平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「天明年中叓」を読む 14
散歩道も槙の木の生垣に、トウガンが二つ並んで生っていた。まだまだ大きくなるという声が聞こえそうである。
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「天明年中叓」の解読を続ける。「主殿頭に申渡す趣」の項のつづき。
一 近年、御用金と申す名目にて、呉服所より諸大名へ、御借金これ有り候。もっとも右金子は、呉服御用金の内にて、その利分金を以って、年々、御反物代金に相成り候由。たとえ、如何様御倹約に相成り候て、御為とは申しながら、御借金の利足を以って、御召し呉服代金、相補(おぎな)い候義、鄙劣(ひれつ)の至り、言語同断の事。その上、右借金の名目にて、諸権門家来、金銀儲け居り候ものも差し加わり、畢竟(ひっきょう)、上の御威光にて、元利滞りなく取り立て、損金これ無き様にと、姦商(かんしょう)の工(たく)みにはまり、上の御徳をけがし候事。
※ 鄙劣(ひれつ)➜ 品性や言動がいやしいこと。人格的に低級であること。卑劣。
※ 権門(けんもん)➜ 官位が高く権力・勢力のある家。
※ 畢竟(ひっきょう)➜ さまざまな経過を経ても最終的な結論としては。つまるところ。結局。
※ 姦商(かんしょう)➜ 悪賢い商人。悪徳商人。
一 近年、町人どもへ御借金の儀に付、姦曲(かんきょく)の義これ有り、その上、預り候町人、殊外(ことのほか)難儀、迷惑に及び候事。
※ 姦曲(かんきょく)➜ 心に悪だくみがあること。
一 金座の儀は、御由緒これ有り候えども、元来町人の事に候えば、家業柄(がら)と申し、平生帯刀、曽而(かつて)及び不申さず候処、またこれ賄賂を以って、取り拵(こしら)い、平生帯刀にて相勤め候様相成り来たり、これにより、御家人惣じて、信服(しんぷく)致さず候事。
※ 金座(きんざ)➜ 江戸幕府の金貨鋳造所。勘定奉行の管轄下にあった。
※ 帯刀(たいとう)➜ 刀を腰に差すこと。また、腰に差した刀。
※ 御家人(ごけにん)➜ 江戸中期以降の将軍直臣のうち、御目見以下の武士。旗本より身分が低く、直接将軍に謁見する資格をもたない小祿の者。
※ 信服(しんぷく)➜ 信頼して服従すること。
一 百姓町人帯刀は、重き制度とて、古来より人数も大方相定(さだ)まり候。然る処、御領御代官より、さしたる儀これ無き候や、兎や角と申し出候えば、御褒美として、金銀下され候て相済むべき処、帯刀御免仰せ付けられ候者、金銀賄賂より相調い候事。
※ 御領(ごりょう)➜ 江戸時代、幕府直轄領のこと。御料。御料所。天領。
読書:「鹿威しの夢 口入屋用心棒3」 鈴木英治 著
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