goo

Shelley, "To a Skylark" (14-21)

パーシー・B・シェリー(1792-1822)
「ひばりに歌う」 (14-21連)

結婚の合唱も、
勝利の歌も、
君の歌に比べれば、みな
中身のないいきがり、ほらのようなもの。
はっきりわからないが、そこには必ず何かが欠けている。
(66-70)

源には何がある?
君の楽しげな歌の源には?
どんな野原、波、山?
どんな姿の空、平野?
仲間に対するどんな愛? 苦痛に対するどんな無知?
(71-75)

君の透明で鋭い歓びは
疲れることを知らない。
不満やいらだちの影すら
けっして君には近づかない。
君は愛する・・・・・・そして愛に満ち飽きる悲しみを知らない。
(76-80)

目覚めていても、夢のなかでも、
君は知っているにちがいない、
死がより真正で、より深いものであると。
ぼくたち人間が夢見るより、はるかに正しく、深いものと。
でなければ、君の歌声はそのように、水晶の川のように、流れ出ないはずだろう?
(81-85)

ぼくたちは過去ふりかえり、未来を望む。
そして、そこにないものを求めて、病み、衰える。
心の底から笑っているときにも、
どこかに痛みを抱えている。
ぼくたちのもっとも美しい歌は、もっとも深い悲しみを歌う。
(86-90)

でも、もしぼくたちに、
憎しみ、傲慢、恐れをあざけることができないなら、
生まれながらにしてぼくたちは
涙を流す運命にあるのなら、
そもそも楽しみ、歓ぶ君の歌は聞こえてこないはずではないか。
(91-95)

どんなメロディやリズム、
どんな心地よい音より、
書物に記された
どんな宝より、
君の歌は詩人に多くを教えてくれる。大地をあざける君!
(96-100)

半分でいいから教えてほしい、
君の頭のなかにあるはずの楽しみ、歓びを。
そうすれば、狂いつつ調和するメロディが
ぼくの口から流れ出て、
すべての人々に聞こえるだろう。そう、今、ぼくが聞いているようなメロディが。
(101-5)

* * *
Chorus Hymeneal,
Or triumphal chant,
Matched with thine would be all
But an empty vaunt,
A thing wherein we feel there is some hidden want.
(66-70)

What objects are the fountains
Of thy happy strain?
What fields, or waves, or mountains?
What shapes of sky or plain?
What love of thine own kind? what ignorance of pain?
(71-75)

With thy clear keen joyance
Languor cannot be:
Shadow of annoyance
Never came near thee:
Thou lovest--but ne'er knew love's sad satiety.
(76-80)

Waking or asleep,
Thou of death must deem
Things more true and deep
Than we mortals dream,
Or how could thy notes flow in such a crystal stream?
(81-85)

We look before and after,
And pine for what is not:
Our sincerest laughter
With some pain is fraught;
Our sweetest songs are those that tell of saddest thought.
(86-90)

Yet if we could scorn
Hate, and pride, and fear;
If we were things born
Not to shed a tear,
I know not how thy joy we ever should come near.
(91-95)

Better than all measures
Of delightful sound,
Better than all treasures
That in books are found,
Thy skill to poet were, thou scorner of the ground!
(96-100)

Teach me half the gladness
That thy brain must know,
Such harmonious madness
From my lips would flow
The world should listen then--as I am listening now.
(101-5)

* * *
以下、訳注。

66-70
なぜ結婚の歌、勝利の歌には欠けるところがある?
これという答えはなく、このスタンザのとらえ方は読者の
想像に委ねられている。個人的には、結婚や勝利を
祝う儀式/儀礼の際に、歌がお約束のように歌われることが
問われているのかと。つまり、本当に本当にうれしく
楽しい時には勝手に、自由に、歌や喜びの声が
ほとばしり出るはずだから、儀式的/儀礼的に
歌われるときの歌は、本当はうれしくも楽しくもないことを
あらわす、ということかと。(考えすぎ?)

以降、100行目まで、ひばりの世界と人間の世界が対比される。

76
超現実的な表現: 透明で鋭い歓び
ひばりの声のこと。

80
(特に男性は)愛に満たされると飽きる、というのが
詩によく見られる考え方。(正しいかどうかはともかく。)
たとえばキーツの「ギリシャの壺」など参照。

91-95
複雑な、一見混乱した構文(上記の訳は意訳)。
分解すると--
---
仮定節1:
私たちが憎しみなどをあざけることができるなら
(実際にはできない)

仮定節2:
私たちは涙を流すべく定められてはいないなら
(実際にはそう定められている)

帰結節:
だがなぜ、私たちにひばりの歓びの歌が聞こえるのか?
(もしかしたら、私たちには憎しみなどをあざけることが
できるのかもしれない、私たちは涙を流すべく定められて
いないのかもしれない・・・・・・。)
---

101-5
結論部: ぼくもひばりのように歌うことができたら!

103 harmonious madness
逆説あるいは撞着語法
(矛盾する言葉の組み合わせ)

* * *
英文テクストは Hutchinson, ed., The Complete Poetical Works
of Percy Bysshe Shelley
, vol. 2 (Oxford, 1914)
<http://www.gutenberg.org/ebooks/4798> より。

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトのタイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。


コメント ( 0 ) | Trackback (  )