いつの間にか定着していたという印象のあるのは「天むす」である。僕は最初は何のことなのか知らなかったが、そういうものが名古屋にはあるらしいということは、そういえば過去に聞いたことがあったような無かったような。でも発祥は三重なんだとか。コンビニの所為か、今やどこでも売っている感じになってしまったが、これが略であるより本家という感じが立派である。天ぷらの具のオムスビとは誰も言わない。
そういう略だけど正当な読みなんてほとんどしないよ、という単語はあんがい多い。代表は「ビフテキ」かもしれない。「ビーフステーキを食べたい」よりビフテキの方が旨そうな響きが感じられるから不思議だ。
「レバ刺し」も「レバーの刺身をくれ」と注文している人を見たことが無い。ああ、でももう消えたんだったね。日本とは文化抹消の乱暴な国である。
「マーボ丼」も「麻婆豆腐丼」とは言わない。考えてみるとなんだか不思議だ。商品では麻婆茄子というのはあるが、これを指している訳ではなさそうだ。僕はもちろん四川省の成都で陳麻婆豆腐を食べたことがあるのが自慢である。辛くてつらい思い出でもあるのだけれど…。