世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

長谷寺のボタンもあでやかですが、参道の古い町並みも風情のある初瀬です

2016-11-06 08:00:00 | 日本の町並み
 前回、前々回と近鉄大阪線の伊勢街道がらみの町を紹介してきましたが、今回は八木町と榛原町との間にある初瀬(はせ)を紹介します。初瀬は、これまで紹介をしてきた伊勢街道の脇道の一つ初瀬街道の起点にもなっています。初瀬街道は、初瀬を起点として、前回紹介した萩原(榛原)で分岐して三重県の松坂を結ぶ街道でした。初瀬は、また、西国三十三箇所の霊場の長谷寺の門前町としての性格も兼ねている町並みです。

 初瀬は、近鉄大阪線の大和八木と榛原とのちょうど中間の長谷寺駅の北側に広がる町並みです。古くは泊瀬とも表記され「はつせ」と呼ばれました。地名は初瀬(はせ)と表記されますが、お寺は長谷寺で、どちらも漢字として普通の読み方ではないのですが、由緒ある地名のようです。泊瀬の方は、万葉の時代から大和川の船泊であったことから、長谷の方は三輪山の南を東西に走る長い谷であったことに由来するそうです。

 
 かつての初瀬街道の国道165号線は、大和川に沿って東西に延びる長い谷底を通っていますが、近鉄大阪線は、谷の南の山塊の斜面を通っています。近鉄の長谷寺駅で下車をし長谷寺にお参りをすると、およそ40mほどの標高差を下った後、国道を横切り再び40mほどの標高差を上らねばなりません。帰路は、その逆で、上ったり下ったりで、駅から水平にロープウェイでも架けてくれないかとも思ってしまいます。ただ、そうすると、国道を渡った後に長谷寺の門前まで続く古い町並みの風情は楽しめなくなります。

 
 
 
 
 
 初瀬の町並みは、大和川と山に両側を抑えられ奥行きが取れないせいか平入の家が多いようです。初瀬寺に近くには、お土産屋が目立ってきますが、国道の交差点寄りには、土蔵造りに虫籠まど、そして一階には格子のある町家が並んでいます。そして、どの町家も、実に堂々としています。犬矢来のある家や鉢花の置かれた家も多く、その中には、長谷寺の名物であるボタンも数多く見かけました。

 
 
 
 その長谷寺は、麓から長い登廊を登っていく必要があり、かなり辛い上りですが、途中のボタンの花を愛で、登廊に下がる灯篭を眺めながらで多少楽になります。ボタンは、登廊の両側にすごい物量で植えられていて、圧倒されますが、ボタン以外にもシャクナゲやフジなど、お寺の建物を背景に咲き誇っています。本堂は、清水寺と同様の舞台づくりで、舞台に立つと境内の諸堂とその向こうに、初瀬の町並みが望めます。本尊は木造の十一面観音で国宝・重文の木造の中で最大の10mの巨像です。あまりに巨大なために、下半身は礼堂の床面より下にあって、通常は上半身しか拝観できません。
 長谷寺の十一面観音は、重文指定の木造の十一面観音像のうち、立像としては最大のものです。一方、坐像の最大のものは檪谷寺の本尊です。長谷寺では全体像を見るのが難しいのですが、現在、上野の国立博物館で展示されている檪谷寺の本尊は、博物館という展示環境のため全体像が見られます。横方向だけでなく、真後ろからも見ることもでき、その迫力はかなりのものです。この博物館の本館19室には、「トーハクをまわそう」というコーナーがあり、博物館が所蔵する仏像や埴輪などを、あらゆる方向から見ることができるシステムです。ディスプレイに表示された画像を、手の操作で回して、真後だけではなく、真下や真上からも眺められます。檪谷寺の本尊のデータは入っていませんが、作品をあらゆる角度から写真撮影をして、コンピュータグラフィックスで、スムーズな動きに編集しているようです。ただ、手をかざして画像の向きを変えようとしても、なかなか思うように動いてくれないという辛さがあります。


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