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Herrick, "Night-Piece"

ロバート・へリック (1591-1674)
「夜の歌、ジュリアに」

ホタルが君に光を貸してくれますように。
流れ星が君について来てくれますように。
そして妖精たちも、
小さな目を
火花のように輝かせながら、君といっしょにいてくれますように。

鬼火がまちがった道に君を導きませんように。
ヘビやアシナシトカゲに君が噛まれませんように。
歩いて、来て、
立ち止まらずに。
こわい幽霊なんていないから。

暗闇の通せんぼなんて気にしないで。
月が居眠りしてても大丈夫。
夜の星が、
君を照らすから、
数えきれないろうそくのように。

だから、ジュリア、お願い、
ぼくのところに来て。
銀色に輝く足をした
君に会えたら、
ぼくは、君に魂を注ぐんだ。

* * *

Robert Herrick,
"The NIght-Piece, to Julia"

Her eyes the glow-worm lend thee,
The shooting stars attend thee;
And the elves also,
Whose little eyes glow
Like the sparks of fire, befriend thee.

No Will-o'-th'-Wisp mislight thee,
Nor snake or slow-worm bite thee;
But on, on thy way
Not making a stay,
Since ghost there's none to affright thee.

Let not the dark thee cumber:
What though the moon does slumber?
The stars of the night
Will lend thee their light
Like tapers clear without number.

Then, Julia, let me woo thee,
Thus, thus to come unto me;
And when I shall meet
Thy silv'ry feet
My soul I'll pour into thee.

* * *

まず、次のような状況を思い浮かべてみる。

電球などないので、昔の夜は、現代の夜よりも
はるかに暗かったはず。(特に都市部など、
オイルなどによる街灯があるところもあったが。)

舗装されていない道が、もちろん今より多かったはず。
(私の小さい頃、1970年代ですら、少なくとも
うちの近所の道はみな舗装されていなかった。)

TVなど、今では当たり前の娯楽も当然なかった。

そんな夜の歌。

たとえば、現代において、夏にわざわざキャンプなどを
して創出する非日常的な雰囲気と、そこからくる、
ちょっとドキドキした気分を感じてもらえれば。

もちろん、若い頃の恋愛からくるドキドキ感(の記憶)に加えて。


By David Baird
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Midsummers_Eve_
from_the_Dickie_Wood_-_geograph.org.uk_-_852372.jpg

* * *

以下、訳注。

1-7
祈願のMayを各節、各文の冒頭に補って読む。
語順も直して、[May] the glow-worm lend thee Her eyes など。

8 on(前のもの)
= go on[ward] (OED 9b)。

11 cumber
困らせる(OED 2)。道をさえぎる(OED 3)。
動きの邪魔をする(OED 4)。

16 woo
この行だけで見ると、「求愛する」(OED 3)。
次の行の to come unto me とつながって、
「お願いする、誘う」(OED 4)。
詩ならではの改行を利用して二重の意味を
もたせている。

17
Thus, thusの連続は、擬音語的に、ザッ、ザッ、
という足音をあらわすためのもの。Herrick,
"His Return to London"も参照。

このほか、thusは、剣で人を傷つけたり
刺したりするときの音としても使われる。
Herrick, "To Dianeme" ("Thus, thus to wound,
not kill outright")など。

Dryden, Tyrannick Loveでも、暴君Maximinが
反逆した臣下Placidiusを、次のようにいいながら
刺し殺す。

Thus, Traytor, thus; and thus. . . .

(つまり、こういいながら、三回刺している。)

18-20
あえて書かないが、ここの意味(の半分くらい?)は、
そっち方面のこと。はっきり書かず、woo, feet, intoで
思考/連想をさりげなく誘導するかたちにしている。
そこに下のsilv'ryを重ね、少し幻想的な雰囲気に。

19 silv'ry
= silvery
銀色とは、輝くほどの白(OED 12)。
あるいは、月あかりの色(OED 6, 16bの例文など)。
デ・ラ・メアの「銀」(de la Mare, "Silver")も参照。

* * *

リズムについて。

基調は、ストレス・ミーター(四拍子)。



この詩のかたち(と、祈願文でかためた内容)は、Jonsonの
The Gypsies Metamorphosed のなかの歌
("The faery beam upon you")から借りたもの。

The faery beam upon you,
The stars to glister on you;
A moon of light,
In the noon of night,
Till the fire-drake hath o'ergone you!

* * *

英文テクストは、The Hesperides & Noble Numbers:
Vol. 1 and 2 (1898) より。
http://www.gutenberg.org/ebooks/22421

* * *

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