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イギリスの魔女裁判 (魔女と悪魔の性的関係)

イギリスの魔女裁判
(魔女と悪魔の性的関係)

尋問されたバクトンの村のマリア・ブッシュは、それまで同様、
みずから告白した。連行されたのは月曜で、その夜と火曜の朝に
マルティン氏に、次のように話したとのこと--15年前、
・・・・・・[原文ママ]の死から3週間後、悪魔が彼女の
ところにあらわれ、彼女のからだを使用した。

Maria Bush de Bactõ In. vt ante freely.
taken on the munday confessed that night
& teusday morninge, teste Mr. Maltin,
that ye deuill did appeare to her in ye
shape of a man about 15 yer since and
3 we. after the death . . , [sic] and
had after, the vse of her body.

---
メアリー・スキッパーは、月曜から水曜まで不眠の状態に
おかれた後、白状した--夫の死後、悪魔が男の姿で
彼女のところにあらわれ・・・・・・定期的に彼女のからだを
使用した・・・・・・が、彼女はいつも彼のからだが冷たいと
感じた。

Mary Skipper . . . after watchinge frō
munday vntill weddesday . . . confessed
that deuill appeared vnto her in the
shape of a man after her husbands death
and . . . constantly had the use of her
. . . but she felt him allways cold.

* * *
C. L'Estrange Ewen, Witch Hunting and
Witch Trials (1929), pp. 301, 313.

* * *
スキッパーの証言にある "watching" とは、眠らない
よう監視すること。イギリス流の、あからさまに暴力的では
ない拷問。あからさまに暴力的でないから、ブッシュの自白に
あるように "freely" (みずからすすんで、無理やりで
なく)自白した、という体裁をとれるが、もちろんこれも
暴力であり拷問。他に "walking" (眠らせずに延々と
歩かせる)というものもあった。

確認。スキッパーは二晩徹夜させられて自白。
ブッシュは一晩目の途中から翌朝にかけて自白。

* * *
「悪魔があらわれ、魔女のからだを使用した」ということは
何を意味するか。

1.
この表現は魔女の自白に頻出する定番もの。つまり、
これは、魔女とされたひとりひとりの女性がみずから
発した言葉ではなく、取り調べの担当者が用いたもの。
性行為を婉曲してあらわすために。

取調官
「あなたのところに悪魔があらわれましたね。」

魔女
「・・・・・・はい。」

取調官
「悪魔はあなたのからだを(性的に)使用しましたね。」

魔女
「・・・・・・はい。」

このパターンで上記のような調書をつくることができる。

もちろん、背後にはイギリスの魔女裁判 (なぜ男性より
女性が)
にあるような、性や女性に関する思想・偏見が。

2.
この手の自白に「夫の死後」などという表現が
頻出することもポイント。

強制的な徹夜の後、1のパターンで、「悪魔との性行為」
というありもしないことを認めさせられた、という可能性も
あるが、別の可能性として、夫の死後に別の男性と
恋愛関係・性的関係をもっていて、取調べのなかで
その男性が悪魔とみなされるにいたった、ということも
ありうる。

取調官
「夫の死後、あなたに近づいてきた誰か男性は
いませんでしたか。いましたよね。」

魔女
「・・・・・・いました。」

取調官
「その人と性的関係をもちましたか。もったんですよね。」

魔女
「・・・・・・もちました。」

取調官
「その人は、悪魔だったのでは。そう、悪魔ですよね。」

魔女
「・・・・・・そうです。」

これで、上記の調書をつくることができる。
(魔女の答えは、英語では、みな "Yes" の一言。)

3.
スキッパーの自白にある「悪魔のからだは冷たかった」という
表現もこの手の調書の定番。つまり、

取調官
「悪魔は冷たかったのでは。そうですよね。」

魔女
「・・・・・・はい。」

ということ。

(おそらく、血が通っていてあたたかいはずの人間の
男性とは違う、という点を強調するための表現。)

* * *
つまり、上の自白に見られるのは、「悪魔は魔女と
肉体関係をもつ」という神学思想と、拷問と、
それから(おそらく)魔女とされた女性の記憶
(や、その書き換え)の、不幸な(あってはならない)
コラボ。

加えて、魔女とされた女性は、基本的に貧しく、年老いて、
幸せとはいえない人々だったので、そのような人々の
人生に対する諦観、もうどうでもいい、という感覚も
あったはず。

いずれにせよ、現実にはありえない、この悪魔との
性的関係が彼との契約の証拠、つまり女性が魔女で
ある証拠(のひとつ)とされた。

* * *
以上のような解釈は、トマス『宗教と魔術の衰退』
Purkiss, The Witch in Historyなどの文献からのもの。

(他にもいろいろな文献からの要素があるはず。
今後、思い出した折に追記。)

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を
参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
閲覧日など必要な事項を必ず記し、剽窃行為のないように
してください。


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イギリスの魔女裁判 (なぜ男性より女性が)

イギリスの魔女裁判
(なぜ悪魔への信仰は主として女性に見られるか)

女性に対する批判において、多くの場合、「女」
という言葉は肉欲をあらわす。女は死よりも
ひどい苦しみをもたらす、よい女性でも肉欲に
支配されている、などとよく言われるように。

すべての魔術は肉欲から生じる。そして肉欲は、
女においては満たされることがない。それゆえ、
この肉欲を満たそうとして、女たちは悪魔とさえ
性的関係を結ぶのである。

[I]n many vituperations that we read
against women, the word woman is used
to mean the lust of the flesh. As it is
said: I have found a woman more bitter
than death, and good woman subject to
carnal lust.

All witchcraft comes from carnal lust,
which is in women insatiable. . . .
Wherefore for the sake of fulfilling
their lusts they consort even with devils.

---
Heinrich Kramer and James Sprenger,
The Malleus Maleficarum, tr. Montague Summers.
http://www.malleusmaleficarum.org/
downloads/MalleusAcrobat.pdf

(上の引用は、それぞれ以下のように記されたページから。)
file:///C|/!!witch/part_I/mm01_06a.html (3 of 5)
file:///C|/!!witch/part_I/mm01_06b.html (3 of 4)

* * *
タイトルは英語で、"The Hammer of Witches"
(魔女をたたく鉄槌)。15世紀のドイツの書物で、
かなり広く読まれた。

イギリスの書籍ではなく、またイギリスでどれほどの
影響力があったかは未調査だが、今後の記事との
関連で掲載。性に関する偏見と無理解、抑圧と屈折・・・・・・。

* * *
過去の異国における思想・できごとなどとして関心を
惹くものを紹介しているのみで、わたし個人の考えを
反映する記事ではないので、ご理解を。念のため。
(特にこの記事については!)

英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

* * *
学生の方など、自分の研究/発表のために上記を参照する際には、
このサイトの作者、タイトル、URL, 閲覧日など必要な事項を必ず記し、
剽窃行為のないようにしてください。


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イギリスの魔女裁判 (家事のミス)

イギリスの魔女裁判
(家事のミス)

ウィリアム・レインの妻、ベネット・レインは、次のように
証言した。かつて未亡人であった時、家に来ていた
アグネス・ハードにミルクを1パイント与えた。
その際、そのミルクをもって帰るための器も貸して与えた。
その器をアグネスは2-3週間返さなかった。そんな時、
たまたまアグネスの娘が何かの連絡のために家に来たので、
ベネットはその子に「あなたのお母さんにミルク酒を作る
ミルクはあげたけど、器まであげてはいないわ」といい、
皿を返すよう求めた。そのとき、この証人ベネットは
糸を紡いでいた。

その後アグネスの娘は家に帰り、ベネットにいわれたことを
母に伝えた。アグネスは娘に器をベネットの家まで届けさせた。
この証人ベネットがいうには、器を受けとってその子を帰すと、
うまく糸が紡げなくなっており、すぐに切れてしまう弱い糸しか
できなかった(1)。

さらに、この証人ベネットは次のようにいった。また別のとき、
彼女はアグネス・ハードに2ペンス貸していたのだが、
ベネット自身も貧しかったので、教会に税を払うために
アグネスからお金を返してもらうか、あるいは他の人から
借りるかしなければならなかった。そうアグネスにいうと、
このアグネスは「今週は8シリングか9シリングを別の人に
払ってしまったので、今は返すお金がないわ」といった。
これに対してこの証人ベネットは、「今、返してくれなきゃ
ダメよ。だって今日、教会に税を納めなくちゃいけないんだから」
といった。するとアグネスは、「じゃあ誰かに借りてこなくちゃ
いけないわね」といい、実際にお金をもってきていった、
「ほら、借りたお金よ」。そこでこの証人ベネットは、
「かわりにミルクを1パイントあげるわ。いつでもいいから家に
来てね」。次の日アグネスが来て、そのミルクとバターを
もらって行った。

この証人ベネットがいうには、次の日、[クリームにするために]
ミルクの表面をすくおうとしたが、まるで卵の白身のように
伸びて巻きついてしまった。またそのミルクを火にかけると、
沸騰せず、固まって焦げ、そして嫌なにおいがした(2)。

* * *
Barbara Rosen, Witchcraft in England,
1558-1618 (1969), pp. 147-48.

- 英語テクストの掲載はさしあたり自粛(著作権の関係から)。
- 日本語訳は10年くらい前につくったもの(いろいろ未確認)。

* * *
魔術による(とされる)被害の発端の多くは、近隣の
人との日常的な交流。上の証言においては、(1)と
(2)が、アグネスの魔術による被害。ふつうの言葉で
いえば、主婦としての自分の仕事をベネットが
(何かの理由で)うまくこなせなかった、ということ。

1. キース・トマス、『宗教と魔術の衰退』流の解釈
アグネスに対して器やお金の返却を要求したベネットが、
アグネスにうらまれることをした-->アグネスが魔術で
自分に復讐した、と考えた。

2. Diane Purkiss, The Witch in History 流の解釈
ベネットは、家事における自分のミスの責任をアグネスの
魔術に転嫁。こうしてベネットは、主婦としての体面
を家族や自分に対して保とうとした。(当時、貧しい
人々のくらしは厳しかったので、小さなように見える
ミスでも、重大なことだった。)

いずれにせよ、このような実際の魔女裁判の根底に
見られるのは、「悪魔との契約」などという
おどろおどろしい、非日常・非現実的なものではなく、
いつの時代にでも、また誰にでもありそうな、社会・
地域生活上のふつうの不安。

この不安に「魔術」・「悪魔」・「魔女」などという、
善悪に関する神学的な思考の枠組み(いわば合法的に
近隣の人を攻撃する手段)が知識階級から与えられた
ことによって、魔女裁判がおこった。

(魔女裁判における被告・原告の多くは、読み書き
すらできないような、知的には受け身にならざるを
えないような、貧しく老いた田舎の女性たち。)

つまり、このような側面から見れば、魔女裁判は、
地域社会のいざこざと神学思想の不幸なコラボの
ようなものだった。(もちろん他の側面もある。)

* * *
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参照する際には、このサイトの作者、タイトル、URL,
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してください。


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イギリスの魔女裁判(魔術の定義)

イギリスの魔女裁判
(魔術の定義)

魔術とは、悪魔の助けを借りて(神の正義が許す範囲内で)
奇跡的・超自然的なことをおこなうための技術である。

あらゆる魔術の背景にあるのは、魔術師と悪魔のあいだの
同盟・契約である。このような関係で両者はたがいに
結ばれているのである。

悪魔は、彼の憎しみと悪意を思い知らせるべく、神を模倣し、
神と教会の関係を偽造する。つまり、神が神を信じる人々と
契約を結ぶように、サタンも人々と契約を結び、自分の側に
束縛しようとするのである。あわよくば、人々を神との契約から
切り離し、その栄誉を奪うために。

* * *
Witchcraft is a wicked art serving
for the working of wonders by the
assistance of the devil, so far forth
as God shall in justice permit.

The ground of all the practices of
witchcraft is a league or covenant
made between the witch and the devil,
wherein they do mutually bind themselves
each to other. . . .

Now that he [the devil] might show forth
his hatred and malice he takes upon him
to imitate God and to counterfeit his
dealings with his church. As God therefore
hath made a covenant with his people,
so Satan joins in league with the world
labouring to bind some men unto him that
so, if it were possible, he might draw
them from the covenant of God and disgrace
the same.

* * *
ヨーロッパ大陸で早くから発達していた、
神学的な魔術の定義。

* * *
William Perkins, "A Discourse on the Damned Art of Witchcraft",
The Work of William Perkins (1970), pp. 588, 593-94.

パーキンズは16世紀の聖職者・神学者。

* * *
過去の異国における思想・できごとなどとして関心を
惹くものを紹介しているのみで、わたし個人の考えを
反映する記事ではないので、ご理解を。念のため。

英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

* * *
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罪は存在しない

罪は存在しない
(1650年代の反律法主義)

神においては、酒浸り、姦通、盗みなどという行為は
存在しない。罪は人間の空想のなかにあるのみである。
光と愛をもってあなたがする行為は、たとえそれが姦通と
呼ばれるものであろうと、やはり輝き、愛に満ちている。
聖書や聖人や教会が何といおうと、あなたのうちに
あるものがあなたを咎めないのであれば、あなたが
咎められることはない。

There is no such act as drunkenness,
adultery and theft in God. . . . Sin
hath its conception only in the imagination. . . .
What act soever is done by thee in light
and love, is light and lovely, though
it be that act called adultery. . . .
No matter what scripture, saints or
churches say, if that within thee do
not condemn thee, thou shalt not be condemned.
(Lawrence Clarkson, cited in Hill 215)

---
キリストの王国は自由な王国であり、許されないような
罪は、そこには存在しない。

[I]n the kingdom of Christ, which is a
free kingdom, there is no sin . . . unpardoned.

(Richard Coppin, cited in Hill 222)

* * *
Hill, Christopher.
The World Turned Upside Down. London, 1972.

* * *
過去の異国における思想・思考として関心を惹くものを
紹介しているのみで、わたし個人の考えではないので、
ご理解を。念のため。

英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

* * *
反律法主義(antinomianism)とは、イエスの死により
(彼が神だと信じる)人の罪はみなあがなわれたのだから、
何をしてももはや罪とはならない、旧約聖書中のモーセの
律法を含むあらゆる法はすでに無効、という、上記通りの
考え方。

1650年代における信仰の自由の問題には、このような
思想を野放しにしていいか、という一面があった。

ちょうどこの頃、信仰の自由を主張していたミルトンの立場は、
反共和政府的・反社会的・暴動的な行動をとらないかぎり、
思想・信仰は自由であるべき、というものだった。

「罪びとのかしらに溢るる恩寵」のなかで、ジョン・バニヤンが
「その教えはわたしを大いに誘惑した。特に、その頃は
若かったから・・・・・・」というようなことをいっているのも、
この反律法主義について。

* * *
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富を求める者は金(かね)を抱いたまま滅ぶがいい

富を求める者は金(かね)を抱いたまま滅ぶがいい

美徳よりも金(かね)を重んじる者、名誉よりも快楽を、
英雄的な冒険よりも安全のなかぬくぬくと過ごすことを
好む者は、金を抱いたまま滅ぶがいい。快楽に溺れて
死ぬがいい。そして永遠の忘却に埋もれてしまえ。

[T]hey which preferre their money before vertue,
their pleasure before honour, and their sensuall
securitie before heroicall aduentures, shall
perish with their money, die with their
pleasures, and be buried in euerlasting
forgetfulness.

(Robert Gray, A Good Speed to Virginia [London, 1609],
sig. A3v-A4r)

* * *
3 shall
・・・・・・であるべき、・・・・・・でなくてはならない。

* * *
過去の異国における思想・思考として関心を惹くものを
紹介しているのみで、わたし個人の考えではないので、
ご理解を。念のため。

英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

* * *
17世紀初頭の、ヴァージニア植民(への投資)をうながす
パンフレットからの一節。

このようにいいつつも、経済的な利益があるということが
植民の最大の売りだった。そしてそれにつられて海を渡り、
病気、(経済的にも気候的にも)厳しい環境、ネイティヴ・
アメリカンとの抗争などでひどい目にあった人が多かった。

(以上、若干うろ覚え。)

金銭的利益を目的とする活動一般を卑しいものとみなす
伝統的・貴族的な価値観と、そのような活動が社会を動かす
ようになっていたという事実のあいだの矛盾。

* * *
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権力を握っている政府が合法的な政府

権力を握っている政府が合法的な政府

誰にしたがうべきかを考える時、誰が権力をもって
いるか、どんな権利や暴力により彼が権力の座についたか、
彼がどのようなかたちで権力をふるっているか、
などということを考えてはならない。そうではなく、
ただ、彼が本当に権力をもっているかどうかを
考えればよい。人に勝る権力をもっている者は、
それが誰であろうと、間違いなく神からその権力を
受けとっている。それゆえ、異議を唱えることなく、
あなたはみずからを彼にさし出し、心から彼に
したがわなくてはならない。

When a question is made whom we should obey;
it must not be lookt at what he is that exerciseth
the power, or by what right or wrong he hath
invaded the power, or in what manner he doth
dispence it, but onely if he have power. For
if any man doe excell in power, it is now out
of doubt, that he received that power of God;
wherefore without all exception thou must yield
thy selfe up to him, and heartily obey him.

(Francis Rous, The Lavvfulnes of Obeying the Present
Government [1649], p. 7)

* * *
過去の異国における思想・思考として関心を惹くものを
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英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

* * *
これは、1649年、チャールズ一世処刑後に樹立された
共和国政府への支持を訴えるための議論。ラウスは
神学的著作もある知識人で、政治的にも、議会の議長を
務めるなど人望のあった人。

ひどい議論のように見えるが、逆に考えるとどうか。
つまり、正当・正統ではない(ように見える)政府には、
いつでも誰でも(武装して)抵抗していいか? 政府が
正当・正統かどうかは誰が決める? そもそも武装抵抗は
正しいか?

* * *
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信仰の自由は、たがいに認めあわなくては

信仰の自由は、たがいに認めあわなくては(クロムウェル)

* * *
(1640年代の内戦中に下院議長に宛てて書いた手紙)

長老派、独立派、すべての教派が同じ信仰と祈りの精神
をもっています。この点ではみなが一致し、相違はない
はずなのですが、実際にそうではないのは嘆かわしい
ことです。信仰をもつすべての人は、本当の意味で
統一されています。これは、内面的・精神的なもので
あるがゆえに本当に栄えあることです。統一された形式に
則って信仰すること、これについては、社会の安定のため、
良心に適うかぎり、すべてのキリスト教徒が努力するでしょう。
しかし内面的な信仰にかかわることについて、わたしたちは、
同胞から光と理性に適わないことを強要されたいとは思いません。

Presbyterians, Independents, all have here the same
spirit of faith and prayer; the same pretence and
answer; they agree here, know no names of difference:
pity it is it should be otherwise anywhere. All that
believe, have the real unity, which is the most
glorious, because inward and spiritual. . . . As for
being united in forms, commonly called Uniformity;
every Christian will for peace-sake study and do,
as far as conscience will permit; and from brethren,
in things of the mind we look for no compulsion, but
that of light and reason.
(Abbott 1: 377-78; Davis 134)

---
(パトニー会談[1647] にて)

良心の自由を強く求める者たちが、何だかよくわからないが
背信だとか言って、すべての人にこの自由を与えないので
あれば、わたしにこの自由が与えられないのであれば、
わたしたちの間にあるとされる平等などがあるとは思われません。

They that have stood so much for liberty of conscience,
if they will not grant that liberty to every man, but
say it is a deserting I know not what---if that be
denied me, I think there is not that equality that
[is] professed to be amongst us.
(Abbott 1: 534; Davis 135)

---
(1654年3月20日の布告)

正当な自由を懸命に求めたのと同様、これを喜んでたがいに
与えあう心をわたしたちはもっているのか?

Have we a heart prepared to as willingly to communicate
the said Just Freedom and Liberty to one another, as we
were industrious to get it?
(Abbott 3: 226)

---
(護国卿体制下の第一議会での演説[12/9/1654])

急進派はみなこういっています、「ああ、自由がほしい!」。
だが、これを与えてみると、彼らはその自由を他の誰にも
与えようとはしません。このような状態のどこに、わたしたちが
もって生まれた自由はあるのでしょう? それはまさに相互的で
あるべきなのです。

Every sect saith, Oh! Give me liberty. But give him it,
and to his power he will not yield it to anybody else.
Where is our ingenuity? That’s a thing ought to be
very reciprocal.
(Abbott 3: 459)

---
(護国卿体制下の第一議会を解散した時の演説[22/1/1655])

人々の心の中に妙な欲望がありませんか? 彼らは、仲間たちの
良心に指を突っ込み、つねりたくってしかたがないのです。

Is there not yet upon the spirits of men a strange itch?
Nothing will satisfy them, unless they can put their finger
upon their brethren’s consciences, to pinch them there.
(Abbott 3: 586)

---
(第五王国派との会談[2/1655]にて)

なあ聞いてくれ。仲間に対する愛が足りないんだよ。わたしが
うまく仲裁しなかったら、いろんな信仰をもつ者たちが、
ナイフをもっておたがいの喉に一目散じゃないか? なあ、
再洗礼派という者たちがいるだろ。あいつらは自分と違う
信仰をもつ者の喉を、グサッ、とやりたがってる。長老派も、
長老派以外の者たちの喉をグサッ、ってな。第五王国派にしても
同じじゃないか? そういう者たちに、力を与えるわけには
いかんのだよ。

I tell you there wants brotherly love, and the several
sorts of forms would cut the throats one of another,
should I not keep the peace. . . . Why I tell you there
be Anabaptists . . . and they would cut the throats of
them that are not under their forms; so would the
Presbyterians cut the throats of them that are not of
their forms, and so would you Fifth-Monarchy-Men. It is
fit to keep all these forms out of the power.
(Abbott 3: 615)

* * *
(参考)
自由を抑圧する者に真の自由はない

* * *
過去の異国における思想・思考として関心を惹くものを
紹介しているのみで、わたし個人の考えではないので、
ご理解を。念のため。

英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

* * *
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自由を抑圧する者に真の自由はない

自由を抑圧する者に真の自由はない

* * *
(オリヴァー・クロムウェルに対するミルトンの忠言)

あなた自身の名誉を大切にしていただきたい。あれほどの
苦難と危険を乗り越えて成し遂げた自由、それをあなた自身が
踏みつぶしてしまうことがないよう、また他の者たちが、
ほんのわずかであれ、陰らせることのないようにして
いただきたい。自然によって定められているように、
他の者の自由を攻撃する者は、誰よりも先に自由を失い、
誰よりも先に奴隷になるのだから。

[H]onour yourself, so that, having achieved that liberty
in pursuit of which you endured so many hardships and
encountered so many perils, you may not permit it to be
violated by yourself or in any degree diminished by others.
. . . it has so been arranged by nature that he who
attacks the liberty of others is himself the first of
all to lose his own liberty and learns that he is the
first of all to be a slave.
(Milton, Second Defence [1654] in Complete Prose Works 4.1: 673)

* * *
(元軍人・文筆家ジョン・ストリーターの暴君クロムウェル批判)

わたしたちすべてを奴隷にするような暴君は、みずから
奴隷に過ぎない。なぜなら、彼は護衛なしでは表に出られない
からだ。彼は自分の影にも怯える。良心に苛まれて臆病に
なるのだ。プリニウスはいう、悪しき君主は身の安全のために
軍隊のなかにとどまるのだが、よき君主の身は、好意ある
人々に囲まれてこそ守られる、と。

The Tyrant himself that maketh us all slaves is but
a slave himself: for he cannot nor dare to go without
his guards, he is afraid of his own shaddow, when it
is his guilty conscience that puteth him in fear, he
calleth about him stronget guards, and crieth a plot
to colour all: Pliny . . . sayes that wicked princes
makes Arms their sanctuary, but good Princes make the
affections of their people to be their sanctuary.
([John Streater], Further Continuance of The Grand
Politick Informer [1654] 40)

* * *
(クロムウェルに関するヴェネツィアの駐イングランド秘書官のコメント)

新たに権力の座についたクロムウェルは、心労で完全に
まいってしまっています。さすがの彼も支配の座や繁栄に
つきものの不安にはかなわなかったようで、彼の心配・
気苦労は日々増すばかりです。

Since this new accession of dignity Cromwell has
looked utterly careworn, showing that he is not exempt
from the anxieties generally attendant on government
and great prosperity as his anxieties and worries
increase with every day.

(CSPV 29: 177, 31/1/1654; イタリック体の箇所は、
もともと暗号で書かれていた)

---
現在最高権力者の地位にある彼[クロムウェル]はとても
疑い深くなっており、彼には影が暗殺者に見えるほどです。
権力が彼に集中すればするほど、彼に対する人々の憎悪も
増しているからです。

[H]is present position renders him [Cromwell] so
suspicious that shadows appear substance to him,
while the more autocratic he becomes the greater
will be the hatred of the people towards him.

(CSPV 29: 188, 7/3/1654; イタリック体の箇所は、もとは暗号)

* * *
1653年12月、クロムウェルが護国卿(Lord Protector)として
イギリスの最高権力者となった時期の著作やコメント。

当時、ミルトンは外国語秘書官として政府の下で勤務。
(1652年頃に完全に失明。)

* * *
(参考)
信仰の自由は、たがいに認めあわなくては(クロムウェル)

* * *
過去の異国における思想・思考として関心を惹くものを
紹介しているのみで、わたし個人の考えではないので、
ご理解を。念のため。

英語テクストはみな散文。適宜改行を挿入している。

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