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「復讐 天橋立」を読む 10

(隣りの茶畑のセイヨウフウチョウソウ)

茶畑の中に雑草化したものが花を咲かせている。見つかれば即刻抜かれてしまうだろう、はかない命である。

今日も一日、掛川の孫、三人が来ていた。娘が保育士の免許更新の講習のため。一日6時間、5日間で30時間の講習だという。

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「復讐 天橋立」の解読を続ける。

(それがし)事は当国岩谷の家臣、日下部藤弥太というものなり。この度、足弱(あしよわ)ども召し連れ、入湯に罷りこし、か様にもの、狼藉(ろうぜき)ものに出合い、既にやむことを得ず、今夕(こんせき)、双方勝負を決する約諾(やくだく)なり。それに付、貴殿を見かけて頼み入りたき一段あり。定めて聞(ぶん)も及ばれんが、我れら娘どもを両人召し具(ぐ)しながら、かかる急難に逼(せま)りて、迚(とて)も存命、覚束(おぼつか)なし。何とぞ我なきあとは女どもの身のうえ、貴殿へお頼み申したし。もっともこれまで面会も遂げざる上、近頃麁忽(そこつ)に似たれども、武士は相互(あいたが)い何分両人のものを我が屋敷まで、送り届け給われば、生々世々(しょうじょうせぜ)厚恩(こうおん)ならんと、はじめ終りを物語り、思いこんでぞ申しける。
※ 約諾(やくだく) ➜ 約束して承知すること。
※ 一段 ➜ 一つの事柄。一件。
※ 麁忽(そこつ) ➜ 粗忽。唐突でぶしつけなこと。失礼なこと。
※ 生々世々(しょうじょうせぜ) ➜ 決して忘れない
※ 厚恩(こうおん) ➜ 心のこもった深い恩。


九郎兵衛言うよう、如何様(いかさま)、その騒動、先刻より承り及びたり。去るにても御老体の心遣い、気の毒に存ずるゆえ、御頼みの一儀、早速(うけが)申すべき筈なれども、御覧の通り、某(それがし)いまだ年若(としわか)の身分、女中を預り同道せん事、何とやら他の人口(じんこう)もいかがなれば、この儀ばかりは御宥免(ゆうめん)下さるべし。去りながら無下に御断りのみ申し入るゝも、侍(さむらい)の道にあらず。この上は某(それがし)及ばずながら御助太刀(すけだち)いたすべし。定めて御鍛錬こそ有るべけれど、名に負う相手は若者両人、御老人の手の内、若し御難儀に及ぶときは、我等引受け、そのものども、恐らく活(い)けては返すまじ。心しずかに勝負あるべしと云う。
※ 肯(うけが)う ➜ 承諾する。
※ 人口(じんこう) ➜ 世人の口の端。世間のうわさ。
※ 宥免(ゆうめん) ➜ 寛大に罪をゆるすこと。おおめにみること。
※ 無下(むげ)に ➜ すげなく。そっけなく。
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