常に凝った構成で、最後の見事などんでん返しの皮肉が効いているのである。さすがにホラーの名作を作っただけのことがあって、ハラハラドキドキが続いてものすごく怖い作品だが、日本の漫画のように面白くてやめられない感じだった。確かに説明的な演出が少なく、映画に慣れていないような人には、難解に見えるような展開はある。しかしそれは男たちのリアルを支える過去のことであって、後半に通じるサスペンスには、単に身を投じて観ていればいい。よくもまあ次から次へと、ものすごく絶望的な危険が続くものである。感心を超えて呆れてしまう。確かに怖かったが、凄いものを見たな、という感動は残るはずである。これを映画史に残さずに何を残せというのだろうか。
 ということで、今となっても古いんだか新しいんだか分からない見事さを、多くの人に堪能してほしいものである。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« やれる可能性に賭けてみると... | トップ | 火を借りる人 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。