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「復讐 天橋立」を読む 11

(静岡市中央図書館館内)

午後、駿河古文書会に出席した。この暑さからか、出席者がやゝ少なかった。発表担当のM会長が体調不良で欠席され、急遽、N副会長がピンチヒッターで担当された。この酷暑は老齢の会長には相当のダメージだったのだろう。お互いに、何とかこの夏を無事に乗り切りたいものである。

夕刻、女房と、YMさんのお通夜に行く。長く教職にあり、地区の旧家でもあったYMさん故か、会場のホールは、参列者が溢れんばかりで、驚かされた。家族葬が普通になってきた現代、これだけ参列者が多い通夜は初めてであった。明日の葬式も、同じホールであるが、参列者を収容しきれるであろうか。

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「復讐 天橋立」の解読を続ける。

藤弥太、聞きて、御芳志(ほうし)過分(かぶん)には存ずれども、助太刀の事は御断り申すなり。いかに我れら老衰したればとて、後援を頼みて仕合したりと言われんも、口惜しければ、只それよりも娘どもの身の上、おしてお頼み申したし。
※ 芳志(ほうし) ➜ 相手の親切な心遣い(気持ちを敬っていう語)。
※ 過分(かぶん) ➜ 分に過ぎた扱いを受けること(謙遜しながら感謝を表す場合に)。


九郎兵衛いう。いやとよ、それはいわれざる斟酌(しんしゃく)なり。相手は両人、御身は壱人、殊更(ことさら)老体と言い、比興(ひきょう)は十分さきにあり。かかる無謀の奴原(やつばら)がために、一命を失うは、寔(まこと)に犬死(いぬじに)同前なり。しからば好んで命を捨てる期(ご)にあらず。
※ いやとよ ➜ (感動詞)いや、そうではない。いやいや。
※ 斟酌(しんしゃく) ➜ 相手の事情や心情をくみとること。また、くみとって手加減すること。
※ 比興(ひきょう) ➜ 卑怯。正々堂々としていないこと。
※ 奴原(やつばら) ➜ 複数の人を卑しめていう語。やつら。


能々(よくよく)勘考(かんこう)あるべしと、しきりに諌め進めれども、なお藤弥太は性質堅く、ただ幾たびも助太刀の儀は用捨あるべし、心がかりは女どもの儀、強いて頼み入るなりと、ゆっつかえしつ、互いの論談(ろんだん)果てしなく、さてしも夕陽(せきよう)西に傾き、既に時刻になん/\とす
※ 勘考(かんこう) ➜ よく考えること。思案。
※ ゆっつかえしつ ➜ 行ったり来たりをくりかえすこと。
※ 論談(ろんだん) ➜ 物事の是非・善悪を論じ述べること。
※ さてしも ➜ 「さて」を強めた語。それにしても。
※ なん/\とす ➜ まさになろうとする。
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