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「復讐 天橋立」を読む 12

(金谷図書館脇のアベリア)

アベリアは別名、ハナゾノツクバネウツギという。小さな花だが、この季節、公園などの生垣となって、花をよく見かける。きのう、静岡城北公園でも咲いていた。

午後、YMさんの葬式に参列した。お通夜同様、ホールが参列者で溢れた。

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「復讐 天橋立」の解読を続ける。

猶予(ゆうよ)せば比興(ひきょう)の汚名を蒙(こうぶ)るべしと、藤弥太、身繕いして立ち出でるを、九郎兵衛、袖をひかえて言うよう、卒爾(そつじ)ながら御辺には平生何を鍛錬し給うや。藤弥太聞きもあえず、某(それがし)若冠(じゃくかん)の頃より、六尺の柄の鑓を好みて遣いしゆえ、聊(いささ)か手に覚えあれば、その持鎗(もちやり)だに、ここにあらば、やわか両人のうち、壱人は仕留めんものを、残念なりと、
※ 猶予(ゆうよ) ➜ ぐずぐずして物事を決めないこと。
※ 袖をひかえて ➜ 袖をとらえて。袖をとらえて引きとめて。
※ 卒爾(そつじ)ながら ➜ 突然で失礼だが。
※ 御辺(おへん) ➜ 二人称の人代名詞。 対等以上の相手に、武士などが用いた。 そなた。
※ 聞きもあえず ➜ 聞き終わらないで。
※ 若冠(じゃくかん) ➜ 弱冠。年が若いこと。
※ やわか ➜ どうしても。必ず。



(「復讐 天橋立」挿絵4)

言いも終わらざるに、九郎兵衛、我が持たせし鎗を取りよせ、柄をたぐって六尺に切り折り、さあらば、これにて勝利を得給うべしと、藤弥太に与えければ、藤弥太小踊りして押し頂き、今泉が玄関先に馳せ出れば、待ちもうけたる大見崎貞義、飯貝丹下、各(おのおの)厳重に出で立ち、悠然(ゆうぜん)と立ち向えば、見物の老若、門前に押し合い/\、上を下へと騒動す。
※ 悠然(ゆうぜん) ➜ 物事に動ぜず、ゆったりと落ち着いているさま。

かゝる騒ぎに、おみな、おとせは一心癲狂(てんきょう)せしごとく、馳せ来りて、藤弥太が袂(たもと)にすがり、詞(ことば)も出ず泣き入りけるを、九郎兵衛これを押しなだめて、さまで思うは理(ことわり)ながら、もの数ならねど、某(それがし)後援となり附き添ううえは、決して老体に虚事(きょじ)、過(あやま)ちはあるまじきなり。かまえて気遣いなく給いそ、と力を付くれど、退(ひき)もやらず、左右に取りつき放さばこそ。
※ 癲狂(てんきょう) ➜ 狂気。ものぐるい。
※ 虚事(きょじ) ➜ むなしいこと。空虚なこと。
※ かまえて ➜ 決して。
※ 退(ひき)もやらず ➜ 退くこともしないで。


読書:「下町やぶさか診療所」 池永陽 著
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