幻の娼婦・刑事コロンボ/ジェームズ・フローリー監督
心理学者でセックスセラピーで著名な女性が主人公。マネージャーの男性を恋人としていたが、彼が浮気をしていることを知り復讐として射殺する。その時に娼婦の服装に変装して犯行を行ったために謎の女が生まれた訳だが、このトリックを最初からコロンボは疑っていて、仕方なく再度変装してコロンボに罠を仕掛けるべく行動するのだが…。
女性の側からセックスの話題を赤裸々に語る事で、女性の精神的な開放を訴える先鋭的な女性であるという設定である。今でもそんな人はいるが、当時のアメリカであっても、やはり先鋭的な進んだ理想の女性像であるという感じだろう。しかし恋人はそのような自分をある意味で利用して、若い別のマネージャーと情交していたということだ。性的自由を謳っていた立場としては立つ瀬がないし、やはり本当に愛していたということと嫉妬も大きく許すことが出来なかったということだろう。
性的な話題になるとコロンボがタジタジとしてしまうというあしらいも上手く、殺しのための仕掛けもそれなりによく考えた末であったが、あんがいあっさりコロンボが仕掛けに疑いを持つために困惑して追い込まれていく。シリーズとしては当然の流れだが、このシリーズは普通自分の地位を保つために犯人が苦労するわけで、この女性は殺しの犯人とはいえ、復讐の理由としてはある意味でまともだから、なんとなく気の毒である。そういう意味で、感情的に歯切れが悪く感じられるようなところがあったのか、シリーズではあまり人気が無かったらしい。殺しを隠すという心情のみが良くないという一点で、コロンボの正義の推理が成り立つということである。浪花節的にはダメでも、トリックを暴く展開としては、そんなに悪くは無いのではないか。
また、実はコロンボがチューバの名手であり、いきなり演奏しながらパレードしたりするサービスショットがあったりする。本当に演奏しているのかは知らないが、ちょっと意外過ぎたのか、その後コロンボが楽器を演奏したとは聞いていない。まあ、詩も書くし絵も堪能でさまざまな才能がある人だから、その多芸ぶりを踏襲して作られたエピソードなのだろう。