ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

人権118~家族型的価値観の違いの影響(続き)

2014-10-18 08:55:08 | 人権
●家族型的価値観の違いの影響(続き)

 ここで、本章の時代範囲を超えるが、家族型的価値観と人権について、さらに補足しておきたい。
 自由・平等を説く人権の思想は、フランスで大きく発達した。それは、フランスの中央部が家族型的価値観から普遍主義の考え方を持っていたことと関係がある。普遍主義の社会は、人類は皆同じという考えを持ち、家族型の違いが小さな差異であれば、これを受け入れる。ところが、自分たちの人間の観念を超えた者に出会うと、「これは人間ではない」と判断する。人権宣言の国フランスでは、フランス人とマグレブ人は異なる普遍主義によって、互いを間扱いして、激しく争った。マグレブ人とは、北アフリカ出身のアラブ系諸民族である。 
 トッドによると、フランスには、平等主義核家族と直系家族という二つの家族型がある。これら二つの家族型には、共通点がある。ひとつは、女性の地位が高いことである。フランスの伝統的な家族制度は、父方の親族と母方の親族の同等性の原則に立っており、双系的である。双系制では、父系制より女性の地位が高い。もう一つの共通点は、外婚制である。外婚制は、工業化以前の農村ヨーロッパのすべての家族システムの特徴でもあった。トッドはこれらの点をとらえ、双系制と外婚制が「フランス普遍主義の人類学的境界を画する最低限の共通基盤」とする。
 フランス人が、移民を受け入れるのは、双系ないし女性の地位がある程度高いことと、外婚制という二つの条件を満たす場合である。この最低限の条件を満たさない集団に対しては、「人間ではない」という見方をする。マグレブ人は、この条件を満たさない。
 マグレブ人の家族型は、共同体家族であり、内婚制父系共同体家族である。この家族型は、女性の地位の低さと族内婚を特徴とする。フランス人が要求する最低限の条件の正反対である。あまりに違うので、フランス人は、マグレブ人を集団としては受け入れられない。彼らは「人間ではない」として、間扱いをする。
 一方のマグレブ人の方も別の種類の普遍主義者である。マグレブ人は共同体家族ゆえ、権威と平等を価値とする。フランスは、主に平等主義核家族ゆえ、自由と平等を価値とする。ともに平等を価値とするから、普遍主義である。フランス人が普遍的人間を信じるように、マグレブ人も普遍的人間の存在を信じる。ただし、正反対のタイプの人間像なのである。フランス人もマグレブ人も、それぞれの普遍主義によって、諸国民を平等とみなす。しかし、自分たちの人間の観念を超えた者に出会うと、「これは人間ではない」と判断する。双方が自分たちの普遍的人間の基準を大幅にはみ出す者を「間」とするわけである。
 第2次世界大戦後、フランスの植民地アルジェリアで独立戦争が起こった。アルジェリア人は、マグレブ人である。アルジェリア独立戦争は、1954年から62年まで8年続いた。アルジェリア人の死者は100万人に達した。その悲劇は、正反対の普遍主義がぶつかり合い、互いに相手を間扱いし合ったために起こった、とトッドは指摘する。今日でもフランスでは、マグレブ移民への集団的な敵意が存在する。このようにフランスの普遍主義は、「小さな差異」の範囲外に対しては、差別的である。
 わが国には、フランス革命は人間の平等をうたった理想的な市民革命だと思っている人が多い。そして、フランスは人間平等の国と思っている人がいるが、話はそう単純ではないのである。
 家族型的価値観の4種類の相対性と相互関係を踏まえたうえで、人類が共有すべき価値を考えないと、相互理解は進まない。私は、新しい精神科学が出現し、人類共通に受け入れられる原理が打ち出されるまでは、人権をめぐる価値観の対立は解消しえないだろうと考える。
 主権・民権・人権の歴史における各国共通の要素として、信教の自由を求める運動、課税に反発する戦い、権利・権力の移動、ユダヤ人の自由と権利の拡大、家族的価値観の違いの影響の5点について補足した。もう一つ、重要な要素に、ナショナリズムがある。この点については、次章で国民国家の形成と発展について書いた後に、述べることにする。

 次回に続く。

新潟・佐渡が中国に狙われている3

2014-10-15 09:46:52 | 国際関係
 わが国は、国家安全保障の観点から、外国政府・外国資本による土地取得を規制する法整備を急がねばならない。
 日本各地で外国人が土地を購入する動きが深刻化している。特に森林である。深刻な水不足に悩む中国が日本の水資源に目をつけ、森林を買うことでその土地の水を利用としているのが目立つ。水は「21世紀の石油」といわれるほど貴重になっている。そうした今日、水不足と水汚染に悩む中国が、わが国の水を狙って、水源地の買収を行っている。22年12月、TBSテレビが、北海道における外国人による水資源・森林資源の買い占めを詳しく取り上げ、大きな反響を呼んだ。平成23年1月号の月刊誌『WiLL』が、北海道の買収への規制や日本の森と水を守る法案を特集し、注目を集めた。こうした問題は、全国各地に広がっている。外国勢力に侵されているのは、北方領土、竹島等の国土周縁部の島嶼だけでない。水源や森林を失ったら、日本人は生存・繁栄していくことが出来なくなる。日本の水と森を、外資の食いものにされてはならない。
 外国人による森林資源の取得への懸念の高まるなか、政府は23年4月、森林の所有権移転に際し、事後の届け出を義務づける法改正を行った。だが、事後の報告を求めるだけゆえ、国家安全保障の観点から、取引自体に規制をかけるものとはなっていない。
 中国系を始めとする外国資本による土地買収は、在日米軍基地や自衛隊基地の周辺など、安全保障上、重要な場所にも及んでいる。経済活動の自由ということで、独立主権国家としての意思を発動せず、規制を怠っていると、国益を大きく失うことになる。例えば、米国では包括通商法によって、大統領は国の安全保障を脅かすと判断した場合は、事後であっても土地取引を無効にできる権限を持つ。米国の例は、独立主権国家の主権の発動であり、国民の市民的自由に対して、政府のレベルで一定の管理を行うことが、法によって正当化されている。
 わが国には、大正15年(1926)施行で現行法でもある外国人土地法という法律がある。同法は、外国人による土地取得に関する制限を政令で定めるとしている。戦前は国防上重要な保護区域を定め、外国人が土地を取得する場合、陸相や海相の許可を必要としていた。大東亜戦争の敗戦後、すべての政令が廃止されたため、同法の実効性が失われたままになっている。国家安全保障の観点から、この有名無実化している外国人土地法の改正を、急ぎ進めるべきである。
 自民党では、安倍晋三現首相ら有志議員が「日本の水源林を守る議員勉強会」を立ち上げ、議員立法を目指す取り組みをしてきた。自民党は、森林の公有地化のための予算確保を図り、一定面積以上の森林取得には届け出義務や罰則強化を盛り込んだ森林法の改正案と、地下水を公共の資源ととらえて揚水可能な地域をあらかじめ指定し、水源を守る緊急措置法として地下水利用法案を、22年の臨時国会に提出したが、成立しなかった。
 こうして外国人による土地取得の規制強化が進まないでいるうちに、新潟市で、森林ではなく、市内の中心部の広大な土地を、中国が取得したのである。総領事館を移設するための土地には、広すぎる。そのうえ、冒頭に書いた佐渡の「道の駅」が中国による日本侵攻のための訓練施設として利用される懸念が出ている。
 売国とは一般に、私利のために、自国の内情や秘密を敵に通牒することをいう。国民を裏切り、国益を損なう行為である。国を「売る」というのは、情報を提供することをものの売買にたとえたものである。しかし、わが国には、本当に国を「売る」人間がいる。相互主義の原則に反して、日本の領土を中国政府に売る輩がいる。文字通りの「売国奴」である。その輩は日本政府の省庁におり、また、民間にも国益を考えずに外国に土地を売る人間がいる。この姿勢、この意識を変えなければ、わが国は、真の独立主権国家に復帰することができない。共産中国に従属し、支配される愚を避けるには、日本人は精神的に団結することが必要である。

 中国は、新潟・佐渡を狙い、また日本列島を狙っている。日本人は日本が外国の工作に対してほとんど無防備な状態にあることに気づき、国家の再建を進めなければならない。日本再建の要は、憲法にある。現行憲法の改正なくして、わが国の国防を整えることは出来ない。憲法というものは、国民のためのものであって、国民のために不都合な点があれば、改めていくのは当然である。憲法のための国民ではなく、国民のための憲法である。独立主権国家・日本にふさわしい憲法を日本人の手で制定する必要がある。それなくして、わが国は中国の脅威からも、また北朝鮮、国際テロリズム等の脅威からも、国の主権と独立、国民の生命と財産を守ることはできない。日本再建のために、憲法を改正し、平和と繁栄を確かなものにしよう。(了)

関連掲示
・拙稿「国防を考えるなら憲法改正は必須」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08d.htm
・拙稿「憲法第9条は改正すべし」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08m.htm
・拙稿「中国の日本併合を防ぐには」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12a.htm
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12o.htm

■追記

 上記の掲示文を含む拙稿の全体を次のページに掲載しています。
 「新潟・佐渡が中国に狙われている」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12v.htm

新潟・佐渡が中国に狙われている2

2014-10-13 09:56:39 | 国際関係
 次に、こうした中国の動きに関して、本年9月25~26日にユーチューブに掲載されたビデオを紹介する。国際政治学者・藤井厳喜氏は、中国が佐渡に軍事拠点を作り、首都東京を攻略しようとしていると、下記のビデオで警告している。

「中国軍、佐渡侵略の危機①」 AJER2014.9.25
https://www.youtube.com/watch?v=AquNddzLAOM
「中国軍、佐渡侵略の危機③」 AJER2014.9.26
https://www.youtube.com/watch?v=Ukhwwff7nNc
(※以上は無料、②④は有料)

 このビデオで、藤井氏は、中華覇権主義の拡張を許さない会の上薗益雄氏と対談している。
 上薗氏は、宮本記者が伝えた佐渡を訪れ、「道の駅」に関する調査を行った。シナ系帰化人・東富有氏が購入した「道の駅」について、上薗氏は、中国人民解放軍がこの施設を日本侵攻の軍事拠点にしようとしていると洞察する。東氏はこの施設を新潟国際藝術学院の分校にし、中国から3000名の留学生を呼び寄せる予定である。上薗氏は、中国はこの施設で留学生を訓練し、日本侵攻の先兵とする計画と見る。長野オリンピックの際、長野市に在日中国人の青年たちが集まって傍若無人の振る舞いをした時には、20名あたり1名の将校がついていたのを見たという。今後の集団行動に向けた訓練だったようである。20名あたり1名の将校が必要とすると、佐渡で3000名の学生を指導するためには、人民解放軍の将校クラスがおよそ200名佐渡に来る、と上薗氏は読む。
 上薗氏によると、中国人留学生3000名はカーフェリーで来て、両津港から入る。武器は、佐渡島の西側の海岸、おそらく佐和田海水浴場付近から搬入する。「道の駅」の地下室にその武器を保管する。人民解放軍の正規の指揮官およそ200名は、中国から飛行機で新潟空港へ到着し、フェリーで佐渡に渡る。ここで学生たちを訓練し、部隊を編成する。
 中国は北朝鮮から租借している羅津港に、既に3つ埠頭を建設している。最終的には6つ建設する予定である。埠頭のうちの一つは、戦艦大和(7万トン級)が停泊できるほどの深さと広さがある。羅津から直線距離で100キロのところには、中国の瀋陽軍区(旧満州)がある、と上薗氏は解説する。
 藤井氏は上薗氏の分析に同意し、日本人は今、尖閣、対馬には目を向けているが、佐渡は死角になっている、と指摘する。尖閣、対馬に関心を集めておいて、佐渡を取る。そういう作戦が想定されるという。
 私見を述べると、かつて旧ソ連は首都東京を攻略するため、日本海側から上陸して陸路を進む計画を立てている、とわが国の軍事専門家は推測していた。佐渡から新潟に上陸すれば、東京まで4時間半ほどで到着すると見られる。新潟の近海にはメタンハイドレートが豊富に埋蔵されてもいる。中国は、佐渡と新潟を抑えれば、海洋資源も掌中にできる。
 上薗氏は素人の学生を佐渡で訓練すると予想しているようだが、私は、留学生の中に、人民解放軍の兵士や元兵士を混ぜ、学生の資格で日本に送り込むだろうと思う。次に、離島の佐渡に留学生が3000名も、絵を描くことを学ぶために、来るだろうかと思う人がいるだろうが、わが国は外国人留学生を異常なほど厚遇している。授業料が免除され、奨学金・旅費・医療費など4年で一人1048万円も支給している。奨学金は毎月14万2500円。医療費は80%が日本持ち。返還は不要となっている。それゆえ、佐渡であれ、どこであれ、何千何万の中国人は来る。そのうち相当部分は、日本に継続して滞在・居住し、家族を呼び寄せるようになる。そして、決起の時が来れば、本国共産党指導部の指示・命令に従って集団行動を行うことは間違いない。
 佐渡の「道の駅」は、中国が新潟市中央区新光町に購入した約15000平方メートルの土地と関連付けて考えるべきだろう。総領事館の建設のためだけであれば、中国が新潟にそれだけ広大な土地を購入・所有する必要は全くない。佐渡の「道の駅」を軍事的に利用する可能性が現実になるとき、新潟市内の中国総領事館は、これと連動して軍事拠点として使用されることになると見た方がよい。
 上薗氏は、佐渡市民を啓発するため、6千枚のチラシを配布したという。佐渡市民は、日本のために、「道の駅」の売却問題を市議会で追及してほしい。また、国会議員は新潟の市民・県民多数の懸念を受け、国会で、新潟市の中国総領事館の土地取得問題を取り上げ、外務省関係者の責任を明らかにするとともに、政府に適切な善後策を求めるべきである。また、わが国は、国家安全保障の観点から、外国政府・外国資本による土地取得を規制する法整備を急がねばならない。
 以下は、冒頭の宮本記者の記事。

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●産経新聞 平成26年4月6日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140406/plc14040611310008-n1.htm
【島が危ない 第2部 佐渡に迫る影(1)】
ガメラレーダー 日本海の要、接近 中国重鎮の思惑
2014.4.6 14:00

 新潟県・佐渡島に中国の影がちらつく異変が起きている。航空自衛隊が誇る高性能警戒管制レーダー、通称「ガメラレーダー」があるこの島を中国要人が訪れ、中国と関係が深い男性が経営する学校法人が地元観光施設を1円で手に入れた。連載第1部で明らかにした長崎県・対馬の韓国経済への依存と同様、国境離島の深刻な“不安材料”がここにもあった。第2部は佐渡島の現状を報告する。(宮本雅史)

 沖縄・尖閣諸島沖で中国漁船による衝突事件が起きた直後の平成22年10月30日朝。背広姿の男たちが佐渡・妙見山(標高1042メートル)中腹の峠の茶屋「白雲台」で休息を取っていた。山頂にそびえ立つ航空自衛隊佐渡分屯基地のガメラレーダーとの距離はわずか3キロ。佐渡の市街地や両津湾も一望できる。
 一行の中心は中国の唐家●元国務委員。そのほか、中国在新潟総領事館の王華総領事(当時)、新潟で絵画教室を運営する学校法人新潟国際芸術学院(新潟市中央区)の東富有理事長兼学院長、そして佐渡市の甲斐元也副市長(現市長)の姿もあった。
 前日に佐渡に入り1泊した唐氏はこの日、佐渡金山を見学した後、観光道路として有名な「大佐渡スカイライン」で紅葉を楽しみながら白雲台に立ち寄った。スカイラインはここで、妙見山頂と麓を結ぶ自衛隊管理の「防衛道路」につながる。防衛道路沿いの標高450メートル地点にはレーダーをつかさどる重要施設「キャンプサイト」もあるが、4月下旬から11月中旬までは観光道路として一般にも開放されている。
休息を終えた唐氏一行は防衛道路を使って山を下り、次の目的地のトキの森公園に向かった。

 今年2月中旬、雪の佐渡分屯基地を訪ねた。
 分屯基地は、第46警戒隊と中部航空施設隊で構成。第46警戒隊はキャンプサイトからガメラレーダーを通して24時間、日本海上空を監視している。最大の敵は冬の暴風雪だ。「基地全体がすっぽり雪に埋もれてしまう。吹雪で視界が10メートル、ひどいときは1メートルを切るときもある」。源田進1等空尉はこう話す。
 キャンプサイトから雪上車で山頂に向かう途中、白雲台にも立ち寄った。ここからはガメラレーダーがはっきりと大きく見えた。
 そのレーダーの重要性は、拡大路線を続ける中国との関係悪化でさらに高まっている。
 中国吉林省の延辺朝鮮族自治州の日刊紙、延辺日報などによると、中国は日本海に面する北朝鮮の羅津港を租借して50年間の使用権を獲得、平成24年には羅津港から100キロ離れた清津港を30年間使用する権利も確保したという。
 当時と違い、北朝鮮は張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長の処刑以降、中国との関係が悪化しているとみられている。ただ、羅津港と清津港はいずれも針路を東に取れば津軽海峡に、南下すれば佐渡島に行き着く。防衛省幹部によると、中国の空母・遼寧の動向が大きな懸念材料だという。「60機、70機の戦闘機を搭載できるので、1つの航空団並みの大きさになる。それがそのまま、日本海を動いているのと同じようになり、脅威になる。中国は今、太平洋進出を狙っているので気が抜けない」
 この幹部はさらに危険なシナリオも口にした。「中国が佐渡島や新潟に拠点を作ると、日本海が中国の内海化する危険性がある」

 唐氏の佐渡訪問の目的は何だったのか。唐氏は白雲台に立って何を感じたのか。
 唐氏の同行メンバーで現在の佐渡市長、甲斐氏は「唐氏は金山とトキの森公園の見学が目的だった。佐渡を一望したいというので、白雲台に立ち寄って休憩しただけ。ガメラレーダーは話題にもならなかった。佐渡が乗っ取られるんじゃないかといわれるが、その形跡は全くない」と説明する。
 一方で、中国共産党に詳しい関係者はこう指摘する。「唐氏クラスになると党中央書記局の指示がないと自由に動けない」
 唐氏が佐渡を訪れたころ、新潟市と佐渡市では中国が絡んだ2つの“プロジェクト”が動いていた。

道の駅、研修施設に 「1円売却」 深まる中国依存
 佐渡島の表玄関・両津港から約3キロ。県道65号を車で10分ほど走ると、道の駅「芸能とトキの里」(佐渡市吾潟)に着く。ところが、目立つ場所に「学校法人 新潟国際芸術学院佐渡研究院」の看板が掲げられ、レストランも土産店もない。
 この施設はもともと、JA佐渡と佐渡汽船グループが設立した「佐渡能楽の里」が運営していたが、観光客の減少で経営不振となり解散。絵画教室などを運営する学校法人新潟国際芸術学院(東富有理事長、新潟市中央区)が、建物部分(延べ床面積約3600平方メートル)を1円で購入した。同学院は土地もJA佐渡から無償で借り受け、23年6月から研修施設として利用している。
 「持っていても税金がかかるだけ。二束三文でも手放したかった」。地元のベテラン市議は、“1円売却”の経緯をこう話した。
 東理事長自身の説明によると、同理事長は中国・瀋陽の魯迅美術大を卒業。平成3年に新潟大大学院に留学し、5年後に日本国籍を取得。21年1月に「中国などからの短期留学生に新潟の自然風景を描かせたい」と新潟国際芸術学院を設立した。道の駅については、市などから、芸術分野での活用を働きかけられ、“購入”を決めたという。
 道の駅での好条件は、建物と土地だけではない。道の駅本来の公的性格のある観光施設機能を兼ねており、市は一部の運営費の補助を以前通り続けている。これまでの3年間で、その額は、屋外トイレ付帯設備費511万円、駐車場維持費98万円、合併処理浄化槽費650万円、インフォメーション費241万円にのぼる。
 オープンから3年。「改装工事が進んでいる気配はなく、実態が分からない」(元県議)といぶかる声も出ているが、東理事長は「水彩画教室をメーンにダンス教室や料理教室、陶芸教室なども開いている。佐渡は観光客が減り元気がない。留学生が年間3千人来れば佐渡はよくなる」と地元への貢献を強調する。

 新潟国際芸術学院が佐渡に進出したころ、新潟市内では、中国在新潟総領事館の移設問題が起きていた。
 新潟に総領事館が開設されたのは22年6月。当初、商業ビルに入居したが、同年10月に新潟市の学校法人NSGグループとの間で、専門学校の旧校舎を5年間借りる契約を結んで移転、現在もそこを使用している。
 ただ、この間、中国側は「単独使用できる土地と建物」の取得にこだわり、地元の活性化につながる「大中華街構想」も打ち出して新潟市に要望してきた。市が一度、市立万代小跡地の約1万5千平方メートルを候補地として提示したが中国への不動産売却に対する市議会などの反発で23年3月に頓挫したこともある。
 そして同年12月、中国側は突然、県庁近くにある新潟市中央区新光町の民有地約1万5千平方メートルを購入した。登記簿に経営内容が不明瞭な企業名が登場するなど、売買過程に不透明さも残る。関係者によると、簿価は7億円前後だが、売買価格は15億円前後と推定されるという。
 日本政府がこの売買を認知したのは翌24年1月。中国側はこの広大な土地に総領事館のほか、総領事公邸や職員宿舎、市民との交流施設、駐車場などをつくると説明しているが、所有権の移転登記はまだ行われておらず、建設時期も不明なままだ。
 この売買をめぐっては、国会で質問が行われたこともある。24年3月22日の参院国土交通委員会で、地元選出で自民党の中原八一議員が「安全保障の観点から、政府全体として土地規制の在り方について検討すべきだ」と外国資本の不動産買収に規制を求めた。その一方で、中原氏は新潟の問題に限っては「中国側からしっかり総領事館建設の中身を聞いて、それが妥当であるというのであれば外務省がしっかりと仲介に立ってぜひ進めていただきたい。新潟県としては建設に反対するものではない」と早期の総領事館移設を訴えた。
 新潟は日中国交正常化を実現させた田中角栄元首相の地元。佐渡にトキの提供も受けている。官民を問わず中国との交流は深い。「新総領事館が完成すると、治外法権で対応できない場所が拡大される」(元県議)と批判的な声も根強いが、大きなうねりにはなっていない。

 総領事館の開設と不動産取得。佐渡での新潟国際芸術学院進出と唐家●氏の訪問。この時期、中国では有事の際に国と軍が民間のヒトやモノを統制する国防動員法が施行され、北朝鮮の羅津港や清津港の長期租借が決まった。
 東理事長は「私はもう日本人なのだから、中国とは関係ない。私は中国は好きじゃない。特に政府は好きじゃない」と中国政府とのかかわりを強く否定する。
 その一方で新たな動きもある。地元の大手ホテル会社の社長が説明する。「総領事館と東先生、市で、道の駅の場所に国際美術大学を作る計画がある。中国から学生を集めることが前提で、すでに中国の大学2校が学生を送り込むことが決まっている。佐渡を世界に発信できる」
 これについて佐渡市長の甲斐氏も「新しい大学は、東さんの学院の(中国の)提携校とも提携して学生を連れてくる」と中国との連携に期待している。地域振興のために中国を活用しようとする佐渡。その思いに歩調を合わせる中国。佐渡の中国依存が深まっている。

【用語解説】佐渡島
 総面積は東京23区の約1.5倍に当たる約855平方キロ。択捉、国後、沖縄本島に次いで国内で4番目に広い島。平成16年3月、島内10市町村が合併して佐渡市が誕生。人口は今年3月1日現在で6万593人。

●=王へんに旋
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 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「共産中国への売国的な国土売却」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/151db9e1eb0e13d8f2bd71ca443eb2f5
・拙稿「外国人土地買収の対策を急げ」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/707da5576779fa6bce9a8443083d478d
・拙稿「外資から日本の水と森を守れ」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/7c407f0464f6d905aed907a6a9b1743b


■追記

 上記の掲示文を含む拙稿の全体を次のページに掲載しています。
 「新潟・佐渡が中国に狙われている」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12v.htm

新潟・佐渡が中国に狙われている1

2014-10-12 08:51:05 | 国際関係
 新潟・佐渡が中国から狙われている。
 まず産経新聞平成26年4月6日号の記事を紹介する。シリーズ「島が危ない 第2部 佐渡に迫る影」の第1回の記事で、宮本雅史記者は「新潟県・佐渡島に中国の影がちらつく異変が起きている」と書いた。



 記事を要約すると、平成22年10月30日、佐渡を中国の唐家セン(王へんに旋)元国務委員が訪れた。元外務大臣クラスの大物である。このクラスになると党中央書記局の指示がないと自由に動けない。唐氏には、中国在新潟総領事館の王華総領事(当時)、学校法人新潟国際芸術学院の東富有理事長兼学院長、そして佐渡市の甲斐元也副市長(現市長)が同行した。



 佐渡には、航空自衛隊の佐渡分屯基地がある。分屯基地は、第46警戒隊と中部航空施設隊で構成され、第46警戒隊は、空自が誇る高性能警戒管制レーダー、通称「ガメラレーダー」で24時間、日本海上空を監視している。中国との関係悪化で、このレーダーの重要性が高まっている。
 中国は、日本海に面する北朝鮮の羅津港を租借して50年間の使用権を獲得している。平成24年には羅津港から100キロ離れた清津港を30年間使用する権利も確保した。両港から針路を東に取れば津軽海峡に、南下すれば佐渡島に行き着く。「中国が佐渡島や新潟に拠点を作ると、日本海が中国の内海化する危険性がある」と防衛省幹部は警戒する。



 「唐氏が佐渡を訪れたころ、新潟市と佐渡市では中国が絡んだ2つの“プロジェクト”が動いていた」と宮本記者は伝える。佐渡市の道の駅と新潟市の総領事館用の土地の購入である。
 佐渡市吾潟にある道の駅「芸能とトキの里」は、JA佐渡と佐渡汽船グループが設立し、「佐渡能楽の里」が運営していたが、観光客の減少で経営不振となり解散した。この道の駅の施設を、新潟国際芸術学院が1円で購入した。建物部分の延べ床面積は約3600平方メートルある。同学院は土地もJA佐渡から無償で借り受け、23年6月から研修施設として利用している。
 理事長の東富有氏は、日本国籍を取得したシナ人である。中国・瀋陽の魯迅美術大を卒業し、新潟大大学院に留学。平成8年に日本国籍を得て、21年1月に「中国などからの短期留学生に新潟の自然風景を描かせたい」と新潟国際芸術学院を設立した。年間3000人の留学生を呼ぶという。
http://www.iacn.jp/sub7.html
 佐渡市は、道の駅の売却後も、もともと観光施設だからと、運営費の補助を続けている。記事の時点までの3年間で、その額は、1500万円に上る。
 新潟国際芸術学院が佐渡に進出したころ、新潟市内では、中国在新潟総領事館の移設問題が起きていた。この件については、私もブログに書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/151db9e1eb0e13d8f2bd71ca443eb2f5
 平成23年12月、中国側は突然、新潟市中央区新光町の民有地約15000平方メートルを購入した。宮本記者は、この件について、次のように書いた。「登記簿に経営内容が不明瞭な企業名が登場するなど、売買過程に不透明さも残る。関係者によると、簿価は7億円前後だが、売買価格は15億円前後と推定されるという。日本政府がこの売買を認知したのは翌24年1月。中国側はこの広大な土地に総領事館のほか、総領事公邸や職員宿舎、市民との交流施設、駐車場などをつくると説明しているが、所有権の移転登記はまだ行われておらず、建設時期も不明なままだ」と。
 総領事館の開設と不動産取得。佐渡での新潟国際芸術学院進出と唐家セン氏の訪問――宮本記者は、「この時期、中国では有事の際に国と軍が民間のヒトやモノを統制する国防動員法が施行され、北朝鮮の羅津港や清津港の長期租借が決まった」と指摘する。
 私見を述べると、これらはすべてつながっている、すべて計画的に着々と進められている。そう見るべきだと思う。私は、藤井厳喜氏と上薗益雄氏の見解を知って、その思いを強くした。
 
 次回に続く。

■追記

 上記の掲示文を含む拙稿の全体を次のページに掲載しています。
 「新潟・佐渡が中国に狙われている」
http://khosokawa.sakura.ne.jp/opinion12v.htm

人権117~家族型的価値観の違いの影響(続き)

2014-10-11 09:37:58 | 人権
●家族型的価値観の違いの影響(続き)

 さて、イギリスの主要地域は絶対核家族が支配的な社会である。絶対核家族は自由/不平等の対の価値観を持ち、自由を中心とした価値観を持つ。平等には無関心である。ホッブスやロックはそうした社会を背景にして、自由を中心に個人の自由と権利に係る思想を説いた。ピューリタン革命・名誉革命は、新興ブルジョワジーを中心とした集団が自由を確保しようとした運動だった。
 続いて、18世紀後半には、そのイギリスの植民地アメリカが、1776年に本国から独立した。初期の北米には、イギリス同様、絶対核家族の移民が多く、自由中心の価値観を共有していた。アメリカ独立宣言は「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主(Creator)によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、その中に生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる」と宣言した。建国の祖の宗教的差異主義は、イギリスの絶対核家族の家族制度を土台としていた。キリスト教の宗派のうち、家族型的な価値観に合う教義を信奉したわけである。家族型的かつ宗教的な差異主義は、旧約聖書の神の言葉によって増幅され、インディアンや黒人との混交を禁じることになった。
 フランスでは1789年に市民革命がおこった。フランスは、近代化の先進国イギリスの思想の影響を受け、自由を求める意識が高まった。パリ盆地は平等主義核家族が支配的な地域なので、自由だけでなく自由と平等を価値とする思想が展開された。フランス人権宣言は「人間は、自由で、権利において平等な者として出生し、生存する。社会的な差別は、共同の利益のためにのみ設けることができる」と宣言した。フランス革命の普遍主義は、平等主義核家族の価値観に基づくものである。英米と異なり、自由だけでなく、平等を重視する。平等の重視は、政治的にはデモクラティックになり、急進的になる。フランス革命は、またヨーロッパで初めてユダヤ人を解放した。これは普遍主義の理想を追求したものだった。
 トッドによると、今日もアメリカ合衆国は、差異主義によって、黒人という不可触賎民が存在する。イギリスは、白人が階級的に分断されていることによって、移民が民族的・人種的に分断されない状態になっている。これに対し、フランスは、市民革命以来、民族性・出自・血統の観念を排除した国民概念を形成した。ただし、フランスには直系家族の有力な地域があり、普遍主義と差異主義の対立と均衡が見られる。フランス革命後のめまぐるしい政体の変化は、こうした社会構造が背景にあるのだろう。
 人権の観念は、英米の自由/不平等の社会で発達し、フランスの自由/平等の社会で確立された。人間は生まれながらに自由にして平等であるという思想は、西欧諸諸国やロシア、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ等に広がった。だが、家族的な価値観が異なる地域では、容易に浸透していない。最も浸透しないのは、権威/平等を価値観とする共同体家族の社会、つまり共産主義が浸透したような社会である。
 家族型の違いは価値観の違いに影響する。今日最も普遍的な価値とされる自由は、絶対核家族及び平等主義核家族で発達した価値である。自由と平等という対は、一方の平等主義核家族の価値観である。フランスは普遍主義であるから、その価値観が人類普遍的であるべきものと主張されるが、英米の価値観に立てば、自由こそが至上の価値であり、平等の重視は自由を規制するものという見方になる。前者の場合は、平等を重視した人権が唱えられ、後者の場合は、自由を至上とする人権が唱えられる。そのこと自体が、人権は必ずしも普遍的な価値ではないことを示している。

 次回に続く。

アベノミクスは中国対峙の原点に戻れ~田村秀男氏

2014-10-09 08:52:30 | 経済
 デフレ脱却がまだ十分進んでいない中での消費増税は、景気に悪影響を与えている。4~6月の実質GDPは、年率換算で前期比ー6.8%となった。1か月半ほど前になるが、産経新聞編集委員の田村秀男氏は、8月24日の記事で、日本は中国に対してオウンゴールを演じており、アベノミクスは中国と対峙する原点に戻れ、と主張している。
 田村氏は「本来、安倍晋三首相はアベノミクスによって『強い日本』を取り戻し、膨張する中国と対峙する戦略を原点に据えていたはずだ」という。ところが、「4~6月期の国内総生産(GDP)第1次速報値が示すように、消費税率引き上げ後、GDPの6割を占める家計消費は戦後最大級の落ち込みだった。日中のGDPを比較すると、「『萎縮する日本、膨張する中国』というトレンドは、アベノミクス開始後むしろ強くなっている」。世界銀行の統計によると、2013年の日本は4.9兆ドル、前年比で17%減だが、対する中国は9.2兆ドル、同12%増と、日本との差をさらに広げた。「今年は前半のGDP速報値から推計すると、日本が前年比0.2%減、中国9%増である」と田村氏は指摘する。
 「このまま、アベノミクスが綻んでくると、日本国民の将来が危うくなるばかりではない。アジア全域が人民元の海になってしまう」と田村氏は警告を発する。2013年、中国の対外貿易での人民元による決済額は、初めて日本の円による決済額を上回った。「今年は人民元決済に加速がかかり、年前半の実績値から推計すると、円建て決済の倍近くに膨れあがる勢いだ」「東アジア圏で円は人民元によって駆逐されつつある」と日中の現状を比較する。
 中国は米国のドル支配に挑戦し、米中通貨戦争が繰り広げられている。その一環として、中国は「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」を主導して、アジア各国のインフラ建設を支援しようとしている。また、BRICSの共同出資による発展途上国向けの新開発銀行を通じて、人民元建てによる投融資を一挙に拡大しようとしている。
 それゆえ、田村氏はいう。「時間はほとんどない。安倍政権は来年10月からの消費税再増税など自滅策導入を論じている場合か。原点に立ち返って練り直すべきだ」と。
 私は、田村氏がさらなる消費増税に反対し、アベノミクスの構想を練り直すことには同感だが、アベノミクスは「膨張する中国と対峙する戦略」を原点に据えていたという見方については、異論がある。アベノミクスの目的は、あくまでわが国がデフレを脱却し、再び経済成長路線を進むことである。従来の誤った財政金融政策を廃棄し、「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」を実行して、わが国の潜在的な成長力を発揮することを目指すものである。この政策の実行によって、GDPが増加すれば、結果として中国の覇権主義への経済面での対策ともなるということだろう。
 田村氏は本年2月23日の記事で、アベノミクスの三本の矢を統合する「大胆なデザイン」が必要だとし、次のように提言した。「日銀が創出する資金のうち100兆円を国土強靱化のための基金とし、インフラ整備に投入すればよい。強靱化目的の建設国債を発行し、民間金融機関経由で日銀が買い上げれば、いわゆる『日銀による赤字国債引き受け』にならずに、財源はただちに確保できる」と。
 わが国の経済は、このままでは下手をすると、物価は上昇するが需要は減少するスタグフレーションに陥りかねない。消費増税という失策の結果を踏まえて、アベノミクスの構想練り直しは、中国対策として練り直すのではなく、あくまでわが国の経済政策として練り直せばよいのである。
 以下は、記事の全文。

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●産経新聞 平成26年8月24日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140824/fnc14082409340002-n1.htm
【日曜経済講座】
オウンゴールのアベノミクス 膨張中国に対峙する原点に戻れ
2014.8.24 09:34

 4~6月期の国内総生産(GDP)第1次速報値が示すように、消費税率引き上げ後、GDPの6割を占める家計消費は戦後最大級の落ち込みだった。景気はこのままL字形で停滞局面に入る恐れは十分ある。
 気になるのは外部の目である。英フィナンシャル・タイムズは8月14日付社説で「アベノミクスに試練」と取り上げた。アベノミクスが頓挫することは、「20年デフレ」が「30年デフレ」となるばかりではない。国際社会で日本は中国に対する負け犬として扱われてしまう。
 中国は不動産バブルの崩壊や共産党内の権力闘争激化で自滅するとか、南シナ海などでの露骨な覇権主義で中国はアジア、さらに世界的に孤立しつつあるという見方もあるが、希望的観測に過ぎやしないか。その前に、日本は肝心の経済で「オウンゴール」を演じてしまっている。
 国家の経済力の国際評価基準であるドル建てで日中のGDP(名目)を比較してみればよい。「萎縮する日本、膨張する中国」というトレンドは、アベノミクス開始後むしろ強くなっている。
 世界銀行統計によると、2013年の日本は4.9兆ドル、前年比で17%減、対する中国は9.2兆ドル、同12%増と、日本との差をさらに広げている。今年は前半のGDP速報値から推計すると、日本が前年比0.2%減、中国9%増である。
「バブル崩壊」は発達した金融市場を持つ国で起きる。不動産価格が急落を続ける結果、金融機関の不良債権が膨れ上がって信用不安が起り、金融の流れが急激に萎縮して国内経済が大不況に陥る。中国の場合、共産党の支配下にある中国人民銀行が4兆ドルもの外貨資産を担保に人民元資金を発行し、金融機関に資金を流す。あるいは、緊急事態には党指令で、問題金融機関にドルを資本注入できる。日本のバブル崩壊期の「飛ばし」が国家的規模で行われる可能性が高いし、これまででも、飛ばされた巨額の不良債権は経済膨張のプロセスの中で、もみ消されてきた。
 習近平党総書記・国家主席による「ハエもトラもたたきつぶす」という党官僚・幹部の汚職摘発は権力闘争に違いないが、習氏は非共産党員の新中間層の支持を得て政治基盤を強化しているのが実情だ。
 中国の対外貿易総額はアジア向けを中心に膨らみ続け、13年は日本の2・7倍にも達した。



 グラフを見よう。13年、中国の対外貿易での人民元による決済額は日本のそれの円による決済額を初めて上回った。人民元は7080億ドルで前年比57%増、円は16%減である。今年は人民元決済に加速がかかり、年前半の実績値から推計すると、円建て決済の倍近くに膨れあがる勢いだ。日中とも自国通貨建て貿易は東アジアが主であり、東アジア圏で円は人民元によって駆逐されつつある。
自国通貨で何でも買えるのは覇権国の特権である。米国はドルさえ発行すれば石油を存分に買える。中国はその米国を強く意識して人民元の国際化を進めている。人民元によるビジネス取引を増やしている国や地域は、人民元を手元に持たなければ払えず、中国との貿易にますますのめり込むようになるので、政治的立場に影響する。中国の海洋進出を東南アジア諸国連合(ASEAN)各国が警戒しても、その足元では経済の対中依存が高まっており、結束して毅然(きぜん)として中国に対峙(たいじ)できるとはかぎらない。
 習氏は米国に対抗して積極的な通貨攻勢をかけている。一つは、日米主導のアジア開発銀行に対抗する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」で、中国主導でアジア各国のインフラ建設を支援するという。もう一つは、BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)共同出資による発展途上国向けの新開発銀行で、本部を上海に置く。新興国・途上国の外貨準備合計の約5割のシェアを持つ中国はそれを見せ金にして、人民元建てによる投融資を一挙に拡大して、ドルに挑戦する構えだ、と聞く。
 本来、安倍晋三首相はアベノミクスによって「強い日本」を取り戻し、膨張する中国と対峙する戦略を原点に据えていたはずだ。このまま、アベノミクスが綻(ほころ)んでくると、日本国民の将来が危うくなるばかりではない。アジア全域が人民元の海になってしまう。時間はほとんどない。安倍政権は来年10月からの消費税再増税など自滅策導入を論じている場合か。原点に立ち返って練り直すべきだ。
(編集委員・田村秀男)
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関連掲示
・拙稿「アベノミクスが再び力強さを発揮するには~田村秀男氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/406ef1ccec34b9815767e04b19409c8c

中国経済に死期の前兆が現れている~石平氏

2014-10-08 06:49:19 | 国際関係
 シナ系評論家の石平氏は、本年4月3日の産経新聞の記事で、今後の展開を大意次のように予想した。今後広がる不動産開発企業の破産あるいは債務不履行は、そのまま信託投資の破綻を意味する。それはやがて、信託投資をコアとする「影の銀行」全体の破綻を招く。金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する「影の銀行」が破綻すれば、経済全体が破滅の道をたどる以外にない。「生きるか死ぬか、中国経済は今、文字通りの崖っぷちに立たされているのである」と。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/2a4648f3f584dc37f86adc41d64b0785
 続いて、9月4日の記事では、崖っぷちに立つ中国経済に、死期の前兆が現れていることを書いている。
 石氏は、次のように言う。「実は今年4月あたりから、中国政府は一部銀行の預金準備率引き下げや鉄道・公共住宅建設プロジェクト、地方政府による不動産規制緩和など、あの手この手で破綻しかけている経済を何とか救おうとしていた。だが全体の趨勢(すうせい)から見れば、政府の必死の努力はほとんど無駄に終わってしまい、死に体の中国経済に妙薬なし、と分かったのである」と。
 まず現在の中国経済は、既にマイナス成長になっているかもしれないという。そう推察される根拠として、「今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1・45%と1・54%の減となった」というデータを挙げる。この物差しで見ると、今年上半期の中国経済の成長率は政府公表の「7・4%増」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある、というのである。
 これに加えて、次のような情報を伝える。「今年上半期の全国工業製品の在庫が12・6%も増えた」「今年上半期において全国百貨店の閉店件数が歴史の最高記録を残した」「7月の全国100都市の新築住宅販売価格は6月より0・81%下落し、4、5月以来連続3カ月の下落となった」「全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの『悪性競争』が既に始まっている」。なりふり構わずの価格競争は「不動産価格総崩れの第一歩になる「一部の専門家の予測」では、不動産価格の「総崩れの開始時期はまさにこの9月になる」等々。
 そして、次のように述べている。
 「経済全体が既にマイナス成長となっているかもしれない、という深刻な状況の中で、不動産バブルの崩壊が目の前の現実となっていれば、それが成長率のさらなる下落に拍車をかけるに違いない。しかも、不動産バブルの崩壊で銀行が持つ不良債権の急増も予想されるが、それはまた、中国の金融システムが抱えているシャドーバンキングという『時限爆弾』を起爆させることになるかもしれない。そうなると、中国経済は確実に破綻という名の『死期』を迎えるのであろう」と。
 最後に出てくる「シャドーバンキング」とは、冒頭に書いた「金融規模が中国の国内総生産の4割以上にも相当する『影の銀行』」のことである。「影の銀行」は信託会社やファンドなどのいわゆるノンバンクである。その総融資額は約24兆元(約383兆円)にものぼると見られる。銀行の預金金利が年利基準3%と定められる中で、年率10%前後の高利回りをうたった財テク商品「理財産品」などで資金を集め、金融当局の監視下にない簿外で運用。資金の行き先の多くは、採算性の低い地方政府による建設ありきのインフラ整備などへ向かう。そのため不良債権化の懸念がある。金利上昇によって中小の金融機関や企業の資金調達が難しくなっており、政府が「影の銀行」をつぶそうとすれば、中国経済全体が崩壊しかねない状況にあると見られる。いつ破裂してもおかしくないような巨大なガンの病巣が、内臓の奥深くに出来ている状態とでも言えようか。
 中国「影の銀行」の破裂は、リーマン・ショックに匹敵するくらいの衝撃を世界経済に与えるかもしれない。わが国は、自国の経済指標だけを見て、次は消費税10%などと安易な判断をすべきではない。
 以下は、石氏の記事。

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●産経新聞 平成26年9月4日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140904/chn14090409340004-n1.htm
【石平のChina Watch】
「死期」の前兆ちらつく中国経済
2014.9.4 11:45

 先月20日、中国煤炭工業協会は中国経済の真実をよく表した数字を公表した。今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1・45%と1・54%の減となったという。つまり、両方ともがマイナス成長となったということである。
 李克強首相が地方政府のトップを務めた時代、統計局が上げてきた成長率などの経済数字を信じず、もっぱらエネルギー消費量や物流量が伸びているかどうかを見て本当の成長率を判断していたというエピソードがある。
 この物差しからすれば、今年上半期の中国経済の成長率は決して政府公表の「7・4%増」ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある。中国エネルギー産業の主力である火力発電を支えているのは石炭であり、その生産と販売がマイナスとなっていれば、この国の経済が依然、成長しているとはとても思えないからである。
 「石炭」一つを取ってみても、中国経済は今や崖っぷちに立たされていることが分かるが、今年上半期の全国工業製品の在庫が12・6%も増えたという当局の発表からも、あるいは同じ今年上半期において全国百貨店の閉店件数が歴史の最高記録を残したという8月23日付の『中国経営報』の記事から見ても、中国経済の凋落(ちょうらく)ぶりが手に取るように分かるだろう。
 実は今年4月あたりから、中国政府は一部銀行の預金準備率引き下げや鉄道・公共住宅建設プロジェクト、地方政府による不動産規制緩和など、あの手この手で破綻しかけている経済を何とか救おうとしていた。だが全体の趨勢(すうせい)から見れば、政府の必死の努力はほとんど無駄に終わってしまい、死に体の中国経済に妙薬なし、と分かったのである。
 政府の救済措置が無効に終わったのは不動産市場でも同じだ。今年春先から不動産バブル崩壊への動きが本格化し、各地方政府は慌ててさまざまな不動産規制緩和策を打ち出して「市場の活性化」を図ったが、成果はほとんど見られない。
 8月1日に中国指数研究院が発表した数字によれば、7月の全国100都市の新築住宅販売価格は6月より0・81%下落し、4、5月以来連続3カ月の下落となったという。
 それを報じた『毎日経済新聞』は「各地方政府の不動産市場救済措置は何の効果もないのではないか」と嘆いたが、不動産市場崩壊の流れはもはや食い止められないことが明白だ。
 現に、8月25日に新華通信社が配信した記事によると、全国の中小都市では各開発業者による不動産価格引き下げの「悪性競争」が既に始まっているという。
 開発業者が競ってなりふり構わずの価格競争に走っていれば、それが不動産価格総崩れの第一歩になることは誰でも知っている。
 同23日、山東省済南市にある「恒生望山」という分譲物件は半月内に約25%もの値下げを断行したことで、値下げ以前の購買者が抗議デモを起こした。それもまた、「総崩れ」の前兆と見てよいだろう。国内の一部の専門家の予測では、「総崩れ」の開始時期はまさにこの9月になるというのである。
 経済全体が既にマイナス成長となっているかもしれない、という深刻な状況の中で、不動産バブルの崩壊が目の前の現実となっていれば、それが成長率のさらなる下落に拍車をかけるに違いない。
 しかも、不動産バブルの崩壊で銀行が持つ不良債権の急増も予想されるが、それはまた、中国の金融システムが抱えているシャドーバンキングという「時限爆弾」を起爆させることになるかもしれない。そうなると、中国経済は確実に破綻という名の「死期」を迎えるのであろう。
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関連掲示
・拙稿「中国経済のドミノ倒しの始まりか~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6166dba6bbe55d06455f9a898a19cd4a
・拙稿「今度こそ中国バブルの崩壊が始まった~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/df23966d7c58055c15c278029659bd3a
・拙稿「中国経済は破滅の道を進んでいる~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/2a4648f3f584dc37f86adc41d64b0785

「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が設立!

2014-10-06 08:55:17 | 憲法
 日本再建の要は、日本人自身の手で新しい憲法をつくることである。改憲は、国会が総議員の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成を必要とする。
 幸い平成23年7月の参議院選挙及び24年12月の衆議院選挙の結果、現在国会は改憲勢力がほぼ3分の2を占める。この勢力を以て、平成28年7月の参院選と同時に憲法改正の国民投票を実現するという目標が浮かび上がった。  
 この目標のもとに「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が設立された。ジャーナリストの櫻井よしこ氏、杏林大学の田久保忠衛名誉教授、日本会議会長で元最高裁長官の三好達氏が共同代表を務める。
https://kenpou1000.org/
 10月1日東京・憲政記念館で、設立総会が開催された。私は一賛同者として、参加した。



 総会では、櫻井よしこ氏が挨拶し、「わが国の国土と国民、価値観や暮らしぶりを自分たちで守る力をつけるには、憲法を改正すべきだ」と訴えた。来賓の衛藤晟一首相補佐官は、「第2次安倍内閣は憲法改正のために成立した。最後のスイッチが押される時が来た」と述べた。各界からは、埼玉大学名誉教授の長谷川三千子氏が、「有権者の半分は女性。女性の意識を変えることが重要。9条が欠陥条項であることを正面切って訴えるべき」と提言した。
 同会は、全国で以下の活動を行っている。

一、 憲法改正の早期実現を求める国会議員署名及び地方議会決議運動を推進する。
一、 全国47都道府県に「県民の会」組織を設立し、改正世論を喚起する啓発活動を推進する。
一、 美しい日本の憲法をつくる1000万人賛同者の拡大運動を推進する。



 最高の好機が到来している。この機を逃すことなく、日本人の手で新しい憲法の制定を実現しよう。

関連掲示
・拙稿「日本国憲法は亡国憲法――改正せねば国が滅ぶ」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08c.htm
・拙稿「新憲法へ――改正の時は今」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08g.htm
・拙稿「日本再建のための新憲法――ほそかわ私案」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion08h.htm

人権116~家族型的価値観の違いの影響

2014-10-05 10:24:59 | 人権
●家族型的価値観の違いの影響

 最後に第5点として、家族的価値観の違いの影響について述べる。
 家族型価値観については第1章に書いたが、人権の発達には家族的価値観の違いが関係している。人権の観念は、イギリス、アメリカ、フランスで発達したが、そこには家族型による価値観の違いが現れている。
 エマニュエル・トッドによると、家族型には平等主義核家族、絶対核家族、直系家族、共同体家族の四つがある。これらの家族型は、結婚後の親子の居住と遺産相続の仕方に違いがある。その違いが親子間における自由と権威、兄弟間における平等と不平等という価値観の違いとなって現れる。そして自由と権威、平等と不平等の二つの対の組み合わせによって、四つのパターンに分かれる。すなわち、平等主義的核家族は自由と平等、絶対核家族は自由と不平等、直系家族は権威と不自由、共同体家族は権威と平等である。
 イギリスのイングランドを中心とする地域では、絶対核家族が支配的である。初期のアメリカも同様である。絶対家族は遺産相続において、親が自由に遺産の分配を決定できる遺言の慣行があり、兄弟間の平等に無関心である。この型が生み出す価値観は自由である。自由のみで平等には無関心ゆえ、諸国民や人間の間の差異を信じる差異主義の傾向がある。
 フランスのパリ盆地を中心とする地域は、平等主義核家族が優勢である。平等主義核家族は、遺産相続において兄弟間の平等を厳密に守ろうとするため、兄弟間の関係は平等主義的である。この型が生み出す価値観は、自由と平等である。この家族型の集団で育った人間は、兄弟間の平等から、諸国民や万人の平等を信じる普遍主義の傾向がある。
 以上、二つの家族型と異なる型のうち、直系家族は、子供のうち一人のみを跡取りとし、結婚後も親の家に同居させ、遺産を相続させる型である。その一人は年長の男子が多い。他の子供は遺産相続から排除され、成年に達すると家を出なければならない。父子関係は権威主義的であり、兄弟関係は不平等主義的である。この型が生み出す価値観は、権威と不平等である。また共同体家族は、子供が遺産相続において平等に扱われ、成人・結婚後も子供たちが親の家に住み続ける型である。父子関係は権威主義的で、兄弟関係は平等主義的である。この型が生み出す価値観は、権威と平等である。共同体家族は、ロシア、シナ等、ユーラシア大陸の大半に分布する。共産主義が広がった地域は、外婚制共同体家族の地域と一致する。共同体家族の権威と平等という価値観は、共産主義の一党独裁と社会的平等という価値観と合致する。
 こうした家族制度の違いが、価値観、法律、経済、イデオロギー等の違いにまで、深く影響していることを、トッドは明らかした。私見を述べると、自由=不平等的個人主義のイギリスにはロック、自由=平等的個人主義のフランスにはルソー、権威=不平等的集団主義のドイツにはヘーゲル、権威=平等的な集団主義のロシアにはレーニンが出た。それぞれの家族型に典型的な思想だと思う。ただし、家族制度によって価値観等が一元的に決定されるわけではなく、気候・風土・歴史等様々な要素が複合的に作用することに注意を要する。

 次回に続く。