ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国では1%の富裕層が個人資産の3分1を握っている

2014-10-22 10:17:12 | 国際関係
 中国では、貧富の差が急速に拡大している。都市と農村の間だけでなく、都市部内でも格差の拡大が顕著になっている。
 まず昨年の話だが、2013年(平成25年)8月、北京大学の中国社会科学調査センターの調査によって、中国都市部の最富裕層(上位5%)と最貧困層(下位5%)の世帯年収を比較したところ242倍もの格差が存在し、格差の幅も急速に拡大していることが判明した。
 この研究グループは、2010年、中国全土の約1万5千世帯(約5万7千人)を戸別訪問して年収を聞き取り調査した。2012年に同じ世帯を再訪し、増減を比較した。それによると、都市部では対象世帯の上位5%の総年収が占める比率が24.2%だったのに対し、下位5%は0.1%で、242倍の格差があった。2010年には格差は約82倍だったので、わずか2年で差が約3倍に急拡大したわけである。
 2012年の調査で全体の58.3%の富が上位25%の富裕層に集中し、下位25%の貧困層は4.8%の富しか得ていなかった。
 それが、今年7月の報告書「中国民生発展報告2014」では、中国の上位1%の富裕層家庭が全国の3分の1以上の財産を保有していることが分かった。一方、最下層25%の家庭が保有する財産は全国のたった1%程度という結果となり、富の偏在と貧富の格差の深刻さが浮き彫りにしなった。中国共産党機関紙、人民日報のサイト「人民網」などが報じた。
 報告は「富める者がさらに富み、貧しい者がさらに貧しくなる悪循環」と指摘。深刻化する経済格差が社会不安を引き起こしかねないと警告している。
 所得分配の不平等さを示す指標に、ジニ係数がある。数値が1に近づくほど格差が大きいことを意味する。社会が不安定になって騒乱多発を警戒すべきラインを、0.4とする。先の北京大の研究グループは、これまでの調査で、1995年のジニ係数は0.45、同じく2002年は0.55、2010年は0.61だとしていた。それが、今年の報告では、2012年は0.73だったとした。わずか2年で1.2ポイント上昇している。危険水域を超えているうえに、さらに格差拡大に拍車がかかっていることを意味する。
 産経新聞7月26日付の記事で、河崎真澄記者は、「富裕家庭の資産の多くは不動産だ。中国共産党の幹部や政府高官、国有企業の幹部らが特権を使い、家族名義などで不動産を安価に購入、高値で転売する手口を繰り返して富を蓄積したとみられる。海外で所有する資産を加味すれば、格差はさらに広がりそうだ」と書いている。
 今後も中国では、貧富の差がさらに拡大し、ジニ係数が0.8台に上がっていくことが予想される。

 中国は、今も共産党が支配する国家である。マルクスによる共産主義の目標は、私有財産制を廃止し、生産手段を社会の共有にすることにより、貧富の格差を解消することにあった。マルクスは、都市と農村の格差の解消にも強い関心を持っていた。だが、中国共産党の支配のもと、共産中国では、資本主義国以上に貧富の格差が拡大している。
 莫大な富を手に入れた中国人富裕層は、財産を海外に移転させている。中国から不法に海外に流出した資金は平成23年(2011)の6千億ドルから24年(2012)には1兆ドルを突破し、25年は1兆5千億ドルに達したとみられる。石平氏によると、1千万人民元(約1億6千万円)以上の資産を持つ中国国民の6割はすでに海外へ移民してしまったり、あるいは移民を検討している。さらに、個人資産1億元以上の富豪企業家では27%が移民済みで、47%が検討中という。理由は、中国経済への不安だろう。国家債務が急増しており、昨年秋から不動産バブルが破裂し始めている。私有財産を守る究極の安全策は、海外への移民ということになるのだろう。中国人富裕層の利己的な行動は、自分の国、現在の政権を信頼していないことの表れでもあるだろう。
 
 社会主義的全体主義が、私有財産制を認め、資本主義的要素を多く取り入れれば、資本主義的全体主義に近づく。資本主義的全体主義をファシズムと言うならば、現在の中国は、共産主義がファシズムに変質しつつあると見られる。とりわけ、対外戦略は、ナチス・ドイツに似た思想と行動を表している。現在の中国は、かつてのソ連以上に、もっとナチス・ドイツに似てきている。「社会主義市場経済」という原理的に矛盾した言い方にならって、このファシズム化しつつある共産主義を、私は「ファシズム的共産主義」と呼ぶ。共産主義の矛盾が全面化したした末期的な段階である。
 もはや「ファシズム的共産主義」にまで至った共産主義を破棄することなしには、中国人民の安寧と幸福はない。中国を共産党から解放する、真の改革が必要である。
 以下は関連する報道記事。

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●日本経済新聞 平成25年8月3日

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0301Q_T00C13A8FF8000/
中国都市部、貧富格差242倍 北京大調査
2013/8/3 23:17

 【北京=共同】中国都市部の最富裕層(上位5%)と最貧困層(下位5%)の世帯年収を比較したところ242倍もの格差が存在し、格差の幅も急速に拡大していることが3日、北京大学の調査で判明した。
 貧富の格差是正を唱える中央政府の「掛け声」とは裏腹に、都市と農村の差だけでなく、これまで明らかになっていなかった都市部内で広がる「絶望的格差」(関係者)が浮き彫りになった。
 北京大の研究グループが2010年、中国全土の約1万5千世帯(約5万7千人)を戸別訪問して年収を聞き取り調査。12年に同じ世帯を再訪し、増減を比較した。
 このうち都市部では12年、対象となった全世帯の上位5%の総年収が占める比率が24.2%だったのに対し、下位5%は0.1%で、242倍の格差があった。10年は約82倍で、わずか2年で差が約3倍に急拡大した。
 上位25%の富裕層で見ても、12年の調査で全体の58.3%の富が集中。下位25%の貧困層は4.8%の富しか得ていなかった。
 一方、中国全土の1人当たり平均年収は経済成長を反映し、富裕層も中間層も増加。ただ、都市部の最貧困層の年収は12年で1200元(約2万円)と、10年に比べ300元減少していた。
 北京大の改革派研究者は「既得権益層が構造改革に徹底抵抗しているのが原因。格差がこのまま拡大し続けると動乱につながりかねない」と危機感を募らせている。
 中国では、都市に暮らす特権層が職務権限を利用する不正収入や闇給与が巨額に上るとされる。
 格差の程度を示すジニ係数(1に近いほど不平等)でみると、中国は10年に0.61。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、日本は0.336、米国0.380、ドイツ0.286。

●産経新聞 平成26年7月26日

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140726/chn14072617440003-n1.htm
中国の経済格差拡大 1%の富裕家庭が個人資産の3分の1握る 北京大調査
2014.7.26 17:44

 【上海=河崎真澄】中国の国内個人資産の3分の1を1%の富裕家庭が握り、貧困家庭との経済格差が一段と広がっているとの調査報告を、北京大学の中国社会科学研究センターがまとめた。中国共産党機関紙、人民日報のサイト「人民網」などが26日までに伝えた。報告は「富める者がさらに富み、貧しい者がさらに貧しくなる悪循環」と指摘。深刻化する経済格差が社会不安を引き起こしかねないと警告している。
 この調査は「中国民生発展報告2014」で、貧困層を含む下位25%の家庭では国内個人資産の1%しか所有していないという。
 報告では家庭の所得格差を示すジニ係数が2012年に0・73に達したとしている。ジニ係数は1に近づくほど格差が開き、0・4を超えると社会不安が広がるとされる。中国国家統計局では、12年のジニ係数を0・474と発表しているが、報告では実際の格差は公式統計をはるかに上回る危険水域だと指摘した。
 富裕家庭の資産の多くは不動産だ。中国共産党の幹部や政府高官、国有企業の幹部らが特権を使い、家族名義などで不動産を安価に購入、高値で転売する手口を繰り返して富を蓄積したとみられる。海外で所有する資産を加味すれば、格差はさらに広がりそうだ。
 こうした報告を北京大がまとめた背後には、倹約令や腐敗撲滅を掲げる習近平指導部が「貧困層など大衆の不満を利用し、党内権力闘争の相手である一部の既得権益層に“圧力”をかけようとした可能性」(上海の学識経験者)がある。
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関連掲示
・拙稿「脱中国が加速している」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/04209f8f84f324be3bd5f789f8dcfbe5
・拙稿「中国経済に死期の前兆が現れている~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/6114d7de9f61d6da850d49bcc10f78d9