カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

男はあきらめで達観する   刑事コロンボ・別れのワイン

2015-07-21 | コロンボ

刑事コロンボ・別れのワイン/レオ・ペン監督

 名作と人気のある本作品。僕はなんだかんだで4,5回は観ているかもしれない。しかしながらレコーダーに入ってたので改めて鑑賞。大筋は覚えてはいたものの、やはり久しぶりでいくつかは新鮮だった。物覚えが悪いって、人生を楽しくします。
 腹違いの兄弟である弟から、金欲しさに父から受け継いだワイナリーを大手の酒造会社に売却する計画を聞かされ、逆上し鈍器で頭を殴ってしまう。気絶した弟を密閉できるワインの貯蔵庫に閉じ込め窒息死させ、自分は一週間の旅行に出てアリバイ工作。帰宅後既に死んでいる弟にスキューバダイビングの装備をつけさせ、海に流して事故に見せかけるというもの。
 まあ、最初からいろいろ無理はあるが、とっさの考えとしてはなかなかのトリックかもしれない。しかしながら誤算というのは一週間留守にしていた天気。雨も降った上に記録的な猛暑になったということが、犯人の思惑を大きく狂わせてしまう。結果的にワインにかける情熱すらも、悲しい海の藻屑としなければならなくなってしまう。
 この物語が面白いのは、さらに秘書として信頼のおけるパートナーであった女性に、助けられることを条件に精神的に追い込まれてしまうことだ。自分の命運を握っているほどの助け船を出してくれるのだが、これが大きな弱みであり、自分の将来を暗くさせてしまう。静かに助け舟と脅迫をかける秘書の恐ろしさも見事である。
 ワインのうんちくについては、あまりにも神がかりすぎていてかえって胡散臭い。これが作品の一定のトーンになっており、格調が高い作品のように思われているようだ。しかしながら僕のように胡散臭く思ってしまう人間にとっては、ちょっと滑稽な感じもする。さらに言うならばコロンボの取っている行動というのは、犯罪であるばかりか、人間としてルーズに悪すぎてとても共感のできるものではない。イタリア人はいい加減なところがあるという偏見があるが、こんなことがそもそも捜査とはいえ許されるはずがないのである。
 そうではあるが、女の恐ろしさが描かれているところが大変に良くて、僕はそこを買うのである。どのみち逃げられない不幸なら刑務所へ行こう。そういう達観のような余韻が、納得の作品なのではないだろうか。
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