
*公式サイトは こちら 吉祥寺シアター 23日まで
Dプロに続いて、川口典成(ドナルカ・パッカーン主宰)演出のEプロを観劇した。川口の演出作品は2019年秋、森本薫『女の一生』を観劇している→2/23追記。川口が体調不良のため、川村毅が演出を行ったとのこと。感染症によるものではない由。どうかお大事に…。
Dプロに続いて、川口典成(ドナルカ・パッカーン主宰)演出のEプロを観劇した。川口の演出作品は2019年秋、森本薫『女の一生』を観劇している→2/23追記。川口が体調不良のため、川村毅が演出を行ったとのこと。感染症によるものではない由。どうかお大事に…。
『CLOUD-19』(宇吹萌作)・・・Rising Tiptoeを主宰する劇作家・詩人・演出家の宇吹萌(うすい・めい)の作品は今回が初対面である。著作『THE BITCH/名もない祝福として』(而立書房)紹介のチラシ掲載の略歴は非常に華やかだ。慶応義塾大学大学大学院で唐十郎の研究に勤しみ、文化庁新進芸術家在外派遣制度で渡米。ニューヨークで研鑽を積んで自作の翻訳・上演でデヴューを飾り、帰国してRising Tiptoeを旗揚げた。2013年『THE BITCH』で第3回宇野重吉演劇賞優秀賞、2018年『おしゃべり』で第15回杉並演劇祭優秀賞を受賞している。
舞台は近未来の日本。原因不明の暗雲「CLOUD-19」によって世界の日照時間が著しく変化し、人々の日常が激変した。16時以降の外出自粛、夜間は懐中電灯の携帯が義務付けられたり、食料品の買い占めや、日光を浴びられないために心身に不調が現れたりなど、世界が混乱している。歯科医の恋人がいながらリモートお見合いに精を出す女に、彼女を監視するマンションの隣人、結婚相談所の担当者が絡む。この1年の病理蔓延がわたしたちの日常をどのように変容させ、今なお影響を及ぼし続けているかを否応なく突きつけられる。登場人物のキャラクターや造形はやや極端ながら、自己中心になり、相手に対して疑心暗鬼になり、その結果関係は決裂し、孤立してしまう様相は決して近未来のSFではない。
『ロマンス』(川村毅作)・・・昨日の『闘う女』の印象が強烈だったため、本作にも「何かが起こる。それもあっという間に」と気構えつつも大いに期待した。知り合って間もない男女。待ち合わせに遅れた男性が発したごく普通の言葉に対して、女性は過剰に反応、反論する。たちまち閉口するかと思いきや、男性も存外手強い。丁々発止のやりとりのあいだ、下手ベンチに背を向けて寝ているホームレス(林田一高/文学座)が気になってしかたがないのだが、観客の期待を背中に感じ、最後の最後に一声を発するのは大変なプレッシャーかと想像する。
3本の戯曲のうち、最初と最後の作品はやや長めであり、川村毅の作品はそのあいだで強烈なスパイス、飛び道具的な役割を果たして客席をリラックスさせる。
『【H+】アポトーシスしてみた』(三橋亮太作)・・・三橋は演劇団体「譜面絵画」代表で『新津々浦駅・北口3番バスのりば』 がかながわ短編演劇アワード2020「戯曲コンペティション」最終候補作品に選出されている。
喪服に近い黒い衣裳を着た男女5人が沈んだ様子で椅子にかけている。ひとりの男が舞台中央に歩み出て、来場御礼に始まり、状況の説明を始める。客席も少し明るくなり、これまでの作品とは趣が異なることを予感させた。5人はそれぞれ上手に移動したり、最初の男のように舞台中央で客席に語ったりする。そのタイミングの加減が絶妙なようでどこかずれていたり、各人が話す内容を照合しても何がほんとうなのか、どこに落としどころがあるのかがわからない。その揺れ動く空気や、軽く翻弄されている感覚が面白い。できるならもう一度じっくり観劇し、戯曲を読んでみたい作品である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます