世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

坂の街として有名な尾道ですがレトロな商店街や日本一短い渡船も捨てがたい魅力があります

2022-03-27 08:00:00 | 日本の町並み
 前々回に西武新宿線の落合から中井にかけて、かつての目白文化村を紹介しました。このエリアの西端の中井駅の近くには林芙美子が晩年を過ごした邸宅が記念館として残されていました。林芙美子というと放浪記で紹介された尾道を思い浮かべます。駅の近くには芙美子の銅像や放浪記の一節の記念碑が置かれています。尾道は何度も訪問していますが、今回は最近に訪問をした駅前から東に延びる商店街や向島とのフェリーを中心に紹介します。

 
 
 
 
 
 駅の東100mほどのところに本通り商店街の入り口があり、その近くに芙美子像が置かれています。商店街は延々と1.3kmも東に延び、昔の商店街の雰囲気を残した味わい深いものですが、ご多分に漏れずシャッター街の雰囲気が迫っています。かつてはこの商店街の中に大和湯という銭湯があったようで、その建物はそのまま保存され、雑貨屋さんとカフェとして使われているのはうれしい限りです。この大和湯の斜め前には1971年まで使われた尾道商工会議所が記念館として残され入口には商工会議所120年を記念した大黒天の像が置かれています。大正末期に作られたビルは、コンクリート造りとしては現存最古の建物だそうです。そして、2階と3階が吹き抜けで階段状の議場があって市議会場や県議会場のように立派です。

 
 
 商店街をしばらく東に行って海側に出ると尾道渡船(兼吉渡し)の乗り場です。ここから向島(尾道市内なんです)までは200mほどで日本一短い船旅と言われています。NHKの朝ドラ「てっぺん」のロケ地になったところで、向島側には新尾道三部作「あした」でロケに使ったセットがバスの待合室に使われています。もし、四国からの帰りに寄り道で尾道に寄られるときは、松山から瀬戸大橋を渡って福山までのバスを向島で下車することをお勧めします。向島バス停から尾道渡船の乗り場までは1kmたらずですが、向島の次は尾道市街から遠くの新尾道まで連れていかれます。

 


 
 
 尾道渡船が行きかう尾道水道が見渡せるのが市街地の北側に標高144mでそびえる千光寺山です。この千光寺山が海岸に迫るために、JRの線路の北側は坂の連続で、尾道独特の風景を作っています。大林映画の「転校生」で有名になった御袖天満宮の長い階段も坂道の変形です。千光寺山には、上りにロープウェイに乗ると楽で、山登りではなく山下りで千光寺や文学碑巡りができます。ロープウェイ山上駅近くには展望台があり尾道市街の向こうに尾道水道を挟んで向島が望めます。少し下ると山の名前となった千光寺で、境内にある玉の岩には昔光る岩があったと言われています。この千光寺に下る途中は「文学の小路」と呼ばれ、林芙美子をはじめ20を超える文学碑が散在する散歩道になっています。千光寺のすぐ下には中村憲吉旧居がありその隣に個人の別荘を利用した旅館の「みはらし亭」があり、さぞ見晴らしの良い旅館であろうと思います。さらに下ると天寧寺の三重塔に出ます。室町時代に建てられた五重塔が老朽化し、江戸時代に上層部の二層を取り払って三重塔とした歴史を持つそうですが、三重塔を上から眺められる数少ない場所です。

 大和湯は商店街にあった銭湯ですが、尾道に限らず銭湯は減ってしまいましたが、どっこい銭湯の料金で天然温泉に入ることができる温泉もあります。全国どこでも1000m掘れば温泉が出るとも言われますが、最も深く掘った温泉は六ケ所温泉の2714mだそうです。そうはいっても温泉の掘削はリスクを伴うばくち的な要素があります。事前の調査には、既存の資料の調査から始まり、空調写真や現地の踏査に加えて、電気、磁気それに放射線も動員して土地の物理特性を調べるのだそうです。これらの結果を総合的に判断して、出るか/出ないかの判断を行うとのことですが、人間の感と経験の判断からAIによる判断も取り入れられているのではないでしょうか。

マドローダムはオランダらしい風景がたくさん、それにも増して緑いっぱいの中に模型の乗り物がいっぱいあります(オランダ)

2022-03-20 08:00:00 | 世界の町並み
 台湾にある小人国は中国の名所が1/25のミニチュアサイズで並んでいました。このようなミニチュアの建物は1/25のサイズがデファクト・スタンダードのようで、わが国のワールド・スクエアも同じアサイズのミニチュアが並んでいます。ただ、最近に東京にできたスモールワールドは屋内の施設のためか1/80と縮尺率は高いようです。小さな模型を作るのはアジア人が得意と思うのですが、意外やミニチュアランドはヨーロッパに多いようです。これらの中で現存最古のものはイギリスにあるベコンスコット・モデルヴィレッジと言われていますが、戦後まもなく開園されたオランダのマドローダムも古いミニチュアランドの一つです。今回は、このマドローダムを紹介しますが、訪れたのが30年も前になるので現状は変わっているかもしれませんし、写真もアナログのポジ画像を基にしているのでだいぶ退色しています。

 
 
 
 
 マドローダムはオランダの南部のデンハーグの郊外スケベ・ニンゲン地区に1952年に開園されたミニチュア・パークです。名前は戦時中にレジスタンス運動に参加して強制収容所で亡くなったジョージ・マドローに由来するものです。周りは多くの公園と池があって緑豊かな場所ですが、マドローダムは東西が150m、南北が100mぐらいで東京ドームのグラウンドの広さ程度で小ぶりです。建物などはすべてオランダのもので、数はさほど多くないのは広さとの兼ね合いでしょうか。
 日本人にはおなじみのアムステルダムの駅舎は無くダム広場や国立美術館の建物があったりします。特定の建物を中心に据えるのではなく、オランダらしい町並みを再現しているといった印象です。人形の模型は、小人国やワールドスクエア二にべると、やや写実にかけるきらいはあったようですが。もちろんオランダの象徴の風車も回っています。

 
 
 
 
 
 飛行場や運河それに鉄道は重点を置いて作られているような気がしました。流通が国の重要な産業だからではないかと感じます。今から30年前ですから、空港に駐機するのはジャンボが主体で、JALのジャンボも駐機していましたし、KLMではDC-10の姿もあります。台湾の小人国の空港の模型より航空会社の数が圧倒的に多かったように思います。模型の飛行機は飛び立ちませんが、青色と黄色のツートンカラーのオランダ国鉄の模型は縦横無尽に走り回っています。花の国のお国柄でしょうか、模型の船が行きかう運河の土手には一面の花が植えられていて、華やかですが、こちらは本物で原寸大です。

 飛行機の模型の中にはアメリカ機のジャンボに交じってエアバスのA300と思しき機体もありました。それまで大型機の市場はアメリカ機が独占していて、これを食い止めようとヨーロッパの複数の国が共同で立ち上げたのがエアバス社でした。最近の飛行機は、異常さえなければコンピュータが離陸から着陸までの大部分を制御してくれるようです。特に、エアバスの機体はフライバイワイヤが取り入れられて、その傾向が顕著ですが、A300が飛び始めたころに、パイロットがコンピュータの指示の意味が分からずに失速墜落する事故も起こりました。複雑化するシステムに、コンピュータと人間との分担をどうするのか難しい課題かもしれません。

高田馬場から下落合の北側には、おとめ山や薬王院など都心の新宿区に居ることを忘れそうな緑と花いっぱいの空間が広がります

2022-03-13 08:00:00 | 日本の町並み
 前回は西武新宿線沿いの妙正寺川の河岸段丘に残る文化人の遺構や文化の遺構を紹介しました。今回は、同じ地区の草花やレトロな建物を紹介したいと思います。

 
 
 
 
 西武新宿線が山手線を越えてすぐの北側の斜面にあるのが「おとめ山こうえん」で、江戸時代には将軍の鷹狩り場だったそうです。新宿区で新宿西口の中央公園に次ぐ2番目に広い公園で、都心とは思えない緑豊かな里山が広がっています。明治期に近衛家の所有になり、戦後は国有地となり荒れ放題でしたが都が整備をして1969年に新宿区立の講演となりました。園内には湧水があって、蛍の養殖は有名です。入口近くには東山藤稲荷があり、クラヤ立派な門のある民家などがある界隈です。

 
 おとめ山公園の東にあるのが日立製作所のクラブハウスの目白クラブで、元は学習院旧高等学校の昭和寮だった建物です。宮内省内匠寮の設計となるスパニッシュ様式の真っ白な建物で、目立つ建物ですが、残念ながら一般公開はされていませんので、外部からのぞき見をするだけです。

 
 
 西側に少し行くと薬王院があります。牡丹の名所で、咲くころには多くの人で混雑します。斜面二一面の牡丹が植えられていて見事ですが、斜面の頂上に植えられた藤の花も同じ時期に咲き、こちらも見事です。この薬王院の少し手前に新宿区立野鳥の森公園がありますが、この里山が住宅開発で潰されそうになった時に、近くに住む友人からの依頼で保存の署名をした覚えがあります。

 
 薬王院の前の道を西に階段を上っていくと頂上あたりに、なぜかウサギとフクロウの像が並んでおかれていますが、ゆわれのほどは不明です。さらに西に行って聖母坂通りの向こう側には聖母病院があります。機李氏都響の愛の精神のもとに昭和初期に建てられた病院で、産婦人科は定評のある病院だそうです。スイス人のマックス・ヒンデルが設計したレンガ・タイルの創建当時の建物も健在で、2棟の尖塔を持つ素敵な建物です。

 牡丹の原生地は中国北西部で、中国をイメージする花の一つのように思います。また美人の例えとして、座れば牡丹と言われ、李白も楊貴妃の美しさを漢詩に表しています。漢詩と言えば、記号を付け加えて、日本語として読む工夫がされていますが、中国では漢字そのもの音読みするわけです。電報を打つ場合は、各々の漢字に当てはめられた4桁のコードの数字の羅列で送り、受け側で漢字に翻訳する手法が採られていたそうです。現在はどうしているんでしょうか、それとも電報自体が消滅しているのかも。ちなみに、日本でFAXが発達したのは、漢字や仮名さらにはアルファベットと複数の文字が入り乱れるので、原稿を絵として送った方が手っ取り早いからと言われています。

屋久島は縄文杉以外にも滝や野生のサルなど島全体が自然の宝庫のようです(日本)

2022-03-06 08:00:00 | 世界遺産
 錦江湾の向こうに桜島を望む仙厳園には反射炉の跡や水力発電の遺構まであるのが産業文化遺産の旧集成館でした。鹿児島県には3つの世界遺産があり、文化遺産が旧集成館を含む明治日本の産業革命遺産、残り2件は自然遺産の奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島と屋久島になります。自然遺産の西表島は本ブログで紹介済みなので、今回は屋久島を紹介します。

 屋久島はわが国が世界遺産会議に参加して最初に登録された文化遺産2件と自然遺産2件のうちの1件で、わが国で最も登録の古い世界遺産です。世界遺産に登録されているエリアは屋久島の面積の20%程度ですが、登録エリア以外も島全体が原生林に覆われています。今回は、世界遺産の登録エリアになっている西部林道など海岸から近い自然を紹介し、次回は島の内部の屋久杉が生い茂る原生林を紹介する予定です。屋久島の自然遺産登録は、縄文杉などがある標高2,000mほどの島の中央の針葉樹林帯から西側に下っていき西岸の亜熱帯の照葉樹林帯までに広がり年間4,000~10,000mもの雨量のある湿潤な原生林が残されていることによります。ただ、観光客の多い縄文杉はエリア内ですが、屋久杉の原生林が広がっている屋久杉ランドや白水雲水峡などはエリア外になります。

 
 
 屋久島は、世界遺産の登録外になる東側が開けていて、民家や宿泊施設も東側、飛行場も港も東側、路線バスの運行も東半分です。逆に島の西側は、人家がほとんどなく手付かずの亜熱帯照葉樹林の広がる地域で、登録エリアの西の端には西部林道が南北に通っています。この林道は部分的には車1台がやっとの幅で、対向車が来ると、どちらかの車は退避場所までバックですが、その可能性は少ないようで。車よりは野生動物と遭遇することの方が多く、野生のサルは他の観光地と違って、観光客慣れしてなく、目が合っても危害を加えることはありません。人間も自分たちの仲間の一部と思っているようだ、とのことでした。動物注意の交通標識も猿が主役なのか、猿の絵が描かれています。猿ほどではありませんが野生の鹿も見かけます。

 
 
 西部林道を北に抜けると少し人家がある永田いなか浜に出ます。花崗岩が風化した白砂の浜が1km近くも続き民宿もある浜ですが、風が強いせいか、屋根にはびっしりと石が載せられています。このいなか浜を有名にしているのはウミガメの産卵地で5月から8月の産卵期には、おびただしい数のウミガメが上陸してくるそうです。逆に西部林道の南側の中間集落の近くには樹齢500年巨大なガジュマルがあります。三木から数多くの気根が伸び、格好の撮影ポイントになっています。

 


 
 中間集落を挟んで東西に2つの滝があります。東側にあるのが千尋の滝で、誇大な一枚岩から流れ落ちる滝です。この一枚岩の大きさが、一千尋(両手を広げた長さの一千倍)あるということから命名されています。滝を見る展望台とは別に、手間家の展望台に上ると東南に太平洋が輝いています。逆に西側にある大川の滝は落差が88mあり、日本の滝百選にも入っているそうで、滝つぼ近くまで歩いて行けます。大雨が降った後には、逆に滝までの遊歩道まで水没するくらいの流量になるそうです。

 屋久島は1か月にに35日も雨が降ると言われるくらい雨が多く、年間降水量は海沿いの平地でも5,000mm程度、山間部では10,000m近くにもなるそうです。奈良県の大台ケ原でも、1週間に10日降ると言われ3日間のトレッキングの間の1日は雨でした。一方の屋久島は、比較的雨の少ない11月だったせいでしょうか、雨には遭いませんでした。縄文杉のある中央の高山は2,000m級の山々が連なり、気温は平地と13度も低く、小さな島に亜熱帯から亜寒帯までが存在します。研究所にいる頃に人工気候室という施設がありました。設定した気温や雨量などが人工的に作り出せる部屋でしたが、雪までは降らせなかったように思います。縄文杉のあたりでは、冬に2m近くも積雪のある屋久島の自然にはかなわないようです。