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「復讐 天橋立」を読む 16

(散歩道のアブラゼミ)

今年はこれほど暑くなっても、クマゼミのシャン、シャン、シャンと鳴く、かしましい声が少ないような気がする。夕方、散歩途中に、焼け付くようなアブラゼミの声を聞き、姿をカメラでとらえた。エドヒガンの幹には他にもアブラゼミが居るように思えた。当地にはクマゼミがアブラゼミより圧倒的に多いと思っていたから、意外に感じた。何か天候と関連するところがあるのだろうか。

朝から掛川の孫三人を一日預かる。保育士の免許更新講習の最終日。夕方、さすがに疲れたようで、みんなで夕飯を食べて帰った。

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「復讐 天橋立」の解読を続ける。

然るに藤弥太は、この度の一件、老人の比類(ひるい)なき手柄(てがら)なりとて、帰宅のうえ、褒賞(ほうしょう)を賜わり相勤めけるが、今日、御菩提所霊光院といえるに、御使いを蒙(こうぶ)り、供人引き具し立ち出でけるに、大見崎臺右衛門、途中にて行き合い、何心なくこれを見るに、年齢と云い、人品(じんぴん)格好、中禅寺にて聞き糺せし藤弥太によく似たりと、目を配れば、(かれ)が持たせし鑓(やり)の柄(え)、凡そ六尺もあらんと思うほどなれば、扨(さて)こそ紛(まぎ)れなしと大いに悦び、合羽篭(かっぱかご)担(かた)げたる下部(しもべ)に近寄り、これは誰人(だれびと)にてわたらせ給うや、承りたきことありと囁(ささや)き尋ぬるに、下部答えて、当所の侍臣、日下部籐弥太なりという。
※ 比類(ひるい) ➜ それとくらべられるもの。同じたぐいのもの。
※ 褒賞(ほうしょう) ➜ すぐれた行為や作品などをほめたたえること。また、そのしるしとして与える金品。褒美。
※ 人品(じんぴん) ➜ 人としての品格。特に、身なり・顔だち・態度などを通して感じられる、その人の品位。
※ 渠(かれ) ➜ かれ。三人称の代名詞。
※ 合羽篭(かっぱかご) ➜ 大名行列のときなどに、供の人の雨具を入れて下部にになわせた籠。ふたのある二つの籠で、前後を棒でかついだ。
※ 下部(しもべ) ➜ 雑用に使われる者。召使い。
※ わたらせ給う ➜ (「あり」の尊敬語)~で、いらっしゃる。



(「復讐 天橋立」挿絵6)

臺右衛門、天の与えと跳悦(ちょうえつ)し、猶(なお)その跡をしたい行くに、栗原の郷なる霊光院の門内にうち入りければ、頓(やが)てその帰宅を待ち受け、只一刀に討ちて捨てんと、臺右衛門その便りよき所に待ち伏せし、今やおそしと扣(ひか)ゆるにぞ。
※ 跳悦(ちょうえつ) ➜ 跳び上がって喜ぶ。
※ 便(たよ)り ➜ 都合のよいこと。便利なこと。


読書:「走るジイサン」 池永陽 著
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