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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

studiosalt 番外公演 初期作品記録映像上映&リーディングVol.1 旗揚げ公演『父の骨』

2019-05-30 | 舞台

*椎名泉水作・演出 公式サイトはこちら 神奈川県立青少年センター2階HIKARI 31日(金)14時、19時30分公演あり 1,2,3,4,5,6,6`,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21
 studiosalt(スタジオソルト。以下ソルト)が番外公演として、初期作品記録映像上映&リーディングと銘打った公演を2か月連続して行う。第1回の今夜は、旗揚げ公演の演目『父の骨』(公式サイトの記録)である。まず「記録映像上演&リーディング」という形式が、今回の眼目のひとつである。リーディング上演前にロビーで当時の映像を流すのか、上演後少し時間をとり、映像の一部を披露するのかと予想したが、そのどちらでもない。明日も公演があるので、詳細を書くのは控えるが、ひと言でいえば、映像とリーディングの「同時上演(上映)」という非常に珍しい趣向である。驚くほど自然であり、当時を知る人にとっては懐かしく、はじめて見る者にとっては新鮮な体験であり、15年の月日を経てなお生き生きとした劇世界がスクリーン上にあり、同時に目の前の俳優の舞台にも存在するという稀有な劇空間を構築したのである。

 本作は、椎名泉水が初めて書いた戯曲とのこと。60分の短編であるが、劇中の台詞や場面に(お弁当にバナナが入っている、動物園のふれあい広場のウサギたちの扱い等々)、その後の椎名の作品に結びつくところがいくつもあり、自分の知らないソルトの世界を年月を遡って味わうことができた。

 父の葬儀が終わり、次男と三男が遺骨を抱いて実家に戻る。そこには引きこもりの長男がおり、引きこもりサポートのボランティア氏が来訪する。登場人物4人だけの会話劇だが、三兄弟それぞれの描き分け、ボランティア氏と彼らの意外なつながり、兄弟たちが終始「あの人」と呼ぶ母親のことなど、背景や事情を少しずつ自然に明かしながら、最後まですべてを明かさないところ、そこにあざとさのないことが、第一作にして椎名の劇作家としての確固たる基本的な資質として表現されていることに感銘を受けた。

 将来に対する明るい展望とまではいかないが、晴れやかで微笑ましい終幕の情景は、見る者の心を温め、柔らかくする。

 初期からのメンバー(主宰の浅生礼史、作・演出の椎名泉水)はじめ、その後に入退団の俳優、現在活躍中の若手の加わった座組で「あのときのソルト」から「今のソルト、これからのソルト」を体験する今回の企画は、ソルト歴2006年冬の横濱リーディング「福田恆存を読む!」からの自分にとって、大いなる収穫となった。

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