魔女/五十嵐大介著(小学館)
全2巻。絵が上手いというので興味をもった。まさに絵画的な漫画世界。不思議な話だが、ストーリーも面白い。
実はNHKの「漫弁」という番組に著者が出ていて、緻密な絵を、アシスタントを使わずに書いている様子が紹介されていた。その絵を見ていて、直接というか、とにかく紙に書いてある絵を見たいと思った。漫画を読みたいと思った訳だ。もちろん商品だからこのようにアマゾンでクリックすると手元にマンガ本が届く。そうして手にしてまったく満足である。何しろ書かれていた世界がこのようなものだったと具体的に分かる。そうして正直に言って、テレビで見てみたいと感じていた絵というのが、まさに想像以上に凄いということが分かった。このクオリティで漫画としてストーリー展開されている。まったく凄いことである。もちろん他の漫画家の絵だって凄いものはたくさんあるのだが、なんというか、似ているものが他にもありながら、やはり絵画としての力のある絵なのである。それがいろいろなコマの絵として惜しみなく描かれている。クールジャパンだとかなんだとかいろいろ言われているものがたくさんある中で、やはり漫画世界というのは間違いなく世界に名だたるクールなんだな、と改めて思う訳だ。
絵が素晴らしいから絵を眺めていたらいいのだけれど、いくつも連作になっている短編の物語の一つ一つが、なんだかものすごくクオリティが高いのである。天は二物を与えずというが、それにそもそも引用するものとして意味が違うが、幻想的な絵を書くことが出来て、そうしてそのままその幻想的な世界観のある物語を構想することが出来る。書いている人間が苦労しているかもしれないことをとりあえず忘れておくと、読む側の人間にとって大変に有意義な出来事である。テレビではアシスタントをほとんどおかずに書いているということであったのだが、そうするとたぶんこのような作品を量産することは出来ないだろうけれど、そういうことだけが、読者としては悲しいということになるのかもしれない。
描かれている魔女としての女性は恐ろしい人ばかりだが、しかしながら特に僕らに危害を加えるわけではない。むしろ圧倒的な存在感で僕らを楽しませてくれた。そうしてこれらの話は、たぶん小説にしたり実写の映画にしたりすると、恐らくだがそこまでは効果的ではあり得ないだろう。漫画を読むというエンタティメントの在り方の、まさに正統的な作家なのではないだろうか。