世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

ここが中国なのかと疑いたくなるビル群が建ち並ぶ上海の外灘です(中国)

2012-07-29 08:00:00 | 世界の町並み
 ベートーヴェンやショパンなどが訪れた有名なチェコの温泉地がカルロビバリでしたが、カルロビバリはかつての東欧圏最大の映画祭が催される場所でもありました。一方、アジアでは東京に並び最大級の映画祭が上海国際映画祭です。映画祭の会場となる上海を、今回は、黄浦江の西側の外灘(バンド)周辺を中心に紹介します。

 上海は、日本から飛行機で2~3時間の距離で、関西からは船で行くこともできます。最近は中国のLCCの一つ春秋航空が安い運賃を掲げて就航したことでも話題となっています。緯度的には鹿児島とあまり変わらず、11月に訪問したときは暖かいと感じましたが、冬はかなり厳しい寒さだそうです。日本からの国際線は、通常は浦東空港に到着しますが、市の東30km程の黄海に面したところにあります。市内中心部までは、バスや地下鉄で1時間ほどの移動時間です。世界初のリニアモーターもありますが、運賃が高いうえに途中で地下鉄に乗換えが必要で、あまりメリットは感じません。

 
 
 さて、今回紹介する外灘(バンド Bund)は、外国人の河岸という意味で、英語のbundは埠頭や築堤の意味です。中国表記では、居住する人間の属性を、英語では地理的な属性で命名されているのですね。黄浦江の西岸に沿って南北に1kmに伸びる外灘は、当初はイギリス租界であったところで、やがて英米郷土の租界となった後に、各国の銀行や領事館が集中して建設された場所です。戦後は行政機関は外部に移転をしましたが、残されたビル群はホテルや金融機関に利用されています。このため、19世紀頃の西欧の町並みが残され、中国とは思えない町並みとなっています。

 この町並みは、当然ながら絵になる風景なので、結婚式を控えたカップルの撮影場所になっています。同じような光景は、広州の沙面でも見ました。沙面も川中島のような場所で租界となっていて、西欧の古い建物が残り、同じような風景が広がっています。日本では、結婚式前の記念撮影は、近頃になって見かけるようになりましたが、20年ほど前に訪問したソウルでもこのような光景を見ました。プロのカメラマンが、レフ版を持った助手を伴って本格的に撮影をするのですが、足元が写らない新婦の多くがスニーカを履いていることが多いのは面白い光景です。

 
 外灘と川を挟んだ所が浦東で、こちらは高層ビルが林立する新しい町です。なかでも、球体を串刺しにしたようなテレビ塔は上海のシンボルのような存在で、外灘のオーソドックスなビルの上ににょっきりと顔を出す光景も、面白い構図です。

 
 逆に、川とは逆の方向の南南西に入ると、上海を代表する観光地の豫園があります。回遊四季の庭園の豫園も見ごたえがありますが、隣接する豫園商城の夜景もなかなかのものです。この色合いはどこかで見たことがあると思ったら、青森の「ねぶた」の山車の色合いと雰囲気が似ているように思いました。この商城の中に、上海の小籠包発祥の店があります、日本の百貨店にも出店をしていますが、蒸篭で蒸すのに時間がかかるので、朝だの列ですが、行列をしてでも食べるだけの価値がありそうです。

 上海の地下鉄は、中国の高速鉄道と相前後をして事故を起こして話題になりました。中国だけでなく高速鉄道の先進国のフランスにしても、確かに列車は速い(日本より速いことも)のですが、定時制や確実性、安全性の面で信頼性が低いような印象を受けます。また、騒音問題など環境に対する負荷も大きいようです。日本の新幹線のシステムを、諸外国に売り込む際に、システム全体としての信頼性などをもっと前面に出してもいいのではないかとも思います。ただ、いくらシステムが良くても、コンピュータでもよく問題となるヒューマンエラーは、日本人の几帳面さを前提とはできないという問題があるかもしれません。

マンホールの蓋にはシラコバトが描かれている越谷には土蔵造りの家並みが続きます

2012-07-22 08:00:00 | 日本の町並み
 高知のベッドタウンとして、JRと平行して路面電車の路線があるのが伊野でしたが、東京近郊の数あるベッドタウンの中で日光街道の宿場町の面影を残す町が越谷です。東京近郊のかつての宿場町は、再開発などでほとんど古い町並みが残されていないところが多いのですが、越谷では土蔵造りの町並みが続きます。今回は、東部伊勢崎線の越谷駅周辺の町並みを紹介します。

 
 
 越谷は埼玉県の南東部の東京都や千葉県にも近い所で、江戸時代には日光街道の3番目の宿場町として発展した町です。旧日光街道は、東武線の東側を平行して通っていて、古い町並みも旧街道沿いに集中しています。越谷の町並みは、黒漆喰の土蔵造りの商家が中心で、重々しい印象です。宿場町の町並みが残されたというより、それに付随した商家の家並みのようです。同じ埼玉県の川越の町並みと似ているかもしれません。

 
 
 土蔵の町並みの中に、石造りの蔵やレンガ造りの袖壁等があって、重厚さを増幅しているようです。ただ、どっしりとした風景の中にも、蔦の絡まる和風建築や、さらに下見板張りの木造洋館の建物などは、重々しい町並みの中で対照的に軽やかな印象です。

 町並みを散歩をしていて、足元のマンホールのふたのデザインに引き付けられることも多いのですが、越谷のマンホールには鳩が描かれています。この鳩はシラコバトで、一時期には生息数が減って越谷市でしか見かけないほどになり、天然記念物に指定されています。現在では数が増え生息域も広がったようです。

 アメリカでは国民皆保険法が合憲であるとの判決が出されましたが、日本における国民健康保険の発祥の地は越谷なのだそうです。市役所の敷地内には記念碑も建てられているようです。日本の健康保険制度は、世界に誇りうるシステムであるといわれています。高額医療も一定額以上の医療費に対して補填もしてくれます。TVをつけると、集中豪雨のように医療保険のCMが流れてうんざりしますが、日本のシステムの中では、これらの保険は不要との意見に同感です。健康保険証は身分証明書の代わりになるほど重みを持っていますが、現在のところは総背番号制が採られていないので、他の個人情報とのリンクは取れません。総背番号制はメリットとデメリットがあって、簡単には論じられませんが、導入された時はサイバー攻撃の対象にならないか心配です。

世界遺産への登録にはなりませんでしたが、ザダルの旧市街は素敵な町並みです(クロアチア)

2012-07-15 08:00:00 | 世界遺産
 2012年度の世界遺産委員会は6月下旬から7月上旬にかけてロシアのサンクト・ペテルブルグで開催され、新たに26件の登録が承認されました。今年度は日本からのエントリーは無く、富士山と鎌倉とを来年に水洗する予定です。さて今年の23件ですが、バリ島の遺産以外は未訪問で、バリ島についてもニアミス程度しっかりとは訪問していません。そこで、今回は本年度に落選をした候補地の一つのクロアチアのザダルを紹介しましょう。

 ザダル(もしくはザダール、ザラ)はクロアチアのアドリア海に面した海岸線のほぼ中央部に位置する港町です。クロアチアの首都のザグレブから、世界遺産のプリトビッチ国立公園を経由してバスで5時間程度の距離です。イタリアのアンコナからはアドリア海を横断する国際フェリーで9時間ほど、夜行なので寝ている間に着いてしまいます。

 
 世界遺産の候補となった古代ローマのフォーラム跡がある旧市街は、郊外バスのターミナルから歩いて20~30分ほど離れています。旧市街の入り口には、翼付きのライオン像が見下ろしているノヴァ門があり、門の手前のヨットハーバーは、紺碧の海をバックに多くのヨットやクルーザが停泊しています。旧市街はアドリア海に突き出た半島にあって、門はその付け根のところに関所のように建てられています。開口部を車が通れるほどの大きな門ですが、正面から見たときに、全体の面積に対して開口部が小さいために、ちょっと威圧的に感じます。

 半島は北に向かって延びていて、幅は400m程、長さは1km程なので歩いて回れる距離です。ノヴァ門があるのは西側のアドリア海側になり、入り江状になっている東側には港があり、クロアチアの島々に行く船が出入りをしていました。この港には、波が来ると音が出るシーオルガンという楽器?があって、波で押された空気がパイプオルガンのように音を出します。ちなみに、イタリアに行く国際フェリーは、旧市街ではなく町から5~6km程も離れたアドリアかに面した外港から出ています。

 
 
 さて、旧市街ですが、ノヴァ門の近くは小高い丘のようにな公園になっていたように思いますが、その中に神殿の柱の残骸のようなものが1本だけ立っています。ここから北に向けて、教会や遺跡などが所狭しとあって、ここがなぜ世界遺産に登録されなかったのか不思議な感じがします。ナドロニ広場の時計塔は、小さいけれど上部に鐘も吊るされていてかわいい感じです。聖マリア教会と修道院は女子修道院でシンプルなファサードに清楚さを感じます。聖ドナト教会の円形礼拝堂は9世紀のロマネスク様式で、そばの鐘楼もシンプルな感じです。

 
 
 世界遺産の候補になったフォーラムには人面が彫られた基石のようなものや「恥の柱」と呼ばれる罪人を縛った柱が1本立っています。こちらの柱は、ノヴァ門近くの柱にあった表面の凹凸が無くって、のっぺりした感じです。回廊のある教会や礼拝堂の外部の後方の連続アーチが美しい教会もありましたが、名称不明です。アーチの美しい教会は、天文航海術を確立した聖クルシュヴァンを記念して建てられた聖クルシュヴァン教会だったかもしれません。紹介した以外にもいくつかの教会や、町並みもなかなか美しいところが多かったのですが、記録に残していなかったので記憶が整理できません。

 ザダルからイタリアのアンコナまでのフェリーに乗船をすると、アンコナ到着前に船内でパスポート・コントロールが行われます。EU圏の人たちは簡単に済んでいるようですが、それ以外の場合は時間がかかります。無線電話でパスポートの番号を伝えて、陸地側でチェックしているようです。無線といえば、最近ではレストランなどでクレジット・カードを使うと、昔のようにカードを持って行ってしまうのではなく、無線端末でその場でオーソライゼーションしてくれます。見えないところで、クリーム・スキミングされる心配が少なくって好ましいのですが、無線で飛んでいるデータは暗号化されているでしょうが、ちょっと心配です。アンコナ港でのやり取りは音声ですから暗号化はされていないのでは、とも思いますが。

伊野の古い町並みも路面電車も町が生んだ土佐和紙のおかげです

2012-07-08 08:00:00 | 日本の町並み
 路面電車も運行する伊予鉄が、JRの平行路線に接続駅を設けているのが、愛媛県の郡中でしたが、四国でもう一つ県庁所在地に路面電車を運行するのが土佐電気鉄道(土電)です。この土佐電気鉄道が高知市内から西に伸びていき、終着駅はJRと並行する接続駅の伊野駅です。今回は、高知のベッドタウンに古い町並みの残る「いの町」を紹介します。

 伊野は、高知市の西10km程の町で町村合併によって、行政名はひら仮名表記の「いの町」となっています。本数の少ないJRにだけではなく、土電によって高知市内への足があるので、ベッドタウン化していますが、車による通勤が多く、土電の鉄道経営は苦しいのだそうです。ところで、この土電は高知では「とでん」と発音しますが、東京の都電と同じ発音で紛らわしいので、全国的には土佐電とも呼ばれるとのこと。土電の伊野駅ですが、伊野という駅と、伊野駅前という2つの駅があって、その間は100mしか離れていません。JR都の接続駅が伊野駅前でこの電停から伊野方向を眺めると、単なる引込み線のように見えてしまいます。

 古い町並みが広がるのは土電の伊野駅の西側、仁淀川までの間で、伝統産業の土佐和紙を紹介する紙の博物館もこの地域にあります。伊野の和紙の歴史は1,000年を越えるそうですが、博物館では、紙漉きの体験もできるようです。古い家並みが特に集中するのは、仁淀川 畔に建つ椙本神社から東南東に伸び、紙の博物館の北側に至る通り沿いで、土蔵造りや格子を付けた家々が軒を接して並んでいます。

 
 
 この古い町並みは、和紙の博物館とは無縁ではなく、江戸時代からの和紙問屋の豪商の名残なのです。さらに、土電が伊野まで伸びたのも、生産された和紙を高知港に運ぶための交通機関としての役割が大きかったそうで、伊野は和紙あっての町のようです。

 
 
 訪問をした時には、町を挙げてのひな祭りの行事が催されていたようで、お店屋さんの前には商品が並べられ、通りに床机を並べてお休みどころができていたり、音楽が演奏されたりとにぎやかでした。電柱の飾りつけのほか、格子にくくり付けられた花器に生けられた花が印象的でした。

 紙漉き体験では、和紙の中に葉っぱなどを漉き込んで模様入りの葉書などを作るというプログラムが用意されてることが多いものです。和紙に葉っぱを漉き込むのではなくICタグを漉き込んでしまおうという技術があるのだそうです。熱や水に弱いICタグをいかにして保護するかというのがみそだそうで、案内状などに応用すれば、模様として現れてしまう2次元コードのように見栄えを損なわず、より多くの情報を仕込むことができそうです。このICタグを人間の識別用に組み込まれることだけは後免こうむりたいですが。

取っ手がストローになったコップで飲んだカルロビバリの温泉は苦かった(チェコ)

2012-07-01 08:00:00 | 世界の町並み
 温泉という地名が付いたドイツの温泉保養地で、多くの音楽家が訪れた場所がバーデン・バーデンでしたが、ドイツの隣のチェコにも音楽家のベートーヴェンやショパン、さらにゲーテなどの著名人が訪れた有名な温泉地があります。今回は、バーデン・バーデンとは姉妹都市でもあるカルロビバリを紹介します。

 カルロビバリはチェコの西の端にあって、首都のプラハから西に100kmあまり、バスで2時間半ほどの距離にあります。ドイツとの国境までは20km程度で、距離的にはプラハよりもドイツのバイロイトからのほうが近い町です。バーデン・バーデンと同様に、緑が豊かな町で、温泉街のメインストリートは谷底のようなところを通っており、両側の山の斜面にホテルなどが張り付いて建っているという感じです。筆者の出身地である神戸の奥座敷、有馬温泉の地形にも似ているかな、といった印象です。

 
 温泉は、周りのカルロリバリ山塊からの伏流水で、40~70℃ほどもあるようです。温泉は浴用だけではなく、飲泉としても利用されています。日本で飲泉といえば炭酸水のはしりとして明治期に作られた有馬サイダー(ここでも有馬との類似点です)がありますが、これと同じ利用のされ方です。19世紀に作られたコロネードと呼ばれる柱廊には、飲用のための温泉の蛇口が設けられ、自由に飲むことができます。温泉を飲むためのコップが面白い形で、最近は日本でも見かけるデザインですが、取っ手が中空でストローの役割をします。蛇口から、このコップに温泉を注いで、取っ手をくわえて飲むといったあんばいです。このコップが町中でお土産として売られています。いくつかの蛇口から温泉を汲んで飲んでみましたが、それぞれ味は少しずつ違うようですが、基本的には苦い!といった味です。


温泉は、入浴することと飲むこと以外にも見るという楽しみも用意されていました。間欠泉です。別府や諏訪で間欠泉が見られますが、全て野外にあります。カルロビバリの間欠泉は、コロネードの中にあり、3階まで吹き抜けで、天井部がドーム状になった空間の中央のプールに噴出口があります。閉じた空間に温泉が吹き出るので、周りの空気が変わったような気がしたように思います。

 国際映画祭はカンヌが有名ですが、カルロビバリでも、かつての東欧圏での最大の映画祭が開催されてきました。わが国も1954年から参加しており、筆者が訪れた12年前にも、題名は忘れてしまいましたが、日本映画のポスターが貼られていました。今年の開催が6月下旬から7月上旬にかけてですから、、訪問した7月上旬は、ちょうど開催期間中だったのかもしれません。

 温泉と聞くと、ついつい硫黄系のガスで物が錆びると思ってしまいます。電気の分野では、接点が錆びるとトラブルの原因になるので、硫黄の匂いはネガティブな印象です。導電率の高い銀の合金が使われてきましたが、銀は硫化銀になり易く、そうなると不具合の元です。最近は酸化や硫化に強い金の合金が使われることが多いようですが、その材料にレアメタルが使われ、最大産出国の輸出規制による価格高騰が困った問題です。