ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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アベノミクスが再び力強さを発揮するには~田村秀男氏

2014-03-21 08:29:32 | 経済
 産経新聞編集委員・田村秀男氏は、独自のデータ分析に基づいて明確な見解を述べる数少ないエコノミストの一人である。1月21日の日記に「アベノミクス始動1年の課題」と題して、田村氏の記事を紹介した。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6f8061d6bef0e8f38a55b49755220e3b 
 そこで田村氏は「過去1年間ではっきりしたのは金融頼みの限界である」。これからについては、「今後の焦点は『第2の矢』財政出動と『第3の矢』成長戦略だが、いずれも迫力不足だ」と述べた。昨年10~12月期の国内総生産(GDP)の伸び率は大方の予想を大きく下回った。田村氏は2月23日の記事で、「アベノミクスは息切れし始めたのか、それとも再び力強さを発揮できるのか」と問いを発する。平成25年の経常収支の黒字額は2年連続で過去最少を更新し、ピークの19年から約8分の1に縮んだ。原発停止や円安の進行で化石燃料の輸入額が膨らむ一方、肝心の輸出が伸び悩み、貿易収支の赤字から抜け出せないのが最大の要因である。田村氏は「輸出が伸びない中では、内需を増やすしかないが、昨年の名目成長率1%達成に最も貢献したのは13%増の公共投資である」と指摘する。ところが、「頼みの公共工事の伸びは昨年春から秋にかけて目覚ましかったが、年末になって尻すぼみになっている」と言う。
 そして、昨年からのわが国経済の動向を次のように見る。「昨年、消費税増税を渋る安倍首相に踏み切らせようと企んだ財務省は、まずは公共投資の大幅な上積みを認めて、増税の判断基準になる4~6月の成長率をかさ上げし、さらに住宅などの駆け込み需要を演出した。御用学者やメディアを通じて、増税しても景気は大丈夫と思わせるように世論を誘導したのだが、家計消費も民間設備投資も足取りが重い。公共投資の減速とともに経済成長率は失速したというのが真相だ」と。
 この状態で4月から消費増税がされる。その影響などで消費者物価は3%上昇すると見込まれるが、賃上げ率が3%以上にならないと、現役世代は消費水準をさらに落とすしかない。「物価は上がっても需要が大きく減る「スタグフレーション」という最悪の局面になりかねない。その先はデフレ不況の再来だ」と田村氏は危惧する。
 これを避けるには、どうすべきか。田村氏は必要なのは、「大胆なデザイン」だという。アベノミクスの第1の矢「異次元金融緩和」、第2の矢「機動的な財政出動」、第3の矢「成長戦略」は、これまでばらばらに放たれてきた。これらを「統合する、つまり一つにまとめればよい」と提言する。そして「日銀が創出する資金のうち100兆円を国土強靱化のための基金とし、インフラ整備に投入すればよい。強靱化目的の建設国債を発行し、民間金融機関経由で日銀が買い上げれば、いわゆる「日銀による赤字国債引き受け」にならずに、財源はただちに確保できる」と述べている。
 以下は記事の全文。

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●産経新聞 平成26年2月23日

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140223/fnc14022308280005-n1.htm

【日曜経済講座】
アベノミクスは息切れなのか 編集委員・田村秀男 
2014.2.23 08:25

矢を統合し成長軌道固めよ

 昨年10~12月期の国内総生産(GDP)伸び率が大方の予想を大きく下回った。ルー米財務長官は20カ国・地域(G20)宛ての書簡で、「日本の内需見通しに雲が垂れ込めている」と指摘した(本紙20日付)。安倍晋三首相による経済政策「アベノミクス」は息切れし始めたのか、それとも再び力強さを発揮できるのか。
 経済は消費、投資と輸出の総体であり、経済成長の度合いはこれらの増加分で決まる。輸出が伸びない中では、内需を増やすしかないが、昨年の名目成長率1%達成に最も貢献したのは13%増の公共投資である。



 公共投資の今後を左右する公共工事の受注、民間の設備投資意欲を示す機械受注と家計の消費水準動向を前年同期比で追ったのがグラフである。機械受注は昨年後半に盛り上がりかけたが、ここにきて失速し始めた。内閣府の見通しではこの1~3月期は10~12月期を下回る。家計消費は秋以降、前年よりマイナスという具合である。頼みの公共工事の伸びは昨年春から秋にかけて目覚ましかったが、年末になって尻すぼみになっている。
 筆者には最近、米欧の投資家グループから問い合わせが入る。中国バブル崩壊不安も重なっているので、アベノミクスの今後について世界の誰もが気にし始めたのだ。
 内需の動向を複雑にしているのは4月からの消費税増税である。増税前の駆け込み需要で住宅や自動車の売れ行きは好調だが、大半は需要の先食いであり、4月以降は反動減に転じる。
 昨年、消費税増税を渋る安倍首相に踏み切らせようと企んだ財務省は、まずは公共投資の大幅な上積みを認めて、増税の判断基準になる4~6月の成長率をかさ上げし、さらに住宅などの駆け込み需要を演出した。御用学者やメディアを通じて、増税しても景気は大丈夫と思わせるように世論を誘導したのだが、家計消費も民間設備投資も足取りが重い。公共投資の減速とともに経済成長率は失速したというのが真相だ。
 来年度は増税で8・1兆円の所得が政府に吸い上げられる。これに公的年金給付削減1兆円、さらに公共投資は補正予算を合わせた15カ月ベースで1・3兆円減るので、総額で10・4兆円の緊縮財政となり、GDPの2%分以上が消える。消費税増税の影響などで消費者物価は3%上昇すると見込まれるが、賃上げ率が3%以上にならないと、現役世代は消費水準をさらに落とすしかない。物価は上がっても需要が大きく減る「スタグフレーション」という最悪の局面になりかねない。その先はデフレ不況の再来だ。
 どうすべきか。必要なのは、大胆なデザインではないだろうか。突拍子もない政策に踏み切れ、というわけではない。アベノミクス第1の矢である「異次元金融緩和」、第2の矢「機動的な財政出動」、第3の矢「成長戦略」を統合する、つまり一つにまとめればよい。これまではそれぞれの矢をばらばらに放ってきたし、成長戦略に至っては実際にどの程度まで経済成長につながるか不確かな政策だらけだ。
 日銀は昨年、資金供給量(マネタリーベース)を61兆円増やしたが、そのうち59兆円は民間金融機関の日銀当座預金に留め置かれたままだ。銀行貸し出しは多少、増えているが、海外向け債権増加額のほうがはるかに多い。日銀がお札を刷るだけではGDPを押し上げられない、というのが過去1年間の教訓だ。
 日銀にはまだまだカネを刷る用意があるし、その余力も十分ある。問題はその生かし方だ。公共投資が内需拡大に絶大な効果を上げていることは前述した通りだ。日銀が創出する資金のうち100兆円を国土強靱(きょうじん)化のための基金とし、インフラ整備に投入すればよい。強靱化目的の建設国債を発行し、民間金融機関経由で日銀が買い上げれば、いわゆる「日銀による赤字国債引き受け」にならずに、財源はただちに確保できる。
 大事なのは実行プログラムだが、成立済みの国土強靱化法は地方の再生など、成長戦略と考え方は共通している。強靱化はコンクリートと人の両方がそろわないと不可能だ。若者ら現役世代が不在なら、インフラは生かせないし、維持できない。人は地域経済が成長しないと集まらない。だからこそ成長戦略が鍵になる。「特区」「規制緩和」「減税」などは地方経済の活性化に結びついてこそ、導入する価値がある。今のアベノミクスに欠けているのは矢の数ではなく、その構想力なのである。
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