●護憲・反戦・平和論の矛盾
8月15日、NHKのテレビ番組「日本の、これから」において、約40人の市民の人たちと憲法第9条について語り合ったが、参加者の半数は護憲派で、9条を維持ないし固守する意見を述べた。中には軍備否定による平和追求の人や、攻められたら逃げると公言してはばからない人もいた。この半数の人たちには、普通の市民ももちろんいただろうが、「プロ市民」といわれる左翼の活動家もかなりいた模様である。
私は近年、こういう思想の人たちと、直接顔を出して意見交換をする機会がなかったので、その人たちが相変わらず固着した思想・観念を述べるのを、久しぶりに聴いた。
その人たちには、ここ30年ほどの間の世界とアジアの変化、つまり70年安保と共産主義の後退、米ソ冷戦の終焉、ソ連・東欧の共産政権の崩壊、共産中国の軍事大国化、北朝鮮の核開発・ミサイル開発、9・11・中東戦争とアメリカの戦略転換等といった変化は、ほとんど世界観、国家観の見直しをもたらさなかったようだ。
私は番組の中で、次のような発言をした。
「なぜ日本は、アメリカのアフガン侵攻やイラク戦争で、付き従わざるを得ないのか。わが国の憲法は、自力で国を守るだけのものを持てないようになっている。国民は、自らを守る技術も訓練も持っていない。いま他国に攻められたら、若者の7割は『逃げる』と答えている。そうなった時、女性や子供や高齢者を誰が守るのか」
「私は、憲法を改正して、国防を充実させ、国民が自らを守る体制を整えて、初めてアメリカにNoも言える、政策に選択肢を持てるようになる、と思う」
「アメリカ軍を矛(ほこ)とし、自衛隊を盾とする仕組みになっていることに問題がある。小林よしのりさんが北朝鮮の問題があるから、アフガンやイラクに出て行かざるを得ないと言った。北朝鮮がミサイルを撃てば、10分で東京に着弾する。そういう国際社会の厳しい現実をみていかねばならない」と。
護憲・反戦・平和を唱える左翼系の市民運動の人たちは、自国が他国を侵攻することに反対するばかりで、自国を守るという観点から、憲法について考えない傾向がある。アメリカに国防を依存しているのは、現行憲法によるのだが、アメリカを追い出そうとしていながら、自主憲法を制定して自力で国を守る意思は持たない。また、積極的に日本を共産中国や北朝鮮のような国にしようという目標を持っているわけでもない。自分の思想の矛盾や精神的混乱に気づいていない人が多いように思う。
こういう人たちの存在は、日本を無防備の方向に向かわせ、日本に敵意を持ち侵攻の意思をたぎらせている国々を利するだけだろう。
私は、国防とは、国民が協力して、互いを守ることに基本があると思う。この相互防衛が、国民の共同性の根底をなすと思う。だから、国防を否定することは、共同体を否定することであり、個人主義・利己主義を助長することになる。現行憲法は、日本の軍事力に制約をかけることで、日本を国家として弱体化してきただけでなく、日本人の共同性を抑止することで、日本人を精神的に弱体化してきた。今日の国家・社会・企業・家庭等の様々な問題は、国防の規制による共同性の崩壊が、重大な原因になっていると思う。
現行憲法は、その前文と第9条によって、日本人に国際社会の現実の厳しさを見させなくしている。特に中国と北朝鮮の脅威に対して、目隠しをさせている。
●北朝鮮の脅威は高まっている
先の番組で焦点になったアメリカの問題は、複雑なので後日書くことにして、ここでは、北朝鮮の脅威について書く。
昨19日の朝、旅行先の大阪のホテルで、「報道2001」を見た。フジテレビ系の報道番組で、名前がいつまでも「2001」というのが気になるが、内容は常に最新である。
番組は、北朝鮮の元高官、林一男氏がインタビューに応じ、北朝鮮の核開発、ミサイル開発について証言した。
林氏の証言の要点は、以下の通り。
・北朝鮮はミサイルに搭載可能な核兵器の小型化に成功している。
・核兵器を10個保有している。
・ミサイルはすべて移動式に移行済みである。
・日本のミサイル防衛システムMDに対抗して、多弾頭化(MIRV)を進めている。
・日本がターゲットであることは明白。
・いつでも発射できる。
林氏は、北朝鮮は日本を核攻撃すると断言し、「日本、沖縄、沖縄、沖縄」と沖縄を三度繰り返した。沖縄の米軍基地を意味しているものだろう。また、昨年の核実験は失敗ではなく、核小型化の最終段階の実験を行ったもので、プルトニウム40gを使用した、とかなり具体的に述べた。
この北朝鮮元高官の発言には、直接的または間接的な対日宣伝という可能性があるので、慎重に分析する必要はあるが、平成10年のテポドン発射以来、北朝鮮の脅威は確実に高まっている。護憲・反戦・平和を唱える左翼系の市民運動の人たちは、こうした北朝鮮元高官の発言を、どのように聴くのだろうか。
この番組には、石破茂元防衛庁長官、防衛研究所の武貞秀士統括研究官、産経新聞の黒田勝弘ソウル支局長が参加していた。さすがにNHKの市民討論番組とは違い、防衛やコリア問題の専門家の意見は、傾聴に値する。林氏の証言の残りの内容と併せて、次回書くことにする。
8月15日、NHKのテレビ番組「日本の、これから」において、約40人の市民の人たちと憲法第9条について語り合ったが、参加者の半数は護憲派で、9条を維持ないし固守する意見を述べた。中には軍備否定による平和追求の人や、攻められたら逃げると公言してはばからない人もいた。この半数の人たちには、普通の市民ももちろんいただろうが、「プロ市民」といわれる左翼の活動家もかなりいた模様である。
私は近年、こういう思想の人たちと、直接顔を出して意見交換をする機会がなかったので、その人たちが相変わらず固着した思想・観念を述べるのを、久しぶりに聴いた。
その人たちには、ここ30年ほどの間の世界とアジアの変化、つまり70年安保と共産主義の後退、米ソ冷戦の終焉、ソ連・東欧の共産政権の崩壊、共産中国の軍事大国化、北朝鮮の核開発・ミサイル開発、9・11・中東戦争とアメリカの戦略転換等といった変化は、ほとんど世界観、国家観の見直しをもたらさなかったようだ。
私は番組の中で、次のような発言をした。
「なぜ日本は、アメリカのアフガン侵攻やイラク戦争で、付き従わざるを得ないのか。わが国の憲法は、自力で国を守るだけのものを持てないようになっている。国民は、自らを守る技術も訓練も持っていない。いま他国に攻められたら、若者の7割は『逃げる』と答えている。そうなった時、女性や子供や高齢者を誰が守るのか」
「私は、憲法を改正して、国防を充実させ、国民が自らを守る体制を整えて、初めてアメリカにNoも言える、政策に選択肢を持てるようになる、と思う」
「アメリカ軍を矛(ほこ)とし、自衛隊を盾とする仕組みになっていることに問題がある。小林よしのりさんが北朝鮮の問題があるから、アフガンやイラクに出て行かざるを得ないと言った。北朝鮮がミサイルを撃てば、10分で東京に着弾する。そういう国際社会の厳しい現実をみていかねばならない」と。
護憲・反戦・平和を唱える左翼系の市民運動の人たちは、自国が他国を侵攻することに反対するばかりで、自国を守るという観点から、憲法について考えない傾向がある。アメリカに国防を依存しているのは、現行憲法によるのだが、アメリカを追い出そうとしていながら、自主憲法を制定して自力で国を守る意思は持たない。また、積極的に日本を共産中国や北朝鮮のような国にしようという目標を持っているわけでもない。自分の思想の矛盾や精神的混乱に気づいていない人が多いように思う。
こういう人たちの存在は、日本を無防備の方向に向かわせ、日本に敵意を持ち侵攻の意思をたぎらせている国々を利するだけだろう。
私は、国防とは、国民が協力して、互いを守ることに基本があると思う。この相互防衛が、国民の共同性の根底をなすと思う。だから、国防を否定することは、共同体を否定することであり、個人主義・利己主義を助長することになる。現行憲法は、日本の軍事力に制約をかけることで、日本を国家として弱体化してきただけでなく、日本人の共同性を抑止することで、日本人を精神的に弱体化してきた。今日の国家・社会・企業・家庭等の様々な問題は、国防の規制による共同性の崩壊が、重大な原因になっていると思う。
現行憲法は、その前文と第9条によって、日本人に国際社会の現実の厳しさを見させなくしている。特に中国と北朝鮮の脅威に対して、目隠しをさせている。
●北朝鮮の脅威は高まっている
先の番組で焦点になったアメリカの問題は、複雑なので後日書くことにして、ここでは、北朝鮮の脅威について書く。
昨19日の朝、旅行先の大阪のホテルで、「報道2001」を見た。フジテレビ系の報道番組で、名前がいつまでも「2001」というのが気になるが、内容は常に最新である。
番組は、北朝鮮の元高官、林一男氏がインタビューに応じ、北朝鮮の核開発、ミサイル開発について証言した。
林氏の証言の要点は、以下の通り。
・北朝鮮はミサイルに搭載可能な核兵器の小型化に成功している。
・核兵器を10個保有している。
・ミサイルはすべて移動式に移行済みである。
・日本のミサイル防衛システムMDに対抗して、多弾頭化(MIRV)を進めている。
・日本がターゲットであることは明白。
・いつでも発射できる。
林氏は、北朝鮮は日本を核攻撃すると断言し、「日本、沖縄、沖縄、沖縄」と沖縄を三度繰り返した。沖縄の米軍基地を意味しているものだろう。また、昨年の核実験は失敗ではなく、核小型化の最終段階の実験を行ったもので、プルトニウム40gを使用した、とかなり具体的に述べた。
この北朝鮮元高官の発言には、直接的または間接的な対日宣伝という可能性があるので、慎重に分析する必要はあるが、平成10年のテポドン発射以来、北朝鮮の脅威は確実に高まっている。護憲・反戦・平和を唱える左翼系の市民運動の人たちは、こうした北朝鮮元高官の発言を、どのように聴くのだろうか。
この番組には、石破茂元防衛庁長官、防衛研究所の武貞秀士統括研究官、産経新聞の黒田勝弘ソウル支局長が参加していた。さすがにNHKの市民討論番組とは違い、防衛やコリア問題の専門家の意見は、傾聴に値する。林氏の証言の残りの内容と併せて、次回書くことにする。