因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

モナカ興業#6『夜が歩く』

2009-03-17 | 舞台

*フジノサツコ作 森新太郎演出 公式サイトはこちら 新宿ゴールデン街劇場 8日で終了 
 どういうわけかモナカにはまってしまった。(1,2)今回も「夜が歩く」という意味のよくわからないタイトルで、しかも新宿ゴールデン街劇場である。わくわくするというか、ぞくぞくするというか。

 伊勢丹を過ぎて花園神社の裏手の小道、交番の先に劇場がある。暗い通りに小さな店が軒を連ねた様子はまるでドラマを見ているよう…。地下の劇場は40人くらいのキャパシティだろうか。しかし入った瞬間に温かさが感じられ、緊張が解ける。当日リーフレットには「この物語はフィクションです」と記されている。登場人物はオルガ、マリー、ドラはじめ外国名の女性がほとんどで、最後にパブロの名前がある。例によって本作についての作者の解説も挨拶文もなく、古いホテルかレストランの一室で、黒い衣裳に顔を白く塗った女性たちがカードに興じる(しかしまったく楽しそうではない)様子に客席は戸惑うばかり。しかしこの小さな空間では逃げ場はなく、どうみればいいのか、手がかりもないまま1時間少しの時を過ごす。

 女たちは皆パブロという男に関わりがあり、互いにパブロの第一の恋人であると主張してやまず、カードゲームで決着をつけようとしたり、挙げ句殴り合いの殺し合いになったり(しかし誰も死なない)ととりとめがなく、しかも結論ははっきりしない。どうしようもなくパブロに惹かれて身動きのできなくなった女たちの壮絶な戦いとでも言おうか。この「パブロ」とは画家のピカソのことと思われるが、当のパブロは冒頭と終幕に無言で舞台を横切るだけである。「夜が歩く」の意味がわからないまま、夜のゴールデン街を歩いて帰路に着く。穏やかで静かな、いい夜になった。

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