ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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人種差別23~米国と中国が非難の応酬

2020-09-26 08:52:47 | 国際関係
●米国と中国が非難の応酬(続き)

 米国は、本年の7月4日の独立記念日を、コロンブス、ワシントン、ジェファーソンらの像や記念碑が破壊されたり、汚損されたりする中で迎えた。自由、民主、人権、法の支配を共通価値とする国々の中心である米国は、ごく少数の者たちの行動によって歴史の暗部を世界にさらされ、国家観・歴史観・価値観を根底から揺さぶられている。その背後には、米国の大衆の意識を自国に有利に誘導しようとする共産中国の巧妙な工作がある。米国社会を根底から揺り動かして混乱させ、米国民のトランプ政権への不満を強めることができれば、中国に強く対抗するトランプの再選は危うくなる。中国共産党はそれを狙って、抗議デモを教唆・煽動し、過激化するように仕向けている。中国共産党は米国の人種差別問題を自国の利益、世界的な覇権の拡大に利用しようとしている。
 その一方で、中国共産党は、自国における民主化運動を厳しく弾圧している。6月30日、共産党の全人代常務委員会は「香港国家安全維持法」(以下、国安法)を可決した。中国共産党は、自治と自由を50年間保障するという国際的な約束をかなぐり捨てて、「一国二制度」を実質的に否定し、香港の自治と自由を守ろうとする人々への本格的な弾圧を開始した。言論・表現・集会・結社等の自由を奪う強硬策の実行である。武漢ウイルス・パンデミックで世界が大きく動揺し、香港への国際社会の関心が薄れていた隙を狙ったものと見られる。国安法の施行を受けて、香港では、政治団体が相次いで解散を表明した。若き活動家である黄之鋒氏や周庭氏は政治団体「香港衆志(デモシスト)」からの脱退を表明した。彼ら幹部が抜けたところで、同会は団体としても解散を発表した。香港人の自由と権利は、大幅に制限された。香港人は、今や米国では黒人も持っている自由と権利を奪われている。
 中国共産党は、チベット族、ウイグル族、法輪功等への暴虐を告発されても、香港における約束違反を咎められても、決して自らの非を認めない。逆に、米国の側の問題点を論って非難し返している。米国には、黒人の生命の大切さを訴えながら、そうした中国共産党の姿勢を批判せずに、チベット族やウイグル族、法輪功等の生命の大切さを訴えない者がいる。また、黒人の自由と権利の拡大を要求しながら、香港人の自由と権利の回復を要求しない者がいる。それがBLMやアンティファ等である。彼らによる自由と権利の主張は、欺瞞に満ちている。
 トランプ大統領は、就任以来、共産中国に対して、強硬な姿勢の外交を行なっている。中国共産党が香港市民への弾圧を強めるのに対し、トランプ政権は中国に対する圧力を一層強めていく方針を打ち出した。第一段階は、香港への軍民両用技術の輸出制限を行なう。続いて、各種の対抗措置が実施される模様である。過去の民主党政権では、こうした厳しい対中政策は、決して行われなかった。
 中国共産党が香港で国家安全維持法を施行した暴挙に対し、日本、フランス、英国など27カ国は6月30日に国連人権理事会で、中国に対して懸念を示す共同声明を発表した。ところが、キューバなど53カ国は同理事会で、同法を称賛する共同声明を出した。国際社会への中国の影響力は、想像以上に大きくなっている。このことは、統制主義的権威主義をよしとする国家が世界には多数存在することを意味する。特に独裁政権・軍事政権の発展途上国である。そうした国家の特権的な指導層にとっては、共産中国と連携することで政治的・経済的・軍事的な利益を得られるのである。
 もし本年の選挙でトランプが再選されず、バイデンが勝利して民主党による融和的な対中外交に戻った場合、日本やアジア・太平洋地域の安全保障にも大きな影響が生じる。それゆえ、米国の人種差別問題への対応は、間接的に日本やアジア・太平洋地域の安全保障政策をも脅かしかねないものである。また、米国の政権が共産中国の覇権拡大を抑えようとせず、融和的な姿勢に転じれば、世界的にも中国共産党の影響力が増大するだろう。
 中国共産党が世界を支配するならば、自由、民主、人権、法の支配といった価値は踏みにじられ、唯物論によって宗教は弾圧される。世界のチベット化、ウイグル化が進む。共産中国が主導する統制主義的権威主義から、自由主義的民主主義を守るためには、国際的な連携の強化・拡大が強く求められる。

 次回に続く。

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