メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

愛情物語

2020-10-22 17:50:27 | 映画
愛情物語 ( The Eddy Duchin Story、1956米、123分)
監督:ジョージ・シドニー
タイロン・パワー、キム・ノヴァク、ヴィクトリア・ショウ
 
第2次世界大戦前後、ニューヨークで活躍、人気を集めたピアニスト、エディー・デューチンの生涯に基づいた物語。この時期から戦後数十年の間、好まれたパーティ、レストランなどで演奏された音楽ジャンルの人で、ジャズ映画「上流社会」にもあるように、ジャズでもこういう部分はあった。
 
薬剤師になるのがいやでニューヨークにやってきたエディ(タイロン・パワー)は、レストランを経営するマージョリー(キム・ノヴァク)に認められ、仕事を伸ばしていく。やがて二人は結婚し、子供ができるが、産後に彼女は死んでしまい、エディは息子を預けて海軍へ。終戦で帰ってくると、息子はチキータ(ヴィクトリア・ショウ)になついていて、エディとは打ちとけない。エディとチキータの緊張したやりとりが続く中、エディは不治の病にかかっていることがわかり、息子とどう和解するか、、、
 
こういう流れの中に、エディが弾いている音楽がうまく使われる。ショパンのノクターン作品9の2、マンハッタン、ブラジルなど。中でもこのショパンはサントラで「To Love Again」というタイトルで大ヒットした。私が中学生のころ、ラジオで頻繁に流れたから、ショパンのピアノ曲の普及に貢献しただろう。ここで弾いているカーメン・キャバレロは、このジャンルで人気を集めていたし、他にもロジャー・ウィリアムスやラス・ヴェガスで派手な感じで人気を集めたリベラーチェなど、多くの奏者がいた。その後、リチャード・クレイダーマンなどにもつながったのではないだろうか。
 
実は私も、この曲とこれをフィーチャーした映画がこれ、ということはよく知っていたが、なぜか映画そのものは見ずじまいだった。見るほどでもないだろうと思っていたが、今回見てみると、軟弱ではなく、案外この主人公が妻の死、戦争、自身の病という運命に翻弄されながら生きていくストーリーを見るものに的確に届けることに成功している。
 
場面場面で人物の台詞のやり取りを細かく、長くせずに、出来事が人を動かしていくという演出が、見事にはまっていた。
 
タイロン・パワーはこういう深刻さが表に出てこない役にぴったりでし、私が好きなキム・ノヴァクも表出しすぎない美しさはまさに映画向き。ヴィクトリア・ショウの冷静さとそれに対照的なラストも光った。
画面はテクニカラー? 戦後のこの時期、こういうきれいな画面は、まさにアメリカ。


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