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世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

ステンドグラスの青色が美しいシャルトルの大聖堂(フランス)

2007-12-23 10:10:27 | 世界遺産
 ユングフラウ・ヨッホからアレッチ氷河やユングフラウの上の空の青さが印象的でした,またカナデシアンロッキーのレイクルイーズの青さも独特でした。これらの自然の青に対して人工美のステンドグラスの青色が美しい聖堂がパリからちょっと列車に乗れば行けてしまうシャルトルにあります。さほど大きな聖堂でもなく、左右の尖塔の形が違う点を除けば、外観からは比較的ありふれた聖堂のように思えまが、内部から見たステンドグラスは独特の青味が魅力的です。

 シャルトルは、パリの南方にあるモンパルナス駅からTGVで70分ほどで到着します。ただ、筆者が訪問したのは20年ほども前なので、シャルトルまでの路線にはTGVは走っていなかったように思います。当時は走り始めた青色のTGV大西洋線の列車がモンパルナス駅からルマンまで走っていて、オレンジ色のTGVより速い300km/h運転を始めていたように思います。シャルトルまでの途中のランブイエで途中下車をして、第1回のサミットが開かれたランブイエ城を訪問しました。話は脱線しますが、このランブイエ城を訪問したときの感想は、サミットが開催されたお城にしては掃除が行き届いていないね、だったのです。ヨーロッパのお城は、近づいて見ると、かなりの確率でその汚れぐわいが気になります。文化財は自然のままで手を加えない、というのが方針なのでしょうか。こぎれいに掃除が行き届いている日本のお寺などとはずいぶんと違います。

 シャルトルの大聖堂は、青色のステンドグラスだけが有名なのではなく、聖母マリアのものとされるサンクタ・カミシアと呼ばれる聖衣を所蔵しています。ヨーロッパの大聖堂は、聖遺物を保存するために建てられたものが多いようです。先日紹介の、ケルンの大聖堂も東方三博士の聖遺物を収めることが当初の目的であったようです。仏教の世界でも、浅草寺や善光寺の秘仏の本尊は極めて小ぶりの仏像とされていますが、巨大な建物を建てるきっかけとなり、信仰の対象物になっています。シャルトルの、聖遺物は火災によって失われかかったものが、司祭の機転で宝物庫に避難して難をまぬがれたとのこと。このことは、聖母マリアのおかげとのことで、この聖遺物のありがたさが増したようです。このときの火災以外にも、何度も火災に遭っていて、2本の尖塔意匠が異なるのも、片方が火災で焼失して、再建されたためです。
 
 ステンドグラスは、大きなガラスの製作が難しいために、小さなガラスを鉛のリムで組み合わせて大きくすることから始まったものです。小さなガラスを、単純に組み合わせるだけでなく、それで絵などを描いたものが、教会のステンドグラスです。ガラスの色は、その中に混ぜるもので決まり、通常は金属酸化物が使われます。コバルトの青、マンガンの紫、金の赤などで、炎色反応や蛍光での発色と似ていますが、原理は異なるようです。テレビやPCのディスプレィとして長らく使われたブラウン管は蛍光を利用したものですが、液晶や有機ELはまったく異なる原理により色を作っています。自然の色をありのまま再現するのは、古くて新しい問題のように思いますが、ステンドグラスの技法にも、IT技術の応用があるでしょうか。

町中に清水が湧く、越美北線の城下町越前大野

2007-12-16 10:11:53 | 日本の町並み
 室生寺は近鉄の室生口大野が最寄り駅でした。駅名に大野と付く駅はかなりの数が存在していて、首都圏では小田急線の相模大野が有名です。今回は、これらの駅の中から福井県のローカル線、越美北線の越前大野駅のある大野市を紹介します。

 越前大野は福井駅から2~3時間に1本という本数の少ない越美北線で約1時間の距離にあります。

かつては、私鉄の京福鉄道が福井から勝山を経由して乗り入れていましたが、乗客の減少で、勝山ー大野間が廃止され、その間をやはり2~3時間に1本のバスが走っています。福井から、ワンマンのデーゼルカーに乗車すると、人里はなれた山の中に分け入っていきます。ところが、大野に付く少し手前から急に視界が開け、町並みが広がり、ちょっとびっくりします。神戸の裏山に分け入る神戸電鉄の鈴蘭台駅の手前の様子と似ています。

 さすがに金森長近の城下町で現在の人口は4万人弱あります。

碁盤の目状の通りが越前の小京都の呼び名にふさわしく、町のあちこちに湧水があって、ほっとする町並みが続いています。

 越美北線は、岐阜から延びてきた越美南線と接続される予定でしたが、両線はついにつながらないまま、越美南線はJRから第三セクタの長良川鉄道になり、両線共に乗客の減少に悩まされているようです。この繋がるはずであった長良川鉄道の沿線に、やはり町中に湧水のある城下町の郡上八幡がありますが、なにかの偶然でしょうか、それとも地下水脈が山を越えて繋がっているのでしょうか。湧水の中でもっとも整備されているものが、御清水(おしょうず)で、かつては城主のご飯を炊くのに使われたそうです。

屋根のついた水場はちょっと大げさですが、この建物を除けば郡上八幡の宗祇水にもちょっと似てるように思います。

 碁盤の目の通りのなかで、東西に伸びる七間通りは石畳の道で、通りの両側の老舗の店舗には湧水などもあって情緒があります。

採れたての野菜などを売る朝市が開かれるのもこの通りですが、訪れたのが午後だったせいで朝市は終わっていました。

 一方、南北の通りの中の寺町通りも、石畳の道ですが、通りの両側は名前の通り寺ばかり。京都や金沢、それに東京では烏山や筆者の住む中野にも寺町があり、やはり寺ばかりの町並みが続きますが、それぞれに寺が集中した理由があるようです。越前大野では城下町の東の端を固める、いざというときの砦の役割を持たせたもののようです。

通りの中央や端に清冽な水の流れる水路がある町並みは、海野や大和郡山それに島原などかなりの数がありますが、この寺町通りの端にも水路があります。湧水や水路など水の存在は町並みの風景に抑揚をつける効果があり、絵にしたくなります。

 日本で名水と呼ばれる水は、不純物が少なく、カルシュウムなどの鉱物イオン濃度の低い、いわゆる軟水がほとんどです。日本人は、硬度の高い水はあまり好まないようで、自由律の俳句を詠みながら全国を旅した山頭火も軟水の名水を好んだといわれています。不純物が無ければよいかというと、蒸留水が味気ないように適度の不純物が必要なようで、その濃度の好みが民族によって異なるのでしょう。不純物をとことんまで除いたものは純水と呼ばれ、ITを支える半導体の生産にきっても切れないものです。半導体には水の味の好みは無いんですね。

氷河の雪解け水の青さだけでなく夕焼けの赤も印象的だったカナデイアンロッキー(カナダ)

2007-12-09 10:13:57 | 世界遺産
 ユングフラウ・ヨッホのスフィンクス展望台からはユングフラウなどの山に加えてアレッチ氷河が眺められ、この氷河を含めて世界遺産になっています。地球温暖化であちらこちらで氷河の縮小がニュースになっていますが、氷河が削った岩肌の色の影響で、独特の魅力的な色の湖水がレイク・ルイーズです。今回は、レイク・ルイーズのあるカナデアン・ロッキーを紹介します。

 レイク・ルイーズはヴィクトリア女王の皇女でカナダ総督に嫁いだルイーズ・キャロライン・アルバータの名前を取ったもので、アルバータ州の名称も彼女の名前に拠るものです。バンフ国立公園の中にあり、空港のあるカルガリーから200kmほどの距離にあります。湖のほとりには、カナダ太平洋鉄道が建設したシャトー・レイク・ルイーズが唯一のホテルとして建っています。このホテルに宿泊しないと見られない、レイク・ルイーズの朝や夕景を楽しめるので有名です。ただ、4つ星のホテルは敷居が高く、ツアーに乗らない個人客の場合、ちょっと足の便が悪く、宿泊はできませんでした。個人旅行であった筆者は、バンフを基地にして、半日のバスツアーに参加しました。このツアーは午後の半日で、バンフの周辺を回った後に、レイク・ルイーズを訪問して終了します。なかなか便利なのですが、参加してみて分かった欠点がありました。ホテルの前庭からレイク・ルイーズとその向こうに氷河の見える絵葉書的な風景は西向きなんですね。そうすると、夕方に訪れる時には、完全に逆光になってしまって、写真を撮るのが難しいのです。

 カナデジアン・ロッキーの観光拠点は、南のバンフと北のジャスパーが有名で、夏の間は両地点間を結ぶバスも走っています。途中にコロンビア氷河などの観光もできるようですが、筆者が訪問したときには、10月でこのコースを路線バスでたどるのは無理でした。基地としたバンフ周辺を散策したのですが、町の中を走りまわるシャトルバスがけっこう便利に利用できました。夏山とスキーの間の端境期のためか、観光客は少なかったようですが、日本からの修学旅行生の集団、それも2組もに遭遇したのには驚きでした。バンフの町には、そこで働くか近郊で働く人しか住めない規制があるそうで、そのためか静かでこじんまりして、かわいらしい町です。

町の南にはサルファー山がありロープウェイで簡単に登れます。一方、北にはノーケイ山がそびえ、町のメインストリートの背景になっています。

 夕方に、食事を終えてホテルに戻る途中の、ノーケイ山を前景とする夕焼けは見事でした。

 バンフにもカナダ太平洋鉄道が作ったバンフ・スプリングスという4つ星ホテルがあり、ボウ川を見下ろす森の中に建っています。シャトー・レイク・ルイーズが白を基調とした建物になっているのに対して、こちらはレンガ色の壁面に緑の屋根が乗っています。カナダ太平洋鉄道がケベックに建てたシャトー・フロントナックと同じ色合いです。ホテルの下を流れるボウ川を散策すると、ホテルを望むあたりに滝があります。滝といっても、斜面を流れ落ちるようなもので、通常の滝とは趣が違います。

このなんでもない滝を有名にしたのは、実はマリリン・モンローで「帰らざる川」という映画のロケ地に使われたそうです。

 バンフは国立公園内のため、空港はおろか上空を飛行することも規制されています。130kmほど東にあるカルガリーの空港が入り口となります。このカルガリーにある動物園には変わったエリアがあります。生きている動物ではなく、恐竜の模型があたかも動物園に飼育されているように展示されています。カルガリーの東に位置するバッドランドで7500万年前の恐竜の骨が見つかったことに由来しているようです。人類の起源は150~200万年程度言われていますから、50倍ほども古いことになります。人類が飛行機を手に入れてから100年ちょっと、その飛行機を飛ばす重要な技術の一つで、現代のあらゆる分野の基礎となるIT技術に至っては、もっと短い歴史しかありません。人類の200万年の歴史の中では、ほんの一瞬の出来事なんですね。

台風の傷跡も修復され美しさを取り戻した五重塔の見え隠れする室生の里

2007-12-02 10:15:57 | 日本の町並み
 山形県の酒田は豪商の本間家を生みましたが、近年では個性的な写真で有名な土門拳氏を生んでいます。今回は、その土門氏が愛してやまなかった室生の里近辺を取り上げます。

 室生は奈良県の北東よりの宇陀市の東より、最寄の近鉄大阪線の室生口大野駅からバスで6kmほどの山里です。現在でこそ室生口大野駅に停車する電車は増えましたが、筆者の学生の頃は1時間に上り下り各1本で、きわめて不便でした。大阪と名古屋、伊勢を結ぶ近鉄の動脈ですから、2階建て車両を含めて特急電車は頻繁に通過するのですが、止まってくれる電車は名張まで行く区間急行だけだったように思います。それだけ不自由な思いをしてでも訪れる価値のあるのが室生寺ではないかと思います。

 室生口大野駅で下車して少し歩いたところが、大野寺で駅名の大野はこの寺からきているものと思います。大野寺には線刻の磨崖仏が残されていて、お寺から宇陀川を挟んだ対岸の岩肌に刻まれています。15mに及ぶ巨大な像ですが、風化のためお姿を判別するのが難しいほどになっていましたが、近年修復が行われて仏像らしくなられたようです。

 さて、室生寺は駅からバスで7kmほど川沿いの道をさかのぼった場所にあり、このバスもあまり頻繁には走ってないようです。バスを降りて、橋を渡り、女人高野の石柱を右折して進むと、傾斜地に建つ伽藍の下に出ます。

室生寺は、寺院建築に興味のある人、仏像に興味のある人、それぞれの方たちを共に引き付ける数少ないお寺の一つではないかと思います。金堂内の国宝の仏像群は、土門氏の写真集でもおなじみで、特に彩色が残る十一面観音像は、本コラムの2007年10月7日号でも紹介した渡岸寺の十一面像とは違って、少し妖艶な感じのする仏様です。

 さらに、ふもとの金堂から石段を上ってたどり着く五重塔は、屋外の五重塔としては最小のものですが、凛として建つ姿はいつ見ても感動します。

今から7年ほど前に、台風によってなぎ倒された杉の大木がぶつかり、初層から五層までの屋根の壊してしまいましたが、4年ほど前に訪れた時には、元の古色は失われましたが、端正な美しさに修復された姿を見ることができました。

 仏像や古建築の修復の時に、何時も議論になるのが、創建当時の姿に戻すのか、現状の姿のまま補強や補修を行うのか、という問題のようです。創建当時といっても、残されているデータが少ないので、仏像ではX線による解析など、元の状態を推定する作業が大変なようです。現在では、設計図面や完成品の3次元解析データなど、後世に多くのディジタル化されたデータを残せる環境が整っているので、修復などは楽になりそうです。しかし、ディジタルにも劣化があるという問題が残るかもしれません。もちろん、ディジタル化された1,0のデータは不変で引き継がれるでしょうが、そのデータを図面などに表現するアルゴリズムが変わって、描画できなくなる問題です。

 これまでの日本の町並みは、過去に執筆した原稿を手直しして公開してきましたが、次回からは、新規に書き下ろす予定です。このため、これまで世界遺産の表題の頭にNを付して新規原稿を表示してきましたが、今後は共に新規のため、Nの文字はつけないことにします。