ハリーの災難/アルフレッド・ヒッチコック監督
森の入り口で男が倒れている。すでに死んでいる。これはハンティングを楽しんでいた元船長が、ウサギと誤って撃ってしまったものと思い込んでいる。どうしたものかと思案しているところに、子供が来たり、ご婦人が来たり、絵描きが来たり、飲んだくれが靴を拝借したりもする。いろいろあって、スケッチをしていた絵描きとともに、証拠隠滅のために死体を埋めてしまう。しかしながら考えてみると、自分が発射した球数と、現場に残されていた証拠が一致しないことがわかる。掘り返して確かめてみると、鈍器のようなもので殴られていた痕のようにみえる。それでは殺したのは誰だろう。自分が犯人でないことが分かったので、安心して、また埋めるのだったが……。
そうこうして何度も埋めたり掘り起こしたりする。そういうゆるいユーモアコメディ作品なんだが、いわゆる英国流の会話の妙を交えたサスペンス、ということになるのだろう。途中未亡人と恋愛が絡んだりして、二つのカップルまで生まれてしまう。それまで売れないへんな画家も、おそらく将来的な安定を手にする。しかしまあ、埋めたり掘り返したりすることがこれで正当化されるというのは、最後までよく分からないのだった。
何度も地上波で放送されており、観たことはあると思う。しかしながら大して面白くもない作品なので、ほとんど忘れていた。ほのぼのした空気感と、寓話的なお話の展開を見せるわけだが、皆何故か最終的には力を合わせて帳尻を合わせようとする。よく考えないまでも、そもそもそれぞれはそれなりの共犯関係に陥っていると思われるのだが、様々な危機を運も手伝って乗り越えることができるのである。実にくだらない。
舞台か何かでもできそうな話で、わざわざ映画にすることもなかったのではないか。ヒッチコックはのちの人が持ち上げるほどの作家性はそもそもそんなにない人だと思うけれど、多作でもあるし著名でもあるし、まあ、いろいろと実験的なこともやったということで、こういう作品もあるということなんだろう。そういう意味では知っているというだけで、何かの役には立つのかもしれません。たたないとは思うけど。