
温泉津は、島根県の中央東寄りの海に面した太田市の一部です。最寄りの駅は、JR山陰線の温泉津駅で、温泉街は駅からいったん西に海岸線まで出た後に、東にぐるりと回ったところで、約1.3km、20分くらいの距離にあります。温泉津は、石見銀山の積出港として栄えた歴史を持ち、駅からの道が海岸線に出たあたりが深い入り江の奥にある港です。




温泉街は500mほどで、その中央あたりに共同浴場が2つあります。元湯泉薬湯と薬師湯で、特に筆者が入浴した薬師湯は日本温泉協会の審査でオール5評価を獲得したそうです。お湯は、少々熱めだった様な気がしますが、それ以外の記憶があまりありません。また、元湯泉薬湯と道路を隔てた向かいには浄土真宗の在俗の篤信者であった浅原才市の像が置かれてあります。
温泉街の入り口付近には、400年続いた内藤家の庄屋屋敷があります。内藤家は、毛利氏が温泉津に築城をした時に奉行として赴任し、その後は庄屋を始め廻船問屋や酒屋などを営んできた名家です。現在も、子孫の方が住んでおられるので非公開ですが、道路が微妙にカーブをしたあたりに長屋門を構えた塗籠の母屋が外からも眺めることができます。





温泉津が積出港となっていた石見銀山は、17世紀前半の最盛期には世界の銀の1/3を産出していたと推定されています。しかし、現在では、商業的に成り立つような銀含有量の鉱脈は掘りつくして廃鉱になりました。銀は、大部分が工業用で、かつては写真用に大量に使われましたが、現在はデジカメの普及で写真分野での消費量は減ってきています。IT分野でも銀の消費量は大きく、今後も増えていきそうですが、大部分の銀が回収されることなく使い捨てられるため、世界の銀資源は窮屈になっているそうです。かつて、写真を現像した後に使う定着液には多量の銀が溶け出していたので、回収して再利用されましたが、レアメタルと同様に、電子機器から銀をリサイクルしなければならなくなるのではないでしょうか。