主に若い人に向けて読んで欲しい100冊を選んだわけだが(もう何冊も入れ替えての選別、大変でした。ほとんどバカですね)、特に社会に出て生きていく中で、必要と思わる知識というのは数が多い。特にそういう中でも自分の身を守るという意味で知っておかねばなならないものは、なんといっても金のことではないかとも考えられる。
いちおう100冊の設定からは、読みやすい(中には骨のあるものも混ざったが)を考慮したし、安価で簡単に手に入るものがいいとも考えた。さらに漫画と小説は外した。
しかしちょっと引っかかってしまったのは、読みやすく、深い理解の可能な作品が、一つあるのだった。
それは他でもなく
「ナニワ金融道」青木雄二(講談社)
なのである。
90年代だったと思うけれど、僕はかわぐちかいじと青木雄二は、漫画だけど例外的に読んでいた。それは面白いからというのが何より基本だけれど、何度読んでも考えさせられるからである。そうしてそういう深い部分にひたって、大げさに言うと、まだ何者でもない自分のことを考えるのだった。
人がお金を欲しがるのは、それは生活の必需品であるばかりか、欲望でもあり、現在や未来などの時間でもあるからだ。実際は単なる紙切れに過ぎないが、そのことで人の命も奪うことができる。お金というのは、人間が信じている観念の具現的なものである。そうしてそれが共通して価値を持っている。そんなものを扱う人間らしい道具であって、だから人間にくっついている生き方そのものにもなりうるのである。
漫画はなんとなくへたくそだし、バックに描かれている看板その他は、限りなく下品だ。こんな漫画を読むなんて信じられないと思われるかもしれないが、そう思う方がまっとうだとは思うが、読み進むと、これがこの世界観でなければ、どうにもなんとなくしっくりこないことが理解できるに違いない。この漫画的な世界こそ、本当に人間を描いているリアルな世界なのだ。
ナニワ金融道の作者がその後亡くなったことにより、続編らしい作品もそれなりにある。また、その事務所出身の作家の描いた「カバチタレ」も面白い。基本的な世界観も相通じるものがある。
少し毛色は違う作品かもしれないが「闇金ウシジマくん」というのも、そのような世界をもっとバイオレンス化した作品とも捉えることができるんじゃなかろうか。僕は全部読んだわけではないが、こちらもなるほど勉強になるな、という作風であった。やっぱりお金の勉強は、漫画の方が向くのかもしれない。