ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

戦後賠償問題は、決着済み1

2007-08-06 13:13:56 | 歴史
 米下院で慰安婦問題に関する対日非難決議の採択を実現したマイク・ホンダ議員は、今度は中国系反日団体とともに、米兵捕虜の補償問題に取り組むという。
 しかし、戦後賠償問題は決着済みである。このことについて、私見を述べたい。

●ホンダ議員・中国系反日団体には反論を

ホンダ氏は、中国系・韓国系の住民の多いカリフォルニア州選出の下院議員である。ホンダ氏を支援して下院に送り込んだのは、「世界抗日史実維護連合会」(以下、抗日連合会)等のアジア系の団体である。彼らは、ホンダ議員に多額の資金を提供していると伝えられる。

 カリフォルニア州では、第二次世界大戦中に日本軍の捕虜となって労働を強制されたという人たちが、日本企業を相手取って補償を求める裁判を多く起こしている。原告は1000人以上になり、三井物産、三菱商事、新日鉄、川崎重工などが被告となっている。これは、カリフォルニア州ではトム・ヘイデン法が制定されたためである。同法は、第二次世界大戦中のナチス・ドイツ及びその同盟国による奴隷・強制労働の損害賠償請求の時効を2010年まで延長するという内容の特例州法である。同法に基いて起こった訴訟の請求金額は、総額100兆円にものぼるという。
 ホンダ議員と抗日連合会等は、反日感情を持つ米国人をけしかけて日本政府に補償を求めさせ、これによって日米間に摩擦を起こし、米中関係を共産中国に有利な方向に導こうとしているのだろう。

 日本人は、心性が善良で、民族的に「すまなかった」「悪いことをした」という感情に流れやすい。しかし、戦争は国家と国家の間の行為であり、戦後の賠償も国家間の取り決めに基いて厳密に行なわれる。事実に基いた議論が必要である。ホンダ氏や中国系反日団体の動きには、明確な反論をしていく必要がある。

●日本は戦後、講和条約に基いて賠償を実行した

 わが国は、戦後賠償としてどれだけのことを実行してきたのか。まずこうした基本的な事実を踏まえなければならない。
 日本の戦後賠償問題は、サンフランシスコ講和条約に基づいて処理された。同条約は、昭和26年(1951)9月に調印された。わが国は、この条約に基いて、真摯に賠償を実行した。

 わが国が戦後処理で外国に支払った金と物は、総額1兆362億5711万円にのぼるとされる。日本という国が支払ったということは、日本の国民が支払ったのである。国家と国民は一体である。すべて国民の税金と財産で支払ったのである。
 実行した内容は、賠償および無償経済協力(準賠償)、賠償とは法的性格を異にするが戦後処理的性格を有する贈与・借款その他の請求権処理、軍需工場など日本国内の資本設備をかつて日本が支配した国に移転・譲渡する中間賠償、戦前、日本政府や企業・個人が海外に持っていた在外資産の所在国への引き渡しの4種からなる。
 わが国は、これらの内容を誠実に実行した。

 サンフランシスコ講和条約は、第14条に「日本国軍隊によって占領され、日本国によって損害を与えられた連合国」が、日本と二国間協定を結ぶことで賠償が受けられる旨を定めた。
「日本に占領され損害を与えられた連合国」とは、フィリピン、ベトナム、ラオス、カンボジア、インドネシア、オーストラリア、オランダ、イギリス、アメリカの9カ国を指す。このうちラオス、カンボジア、豪、蘭、英、米は、賠償請求権を放棄または行使しなかったが、ラオス、カンボジアとは、経済・技術協力協定を結び賠償に代わる準賠償を行った。

●共産中国・台湾・ソ連とも決着している

 中華人民共和国と中華民国台湾は、ともに講和会議に招かれていない。旧ソ連とは、講和条約を結んでいない。これらの国々とは、別途交渉を行なった。
 台湾とは、昭和27年(1952)4月に日華平和条約を結んだ。台湾は同条約で、「日本国民に対する寛厚と善意の表徴として」賠償請求権を放棄した。わが国の政府は、昭和47年(1972)年9月に行なわれた「日中国交正常化」で、同条約は「終了」したとしている。この時、わが国は、共産中国と日中共同声明を出した。共同声明は、「中華人民共和国政府は中日両国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」ことを確認している。
 後になって、共産中国政府が、戦後賠償問題が解決していないかのようにいうのは、間違っている。また、この政府の姿勢を受けて、在外中国人が日本に個人補償を求めるのも、根拠のないものである。
 なお、わが国は旧ソ連とは、昭和31年(1956)年10月に日ソ共同宣言を出した。旧ソ連は、これにより、日本に対する一切の賠償請求権を放棄している。

 わが国は、講和条約や個々の国との取り決めに基いて誠実に賠償を行っており、戦後賠償問題は、決着済みである。今日なお未解決なのは、国交のない北朝鮮だけである。北朝鮮とは、日本人拉致の問題が存在しており、拉致問題の解決が先決問題であって、安易に戦後処理交渉を行ってはならない。ロシアとの領土問題は、性格が異なるので、ここでは触れない。

 次回に続く。