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「復讐 天橋立」を読む 25

(静岡城北公園のクスノキ群)

午後、駿河古文書会で、静岡へ行く。台風の名残りの厚い雲から、時折、雨がぱらついた。

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「復讐 天橋立」の解読を続ける。

(やが)て御盃を賜わりければ、臺右衛門平伏し、臣の身としてかゝる無礼も芸道の私(わたくし)ならざる所、若(わか)、これを咎(とが)め給わぬ大量(だいりょう)のほど、恐れながら感ずるに余りありと。頻りに拝謝(はいしゃ)し奉れば、その時、城主仰せけるは、かほど剛強(ごうきょう)逞一(ていいち)の侍に、比興(ひきょう)至極の一矢(いっし)あり。心づかざるや、如何に、と宣(のた)もう。
※ 大量(たいりょう) ➜ 度量が大きいこと。心が広いこと。
※ 拝謝 ➜礼を言うことをへりくだっていう語。 心から感謝すること。
※ 剛強(ごうきょう)➜ たけく強いこと。勇猛なこと。
※ 逞一(ていいち) ➜ 最高にたくましいこと。
※ 比興(ひきょう) ➜ 卑怯。正々堂々としていないこと。
※ 一矢(いっし) ➜ 一本の矢。転じて、向けられた攻撃や非難。
※ 心づく ➜ 気が付く。


臺右衛門、承り、某(それがし)いやしくも累代当家の禄を給わり、武門において、仮にも臆(おく)せし心を抱かず。何がゆえに、こは仰せ出さるゝや。願わくは、御示(しめ)し給わるべし。城主宣(のた)もうよう、去頃(さいつころ)、汝が弟、貞蔵、中禅寺に於いて横死(おうし)をとげたる。その敵が姓名住所も分明(ぶんめい)なるに、何とてこれを討たざるや。等閑(なおざり)に差し置くは、その意得ずと宣もうとき、
※ 去頃(さいつころ)➜ 先つ頃。さきごろ。先日。
※ 横死(おうし) ➜ 殺害されたり、災禍などのため、天命を全うしないで死ぬこと。不慮の死。非業の死。
※ 分明(ぶんめい) ➜ はっきりしていること。明らかなこと。
※ その意得ず ➜ 合点がいかない。納得できない。


臺右衛門進み寄りて、さればこそ、先達て病気と披露し、出仕を怠(おこた)り、密かに岩谷の城下に立ち越し、かよう/\の始末にて、弟の仇敵(きゅうてき)、日下部藤弥太は討ち留(と)め、もっとも、いまだ元伊勢山の大谷木をば討ちとらず。(かれ)は聞こゆる豪傑なるゆえ、術(てだて)をめぐらし討ち留(と)めんと、ひと先ず帰宅し、そのことに預かる所、はからざる御咎めを蒙り、閉門いたし罷り有り。
※ 仇敵(きゅうてき) ➜ 憎んでいる相手。かたき。あだ。
※ 渠(かれ) ➜ かれ。三人称の代名詞。
※ 預かる ➜ (正しくは、「与(あずか)る」)物事にかかわりをもつ。関係する。関与する。
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