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カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

題名通り、交換した人生はどうなる?   人生交換

2012-10-18 | 読書
人生交換/ビッグ錠著(集英社)

 自分によく似た人が居るらしいというのはよく聞く話だ。特にドラマの世界などではゴマンとある。実写の世界では大抵一人二役になるけれど、漫画だとそのあたりは遠慮が無い。いくら似ているといっても、現実社会で同じというほど似ている他人というのはやはりめったにない。芸能人などに似ている人が出てくるが、似ているからこそ微妙な違いに、自然におかしみを感じる場合がほとんどだ。やはりこの設定は、映画とか漫画世界で無いと実現不可能な設定なのではなかろうか。
 そういう前提はあるにせよ、境遇の違う二人がよく似ているということで入れ替わるとどうなるか。一人は独身のタクシー運転手、もう一人は大会社の御曹司。こういう設定もまさしくベタだ。もうせっかくだからそうでなくちゃ。タクシー運転手がしがない境遇であるかどうかともかく、この男はリッチな生活に憧れていた。月に一度の給料をもらった休みには、一日だけ豪華な生活を送る事を心のよりどころにしている。そうして高級ホテルを利用したのが縁で、そのホテルを定宿にしているもう一人に出会って入れ替わろうということになるのである。
 大富豪の御曹司が裕福でうらやましいというのは、そういう境遇で好き放題の生活ができるだろうことに尽きる訳だが、金持ちにだってめんどうなことは多々ある訳で、金のある人脈とのつきあいや、重苦しい会社の会議だってある訳だ。実はこの御曹司くんはそういう生活にウンザリしていて、入れ替わったタクシーの運転手の生活の方を満喫している。父親の威光で何とかなっているだけのことで、仕事にはやる気が無かったし、どうもその才覚もない人間だったようだ。ということで人生を入れ替えて、お互いがハッピーでよかったね、という話では終わらない。まあ、その辺が漫画ではあるのだが、無茶なりに面白いお話の展開になるのである。
 短編集なのでその他にもいろいろあるのだが、基本的に成人向けの漫画雑誌に掲載されていた作品ということで、結構アダルトな内容が多い。どんでん返しもブラックなものが多くて、そのあたりのテイストが好きな人向けだという前提は必要かもしれない。
 ビッグ錠といえば、料理漫画というイメージが強いのだが、料理ものが何故だか壮絶なバトルになって、かなり荒唐無稽になるがしかしそれが本当に旨いのかどうかは漫画だから読者にはよく分からないが、勝負がつくという変な話が多かった。しかし後にテレビのバラエティでは「料理の鉄人」のようなものが生まれ、僕らのように少年時代にビッグ錠を読んだ人間は、漫画世界が実写の世界になったような錯覚を覚えたのではなかろうか。漫画的なハチャメチャな世界であっても、いずれは現実社会にも実現してしまう。そういう意味では彼の存在は、少なからぬ社会的な影響があったのではなかろうかという気がしないでもないのである。
 それにしても漫画で描かれる料理そのものはそんなに旨そうではないのだけど、それを食っている表情が旨そうなので、結果的には旨い料理であることが分かるという手法は、やはりちょっとばかり詐欺的なものではないかとも思うのであった。むしろ読者には本当に味が伝わらないからこそ、料理漫画というのは究極の味を表現できるということが可能になる。こればっかりは現実には無理な問題で、漫画を現実が越えられないということなのではなかろうか。
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