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「天明年中叓」を読む 12

(散歩道のタマスダレ)

大代川の土手に、毎年、タマスダレが花を咲かせる場所がある。土の轍の間に一時だけ姿を見せる。夕方、女房と散歩に出て見つけた。

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「天明年中叓」の解読を続ける。「主殿頭に申渡す趣」の項のつづき。

一 その方義、御役屋鋪内の儀は、同席と違い、格別美麗を尽くし、衣食、並び翫品(がんぴん)木取(きどり)に至るまで、天下に比類(ひるい)無き結構(けっこう)にて、居間の釘かくしなどは、金銀無垢(むく)にて作り、これまた銀座の物どもより、賄賂(まいない)にて相贈り候由。これに准じ、その余、与かるに暇(いとま)あらず候。
※ 翫品(こうち)➜ なぐさみのために、もてあそばれる品。
※ 木取(きどり)➜ 大形の材木をひいて、建築その他の用材を取ること。
※ 比類(ひるい)➜ それとくらべられるもの。同じたぐいのもの。
※ 結構(けっこう)➜ ぜいたくなこと。
※ 無垢(むく)➜ 金・銀などがまじりけのないこと。
※ 与かる(あずかる)➜ 分け前をもらう。


木挽町屋敷は、唐木(からき)作りに造り候座鋪これ有り、物見座敷前通りの堀、御用に(だく)(さら)い申し付け、浜町屋敷は御当代初めより花美を極め、三方の堀、これまた御用に詫し浚い申し付け、その上、類焼の後、間もこれ無く、以前より格別の再造営申し付け、大火後、御家人初め一統、おびただしく難儀いたし候儀、眼前へ能々存じながら、その歎きを顧(かえりみ)ず、自分壱人の娯楽を極め候儀、役柄不相応の心得に候。
※ 唐木(からき)➜ 紫檀・黒檀・タガヤサンなど熱帯産の銘木。中国を経由して輸入された。
※ 詫す(だくす)➜ 直接には関係しない他の事と無理に結びつけて、都合のよい口実にする。事寄せる。
※ 花美(かび)➜ 華美。はなやかで美しいこと。


その身は勿論、召仕えの妻、自由自在の驕奢(きょうしゃ)、家来重立(おもだ)ち候ものども、栄燿(えいよう)権勢(けんせい)日々超過(ちょうか)甚しきは、非理非法(ひりひほう)を以て、公法を破り候事も間々これ有り候。上の御威光、年々に衰え、その方壱人の権勢、日々盛んに相成り候例え
※ 驕奢(きょうしゃ)➜ 奢侈 (しゃし) にふけること。おごっていて、ぜいたくなこと。
※ 栄燿(えいよう)➜ 大いに栄えて、はぶりのよいこと。ぜいたくをすること。
※ 権勢(けんせい)➜ 権力を握っていて威勢のいいこと。
※ 超過(ちょうか)➜ あるものをこえて先に出ること。また、他よりまさっていること。
※ 非理非法(ひりひほう)➜ 道理にはずれ、法にはずれること。
※ 例え(たとえ)➜ 同じ種類の物事。例。ためし。
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