明日、連載1周年を迎えます。何故12月14日から始めたのかと言うと、思い立った日から一番早い大安日(昨年)だったから。ただそれだけ。ああそろそろ1年かと今までを振り返っておりましたら、14日は赤穂浪士の討ち入りの日だと思い出しました。赤穂浪士の討ち入り、忠臣蔵は私などが語るまでも無い有名な物語。日本人はこういう物語が本当に好きです。これも世代間のズレがあるのでしょうが....。さて、忠臣蔵の有名な一幕に、松尾芭蕉の高弟で、芭蕉十哲の一人と言われた宝井其角(きかく)と赤穂浪士・大高源五が討ち入りの前日に両国橋の上で出会う場面があります。俳諧の達人でもあった大高源五の身の上を案じた其角が、“年の瀬や・川の流れと・人の世は”と問うと、“あしたまたるる・その宝船”と返します。其角はこの句によって赤穂浪士の討ち入りを察したそうです。今から300年以上も前の話。幾分脚色も加えられているのでしょうが、この“間合い”や、直接的な表現ではなく、句に著して相互の心中を察するなど、まさに“粋”であります(この言葉もはや死語かもしれませんが....)現代は便利で、携帯等によって直接的な会話が瞬時に出来るが故に、心中を察するとか、気遣いとか、そういう部分が欠落し、もって物質的には豊かだけれども精神世界の充足が得られない。そんな刺々しさを孕んだ世相なのでしょうか。振り子は右に振れれば左にも同じだけ振れてバランスを取ろうとする。最近はその“振れ戻り”が大きくなっているように思います。あした待たるる....、明日で1年、早いものです。