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Shelley, "To a Skylark" (7-13)

パーシー・B・シェリー(1792-1822)
「ひばりに歌う」 (7-13連)

君が何なのか、ぼくたちは知らない。
君に似ているものは何?
虹の雲から、
そんなまぶしい雨粒は流れてこない、
君のいるところから降ってくるメロディの雨ほどには。
(31-35)

たとえば、君は詩人のよう? 思考の光のなかに
隠れていて、頼まれもしないのに
賛美歌を歌う。
すると世界中の人々が、
これまで気にとめていなかった希望と恐れで共鳴しはじめる。
(36-40)

それとも貴族の家の少女のよう?
お城の塔のなか、
愛がいっぱいで重い
魂を、こっそり夜に癒す
愛のように甘い音楽で・・・・・・そしてそれは洪水のように部屋からあふれ出す。
(41-45)

それとも金色の蛍?
木々から露のしたたる谷で、
誰のためにでもなく、
空気のように透明な光を
草花のあいだにまき散らす・・・・・・自分はその後ろに隠れつつ。
(46-50)

それともバラ? 緑の葉の
小部屋のなか、それは
あたたかい風に散らされる。
するとその香りで、
盗人たちの気が遠くなり、その羽も重くなる・・・・・・香りがあまりにも甘いから。
(51-55)

春の雨が、
キラキラ光る草に降る音、
雨に目を覚ます花々、
その他すべての
楽しげで、透きとおっていて、新しく、いきいきしたもの。でも君の歌はさらに上をいく。
(56-60)

教えてほしい、妖精または鳥の君、
どんなすてきなことを考えているの?
ぼくは聞いたことがない、
愛やワインを称える歌が、
君の歌ほど神々しい陶酔の洪水を、熱く、大きな音で流すのを。
(61-65)

(つづく)

* * *
What thou art we know not;
What is most like thee?
From rainbow clouds there flow not
Drops so bright to see,
As from thy presence showers a rain of melody.
(31-35)

Like a Poet hidden
In the light of thought,
Singing hymns unbidden,
Till the world is wrought
To sympathy with hopes and fears it heeded not:
(36-40)

Like a high-born maiden
In a palace tower,
Soothing her love-laden
Soul in secret hour
With music sweet as love, which overflows her bower:
(41-45)

Like a glow-worm golden
In a dell of dew,
Scattering unbeholden
Its aereal hue
Among the flowers and grass, which screen it from the view:
(46-50)

Like a rose embowered
In its own green leaves,
By warm winds deflowered,
Till the scent it gives
Makes faint with too much sweet those heavy-winged thieves:
(51-55)

Sound of vernal showers
On the twinkling grass,
Rain-awakened flowers,
All that ever was
Joyous, and clear, and fresh, thy music doth surpass:
(56-60)

Teach us, Sprite or Bird,
What sweet thoughts are thine;
I have never heard
Praise of love or wine
That panted forth a flood of rapture so divine.
(61-65)

* * *
以下、訳注。この箇所では、想像がかなり暴走している。

33-35
超現実的な表現:
虹の雲からまぶしい雨粒/メロディの雨
- 虹の光は雨粒ではない。
- ひばりの声は雨ではない。

虹の光を雨にたとえ、それをさらに
ひばりの声と比較して、ひばりの声のほうが上、といっている。
(が、もう少しシンプルに、ひばりの声が、下の画像のような
虹の光にたとえられている、という理解でもいいかと。)


By jannefoo (Janne V)
http://jannefoo.deviantart.com/art/
BowRain-34239662?fullview=1
http://commons.wikimedia.org/wiki/
File:Rainbow_panorama.jpg?uselang=ja
(それぞれ改行を入れています。)

36-40
32行目の「君に似ているのは何?」という疑問に対する答えとして、
まずひばりを詩人にたとえる。ポイントは、「ひばりは見えないが、
その大きな声が聞こえる」ということ。(第3スタンザ以降、この点が
一貫している。)詩人は見えないが、その歌には大きな影響力が。

37
超現実的な表現:
思考の光
- 思考は光ではない。

41-45
今度はひばりを貴族の家の少女にたとえる・・・・・・
よくも悪くもすごい比喩。ひばりの声=
貴族の女の子が恋する思いを託して歌う歌。
(正しい反応は、「はぁ?」くらいかと。想像力への
敬意をこめて。)

再度、ポイントは、ひばり(少女)は見えないが、
その大きな声(少女の歌声)が聞こえること。

45
超現実的な表現:
愛のように甘い音楽/音楽(または愛)が洪水
- 愛は音楽ではない
- 音楽(または愛)は水ではない。

45行目の which の先行詞が love なのか、
love のように甘い music なのか、あいまい。
「愛と同じくらい甘い音楽」と比較されているので、
いわば一体化したものとして両方を先行詞として
とらえるべきかと。


By ceridwen
http://www.geograph.org.uk/photo/752031
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cathedral_
tower_above_Bishop%27s_Palace_-_geograph.org.uk_-_752031.jpg
(画像は、貴族の宮殿ではなく主教の屋敷。また奥の塔も聖堂の
ものとのこと。さらに、重なって見えるが手前の屋敷と奥の聖堂は
別の建物。)

46-50
今度はひばりを蛍にたとえる。超現実的に、
ひばりの声=蛍の光。再度、ポイントは、ひばり(蛍)は見えないが、
その大きな声(光)が聞こえること。

48-50
超現実的な表現:
蛍が空気の色の光をまき散らす
- 空気に色はない。

51-55
今度はバラにたとえる。超現実的に、
ひばりの声=気が遠くなるほど甘いバラの香り。
(ふたたび、正しい反応は「はぁ?」かと。親愛の情と
想像力への敬意をこめて。)再度、ポイントは、ひばりは
見えないが(バラは葉の小部屋に隠れているが)、
その大きな声が聞こえること(香りがあふれてくること)。

55
盗人たちとは風のこと。風が泥棒なのは、バラの花を
散らすから、バラから花びらを奪うから。また、羽が重いのは、
香りで気が遠くなり、神経が麻痺して、ということ。

61-65
このスタンザから次の展開へ。空から降りそそぐひばりの
歌の原動力は何か、ひばりが何を考えているのか、
何について歌っているのか、を人間の世界と対比しつつ
数スタンザにわたって問う。

63-65
ひばりの歌と愛やワインを主題として人が歌う歌を比較し、
ひばりの歌のほうが上、ということ。

65 pant
大きな音を立てて熱い空気や蒸気を出す(OED, 1d)。
(これは自動詞としての定義だが、これを他動詞的に
援用しているものと思われる。通常の「あえぐ」とか、
「息切れ」とか、そのようなマイナスなニュアンスは
文脈にあわない。)

65
超現実的な表現(何重にも):
愛やワインを称える歌は、(ひばりの歌のように)神々しい
陶酔の洪水を、熱く、大きな音で流さない
- 陶酔は洪水ではない
- 陶酔は音ではない
- 歌は洪水を流さない
- ひばりの歌は熱い陶酔の洪水ではない

* * *
英文テクストは Hutchinson, ed., The Complete Poetical Works
of Percy Bysshe Shelley
, vol. 2 (Oxford, 1914)
<http://www.gutenberg.org/ebooks/4798> をベースに
編集したもの(編集中)。参照しているのは以下のもの。

Shelley, The Major Works, ed. Leader and O'Neill
(Oxford, 2003).

---, Shelley's Poetry and Prose, ed. Reiman and Fraistat
(Norton, 2002).

* * *
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