プリズナーズ/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
途中途中でもかなり感心し、面白く観ておきながら、最終最後の場面で、ふと、なんだか見覚えがあると感じた。実際のところ知っている展開のあるところがあって、以前予告編でも見たことがあるんだろう、と思っていた。ブライアン・ウィルソンの役をやっていたポール・ダノも出ていて、こんな役もやってたんだな、などと思いながら観ていたわけで、まったく迂闊だったのだが、過去の僕のブログの記録を見返してみると、8年前に見ていた作品だった。楽しく見たんだからそれでいいじゃないか、とも思えるが、覚えていなかったことにも呆れるとともに、これを選択してしまった動機にも、同時にあきれ果てたのだ。それというのもU-NEXTの配信の終了が12月中で切れるものがいくつかあって、だいたいにおいてマイリストというのは追加順で作品が並んでいるのだけれど、たまにそのようにして、実はいますぐに観るべき順では無いのだが、作品がどんどんたまって来て(180くらいは溜まっている)、配信が無くなるものも気になって観るようになってしまっている。それと映画の尺もあるから、今日見るべきかどうかの選択に、そういう要素も加わって来る。この作品は150分以上あるので、分割して観るか、腰を据えて観るかということも考慮しなくてはならない。それで食事して風呂に入ったタイミングが少しいつもより早くて、この日は少し時間的に余裕があって、新し目で観る作品より、これでも観てみるか、と急遽気が変わったのである。間がさしたとしか言いようが無い。今はただでさえ忙しい12月で、今後の予定を考えると、夜に落ち着いて映画なんて見る余裕はそんなにないはずなのだ。それにもかかわらず観たことがある作品を観たことがあるということを忘れてまた観てしまうなんて。呆れてものも言えない。こうして書いてしまうことはできるが。
作品としては、娘が誘拐された可能性が非常に高い状況で、その事実を知っていそうな極めて怪しい人物を、私的に監禁拷問して口を割らせようとする狂気にある。その人物は知的な障害があるのか、又は精神に何か異常がありそうで、考えていることをうまく口に出すことができない(これも後になぜそうなったのか分かる訳だが)。何か知ってそうなことを口にすることがあって、父親は娘の誘拐事件と関係があると確信している。しかしやっていることは明らかに行き過ぎているわけで、既に踏み外しているからこそ、あと戻りさえできない。事件に関連しているかもしれない変質的な人物は他にもいて、そうして別の事件が分かったりもする、終始暗い恐ろし気な予感を感じさせられる展開が続いて、物語はそれなりに意外な方向へ進んでいくのだった。
比較的難解な作品を作るヴィルヌーヴ監督なのだが、今作品に限って言えば、それなりに分かりやすい映画と言えるだろう。分かりやすいとはいえ、複雑に考えさせられるものではあるのだが。そういう作品だからこそ、面白い訳で、さらにほぼ忘れていたからこそ、また楽しんだ。やはり事実を受け止めて、素直に感謝すべきなのかもしれない。どのみちこれからも映画は観ていくわけであるのだから……。