ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

憲法第9条は改正すべし1

2007-08-30 11:15:00 | 憲法
 8月15日に放送されたNHKスペシャル「日本の、これから」は、憲法第9条を主題としたものだった。
安倍首相は、憲法改正を政策目標に掲げ、国民投票法を制定した。国民投票法は、憲法改正を3年間は凍結する内容になっている。その期間に、安倍首相は、集団的自衛権の行使について、従来の政府解釈を見直し、一定の枠内での行使を可能とすることを図っている。焦点は、来る11月1日に期限が来るテロ対策特別措置法を延長するか、終了するかだ。
 憲法、国防、集団的自衛権は、日本のこれからにとって極めて重要な案件であり、国民が真剣に考え、議論すべき事柄となっている。こうした問題状況において、今回のNHKの番組は、非常にタイムリーな企画だったと思う。
 
●私の基本的な考え

 番組の中で、私は市民の一人として、大意次のような発言をした。
 「憲法第9条は、改正する必要がある。第9条は、『戦争の放棄』という題名の章に置かれた条項だが、憲法に定めるべきものは安全保障である。現在の憲法は、国家の主権を制限する内容となっているから、これを改正しなければならない」
 「なぜ日本は、アメリカのアフガン侵攻やイラク戦争で、付き従わざるを得ないのか。わが国の憲法は、自力で国を守るだけのものを持てないようになっている。国民は、自らを守る技術も訓練も持っていない。いま他国に攻められたら、若者の7割は『逃げる』と答えている。そうなった時、女性や子供や高齢者を誰が守るのか」
 「私は、憲法を改正して、国防を充実させ、国民が自らを守る体制を整えて、初めてアメリカにNoも言える、政策に選択肢を持てるようになる、と思う」
 「アメリカ軍を矛(ほこ)とし、自衛隊を盾とする仕組みになっていることに問題がある。小林よしのりさんが北朝鮮の問題があるから、アフガンやイラクに出て行かざるを得ないと言った。北朝鮮がミサイルを撃てば、10分で東京に着弾する。そういう国際社会の厳しい現実をみていかねばならない」
 「自分の国のありようを自分たちの意思で決め、自分の国を自分たちで守り、そのうえで国際社会において責任ある役割を果す。そのために、日本人の精神を大切にしたい」

 こららは、討論の流れの中で発言したものであり、限られた時間で述べたことだが、こうした発言は、私の憲法及び安全保障に関する考えに基づくものである。

 私は、現行憲法は、GHQによって押し付けられたものであり、真に日本人が作った憲法ではないと考える。戦後、占領期間を経て、独立と主権を回復した後、日本国民は、この憲法を改正し、日本人自らの手で自国の憲法をつくらねばならなかったと考える。それが、60年以上もの間、放置されてきたことに、わが国の根本問題がある。国家、社会、企業。地域、家庭等に現れている様々な危機の根本に、憲法の影響がある。
 このように考える私にとって、憲法の問題は、第9条に限らない。前文からはじまって、日本人自身が全体を徹底的に検討し、新しい日本の憲法をつくらなければならないからである。

 番組の第1部冒頭で簡単に述べたが、第9条は、「戦争の放棄」という題名の章に置かれた条項である。だが、憲法に定めるべきものは安全保障である。安全保障の内容として、戦争や戦力に関する規定を置くのでなくてはならない。新憲法には、現在の「戦争の放棄」に替わって、「安全保障」という章を設け、独立主権国家の安全保障に必要なことを定める必要がある。最も重要なことは、国家の自然権としての自衛権を確認し、国民が自ら自国を守る意思を示し、そのうえで、国際社会においてわが国はどうあろうとするかを、明らかにすることである。これが私の憲法及び安全保障に関する基本的な考えである。
 このような考えの下に、これから、憲法、国防、集団的自衛権について考えてみたい。まず憲法第9条について、私見を述べたい。

●第9条を論じるなら前文から

 今回のNHKの番組は、焦点を第9条に絞っていた。第9条は、前文の内容と深い関係がある。番組製作者は、そこまで問題を掘り下げ、論点を広げることを制していた。しかし、前文から論じなければ、本当は第9条を論じられない。

 前文には、日本国憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意」して制定され、日本国民は、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚」し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書かれている。
 また、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」と書かれている。

 こうした内容を含む前文を起案したのは、日本人ではない。GHQ民生局の一員であるアメリカ軍人ハッシー海軍中佐である。

 いま要約した前半の趣旨を具体化するために、現行憲法は、第2章「戦争の放棄」に第9条を定めているものである。前文は、わが国が第2次世界大戦において、「政府の行為」によって「戦争の惨禍」を起こした侵略国であると認め、「平和を愛する諸国民」つまり連合国の「公正と信義に信頼」して、「われらの安全と生存を保持しようと決意した」として、占領下の従属・被保護を認める内容となっている。
 同時に、注目すべきは、後半の引用で、「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする」とある部分である。ここには、わが国が独立回復後は、主権を維持し、他国と対等の関係に立つことを目指しうることが盛られている。当然そこには、独立主権国家として、自国の軍備をどうするかという課題を孕んでいたわけである。

 先のNHKの番組は、第9条に論点を絞り、前文と第9条の関係へと議論を掘り下げようとしなかった。そのため、内容の浅いものとなっていた。

 次回に続く。