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因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

コマツ企画『動転』

2008-10-04 | 舞台
*こまつみちる作・演出 公式サイトはこちら 新宿シアターモリエール 5日まで
 ブラジルミナモザの公演に本井博之が客演しており、いずれも言葉にしがたい印象をもった。本拠地コマツ企画は、これが初見になる。

 ☆明日の千秋楽も2回公演があります。ここから先はご注意くださいまし☆

 いわゆるバックステージものということになるのだろう。ある劇団の本番中のできごとだ。出演俳優が台本を無視して自分の考えを勝手に言い始めたり、作・演出家が舞台に出て来て仕切り始めたり、劇場近くの喫茶店で働く女の子を舞台に乗せたり、進行は混乱を極める。

「ショー・マスト・ゴー・オン」。いったん幕を開けたら何が何でも芝居を続けなければならない。家族のこと、劇団の内輪もめ、信じがたいアクシデント。それらすべてを大胆に、逆にせこかったり、奇跡のような出来事に救われたりしながら芝居を続ける。そのてんやわんやの大騒動に、芝居に対する愛情や、それゆえの苦しみや、ここまで人々を必死にさせる芝居というものの魅力が伝わる。まさに演劇讃歌。バックステージものの醍醐味はここにある。

 しかしコマツ企画の『動転』は、いささか度を超している。芝居作りの現場のことはわからないが、外部のものからも想像しやすいことから、内輪ネタ、高名な演出家を揶揄したり、劇評ブログを書く者に対する鬱憤(批判の域には達していないが、ちょっと背中がヒヤリとした。こんなふうに思われているのですね)などなど、さらに終演後1分もしないうちに「アフタートーク」が始まったが、それも周到に準備された芝居の一部であり、これも「アフタートーク」というものに対してチクリと刺すような意地悪さがあるのだった。
 
 作者は芝居やそれに関わる人々(作者自身を含め)を愛しているのか、それとも憎悪しているのか。観客の読みが追いつかないくらい、舞台はめちゃくちゃになっていく。その様子は確かにおもしろいが、劇団の人間関係を家族というものに転化した作りが、あまりの混乱ぶりにぼやけてしまったように思える。バックステージものは、ある意味で手堅い舞台作りができる。それを敢えてぶっ壊してしまったのはどんな意図があったのか。

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